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クウガ 衝撃が凄い

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 サッヴァの部屋の前。
 その扉のドアノブに手をかける。そして手をかけたまま、俺は微動だにできなかった。

「何やってるんですか。早く中に入りませんと」

 背後からアトランのせっつく声が耳に入る。
 そう言われても入れるわけないだろうがあああああああ。
 え、俺いいの? 入っていいの? おいおい、マジかよ。マジなんだよな。

 サッヴァが俺の筆下ろししてくれるとか。
 そうなるとサッヴァの上の口も下の口でも俺が処女奪うってことになるんだが。何それ、興奮するんですけど。

「さっさと入りますよ」

 アトランが俺の手を掴んで扉を開けてしまった。
 ちょっとおおおおおお、心の準備いいいいいいいいいいい。
 俺の焦りとは関係なしに部屋の扉が開き、中の様子が俺の視界に映ってくる。

 部屋の作りは俺が借りているところと似たような作りだ。違うところをあげるとするならば本棚の多さ。だがそんなのは俺の現実逃避だ。
 ベッドに腰掛けるサッヴァは神官の制服の上着を取り払ったまま、シャツとズボンのみの姿。そして左手には見慣れない貴金属が巻かれている。厚目の神官服しか見たことなかった俺にとっては、ラフなサッヴァの姿にドキッとする。

「準備するとか言っていたので全裸で待機しているかと思いましたが。随分と拍子抜けですね」

 アトランが放った言葉にサッヴァがギロリと目つきを鋭くする。だがその頬はほんのりと色づいているように見えた。
 俺がどうすればいいか戸惑っていると、背中を勢いよく突き飛ばされる。俺はその衝撃に耐えられず数歩前進し、サッヴァの肩を掴んでやっと勢いを殺せた。
 だがそのせいでサッヴァと顔が近くなる。
 うわあ、うわあ、うわあ。ダグマルのときも思ったけど、立っているときよりも顔が近い。俺はゴクリと息を飲んだ。

「本当に、いいんですか?」

 思わず聞いてしまった。背後でアトランのため息が聞こえたが知らん。どうしてもここで聞いておかなきゃならないんだよ。
 サッヴァは小さく唇を開閉してうつむく。そして俺の服を摘んだ。

「ここまで覚悟を決めさせて、それを聞くのか?」

 その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられる。
 服を摘んでいる手を握り、片手で肩を押してベッドへ仰向けに押し倒す。
 そして目の高さを同じにすると、サッヴァは目を丸くしていた。そのサッヴァの唇に触れるだけのキスをしてやる。顔を離したときに握っている手が固くなるが、イヤがっている様子はないので再度唇を合わせた。数回キスしたが、サッヴァの体はそうする度に固くなってしまう。試しに舌先で唇をノックすると開くどころか、ますます引き結んでしまった。瞳も強く閉じられている。
 俺は唇ではなく、耳の中へと舌を這わせた。

「ひああぅあ」

 普段のサッヴァからは想像できない高い声が響く。その反応に俺は思わず舌で耳を弄ってやる。するとサッヴァの手が俺の顔を押しやった。

「クウ、ガ。私はこんなことを、されたいわけじゃ」

 体が火照ってるのか恥ずかしいのか。サッヴァの顔は真っ赤だ。
 サッヴァの言いたいこともわかる。セックスとはいえ、元は直腸に魔力を接種したらどうなるかの実験だ。前戯は関係ないはずだ。
 でもだからといって突っ込んで出して終わりというのはイヤだった。だってそれじゃセックスにはならないじゃんか。無理矢理はイヤだし、どうせなら気持ちよくなってほしいんだよ。

「ならサッヴァさんは、どうしてほしいんですか?」

 だから顔を押さえた手を取って、意地悪くそう言ってやった。返答できないのはわかっている。

「サッヴァさんがしてほしいこと。言ってくれれば、俺はその通りにしますよ?」

 案の定サッヴァは言葉に詰まった。
 ですよねー。んな男同士のやり方を見たこともない人からしたら未知でしかないもんな。「オマンコに種付けして」とかそんなエロ同人みたいな発言、一般人には思いつかないだろうし。
 俺は膝でサッヴァの股間を押しつけてやる。両手がサッヴァの手で塞がれて、顔も使いにくいから、脚を使うしかなかったのだ。柔らかいが中々にしっかりとしたブツだ。

