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奇怪な出来事というのは、突然現れるものなのです
しおりを挟む雅弘が意識を浮上させたのは、息苦しさだった。首が圧迫されて上手く息ができずにいた。悲鳴をあげるどころか呼吸すらままならない。
目を開く。点けっぱなしにした電気で深夜でも部屋は明るい。その部屋に雅弘以外は存在しない。だというのに、雅弘は確実に自身が首を絞められているとわかった。
誰もいない。誰も存在しない。だが誰かに首を絞められている。雅弘は首に手を当てるが、当然そこに何かが触れることはない。だが確実に首もとは何かに押しつけられているかのように潰されている。
死ぬ。雅弘は人生で初めて、死に直面した。
怖い、というよりも苦しいという気持ちが脳を締め付ける。死んでしまう。死んでしまう。死んでしまう。苦しい苦しい苦しい苦しい、死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。
雅弘は混乱に陥った。恐怖に、苦しさに、死に近づいている現実に。
声が出せない。助けも呼べない。そもそも何が起きているのかもわからない。だが確実に自分が存在するはずのない何かに、殺されかけているのだけは理解できた。
助けて。
殺される。
助けて助けて。
死にたくない死にたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「ぁ”、ガァ」
漏れる声は形になりはしない。
この首を絞める何かがさらに力を込めたならば、雅弘の首は折れてしまうかもしれない。憎悪を込められた力は、雅弘の顔から色をなくしていく。雅弘の瞳孔が広がっていく。
それは、本能だったのだろう。
雅弘は無意識に何かを掴みとった。
そしてそれを首を絞める何かに勢いよくぶちまけたのだった。
言わずもがな、エロ用のローションである。
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