「おぐっ、ん」

 急所を攻撃されて反応しない男はいない。サッヴァも声を出してしまう。
 何度もそこを押しつけると次第に手の力が弱まり、もう俺の手を掴んでいる状態になっていた。でも、ちょっと楽しくなってきたから膝の動きを止めることはしなかった。
 心なしか、当たっているモノが芯を持ち始めた気がする。

「サッヴァさん、言わないんですか?」
「おぐ、ん、お、おお」
「じゃあ俺の好きにさせてもらいますよ?」

 俺はサッヴァの両手をベッドに押しつける。俺はこの国じゃおそらく非力だ。サッヴァ相手でも負けるかもしれない。でも体制とサッヴァが抵抗できない状態が、なんとかここまで持ち込めた。
 自由になった俺の顔。俺はサッヴァの首元に齧りついた。一瞬力加減に悩んだが、サッヴァが回復魔法を使えることを思い出し、少し強めに歯をたてた。
 途端サッヴァが目を開き息を詰まらせる。ヤバい、他人に噛みつくとかしたことないから力加減がわからなかった。強すぎたか。俺が顔を離すと首元にうっすらと歯形とほんのりと血が滲んでいた。うん、やりすぎた。ごめん。
 さすがにサッヴァも萎えたか。俺は膝を押しつけるとまだ形の残っている。むしろさっきよりも固くなっているような気も・・・・・・いや、それは俺の願望だな。
 血が滲み出た首元を舌で舐めた。童貞が噛みつくとかしちゃいかんな。うん。

「ぐっ、ん」

 サッヴァは声をあげないように必死だ。俺はおそるおそるサッヴァの手から自分の手を引く。そしてシャツをまくり上げて脇腹に触れた。またビクンとサッヴァの体が跳ねた。俺はそのままシャツの中をまさぐっていく。

「クウガ、やっめ、ろ。くすぐった、ん」
「サッヴァさんて結構敏感なんですね」
「ちが、ぁ。ぁ、ん」
「そっちより、こっちどうします?」

 俺が膝をグリグリ動かすと、サッヴァが呻く。
 もうガッツリと反応してしまっているようだ。

「俺が脱がせていいんですよね?」

 脱いでなかったってことはそういうことなんだ、よね?
 ダグマルのときはその場の流れと勢いで脱がせちゃったけど、サッヴァの場合は勝手に脱がそうとしたらイヤがられそうだから確認とってみた。
 だがサッヴァに睨まれる。何故だ。

「おま、えはっ、私にっ、ど、しろと」
「あの、俺が聞いてるんですが。俺がサッヴァさんのズボンとパンツ脱がすのと、サッヴァさんが脱ぐの。どっちがいいですか?」
「そ、んなの」
「早く答えてくれますか。そうじゃないと、ずっとこのままですよ。サッヴァさんも苦しいでしょ。履いたままイキたくないですよね」

 ってか服汚したら怒られそうだから、さっさと言ってほしいんですが。脱がせていいなら脱がせますけど。脱ぐならその隙に俺も服脱ぎますけど。
 俺は肌に沿わせた手を胸の方まで持って行く。乳首もこねてみたが、反応は他の場所とそう変わらない。・・・・・・ダグマルの胸が敏感だったのか?

「クウガっ」

 サッヴァがそう呼びかけたので、俺は手と膝の動きを止めた。
 そしてしばらく息を整えてからサッヴァは言う。

「お前が、何を考えているのか、わからない。わからないから、どうすれば正解なのかわからないんだ。どうしたい、どうしてほしい」

 えー・・・・・・こっちも童貞だからいっぱいいっぱいなんですけど。
 ってかアトランからセックスの話されてたじゃん。あれしたいんですけど。
 俺の口からも説明しなくちゃいけないのか。

「サッヴァさんとセックスしたいんですよ。でもどうせならサッヴァさんに気持ちよくなってもらいたいんです。痛いことも酷いこともなく、ただひたすらに気持ちよくなってほしいんですよ」

 俺サッヴァさんの喘いでる姿見るだけでイこうと思えばイケるし。
 だからむしろ俺がどうしたいのか聞きたいんだよ。童貞だからどこまでが良くて、どこまでが悪いのか判断できないんだっての。

「そうではないだろう。クウガが射精すれば済む話だ。そこに私の気持ちは関係ない」
「じゃあ、言い方を変えます」

 俺は膝の位置を変える。チンコではない。肛門近くをゴリゴリと押しつけてやる。

「俺のチンコ。ここに突っ込んで俺の精子吐き出すためにも、ズボンが邪魔なんで。だからサッヴァさんが脱ぐか、俺が脱がせるか選ばせてるんですけど」

 ってか、本当にどっちにすりゃいいのさ。脱がすなら脱がしますけど。これこっちも生殺しだからね、マジで。
 俺がぐりぐりと膝を押しつければ、耐えきれなくなったようにサッヴァが口を開けた。

「脱ぐっ。自分で、脱ぐから」

 俺が脱がすんじゃないんかい。
 文句言いたくなるのを堪えて、俺はベッドから降りる。そしてサッヴァが脱ぐのを待つ。
 サッヴァはズボンに手をかけたところで、俺を睨む。

「見せ物ではない」

 おおっと、思わずマジマジと見るところだった。俺はサッヴァから視線をそらす。
 どうせなら俺も脱がないとダメだよな。俺は上を脱ぎ、下も脱いでしまう。
 そしてサッヴァを見ると、こっちを凝視したまま固まっていた。あのー、サッヴァさん? 何固まってるんですか。脱いでくれないと、俺が視線をそらして着替えた意味がないんですけど。ってか俺だけ全裸とかバカみてぇじゃん。

「サッヴァさん、脱いでないじゃないですか」

 思わずそう言えばハッとしたサッヴァが慌てだした。

「いや、待て。もう少し待て」
「それと見せ物ではないと言っておきながら、自分は俺の脱いでるところガン見ですよね。ズルくないですか?」
「そ、そうかもしれんが」

 サッヴァはそう言って視線を下げる。
 ええ、まぁ、わかってますよ。言いたいことは。
 何もしてないのに俺のチンコが反応しているか、ですよね。
 そりゃ反応しないわけがないでしょうが。

「サッヴァさんの喘ぐ声聞いてたら、こうなったんですよ」
「なっ」
「覚悟、決めてくれたんじゃないんですか?」

 あああああああ、焦れったい。命令したい。でもそれしちゃダメだから耐えますが。
 サッヴァは口を開き、しかし閉じた。そしてまた開き声を出す。

「できるのか?」

 だがその言葉の意味を理解できなくて、俺は首を傾げた。

「私と、そういうことをできるのか? こんな老いぼれに、しかも堅物であろう私が、本当に性的対象に成り得るのか?」

 そして続いて言った内容に、俺は正直カチンときた。
 ここまできてそれ言っちゃう? ねぇ? そうじゃなきゃ俺のチンコ反応しねぇよ。
 俺はサッヴァの顔を掴んで思いっきり口づけてやった。
 サッヴァが驚いている隙に、舌を口内に入れてやった。「んんんっ!?」というサッヴァの驚いた声が聞こえても無視。蹂躙しようとした矢先に、痛みと熱さを感じて口を離す。噛まれたのだと理解すると同時に血の味がした。

「クウガッ、す、すまない」

 サッヴァの悲痛な声が聞こえ、俺はため息をつくしかなかった。
 ダメだ。これは無理矢理するしかダメなやつだ。

「やめましょうか?」

 サッヴァに酷いことしたくない。そう続けようとした。
 しかしその言葉よりも先に、サッヴァが俺の手を掴むのが先だった。

「わかった。正直に言おう」

 そしてサッヴァは顔を真っ赤にして俺を見つめた。

「私はクウガに気持ちよくなってもらえればそれでいい。だから我慢してほしくはない」

 ・・・・・・あー、それ言っちゃう? それ言っちゃうの?
 確かに俺だけが気持ちよくさせてやろうとか、一人よがりだったか。でもサッヴァは別にゲイじゃないから、俺のことは気にしなくていいのに。
 でもそう言ってくれたのなら、お願いしてしまおうか。

「じゃあ、俺の舐めてくれますか?」

 そう尋ねればサッヴァは一瞬だけ躊躇うも、首を縦に振った。
 俺は舐めやすいようにと、ベッドの上で膝立ちになる。そして俺の前にサッヴァが四つん這いになるとチンコに顔を近づけ、そしてチロリと舌で舐めた。
 あああ懐かしい、この下手くそなフェラ。アトランの凄技フェラばっかり受けてたから、ちょっと感動する。
 そして俺のをくわえた頃、サッヴァの手が自身の下肢に動いていったのに気づいた。


 ーー、俺は自分の目を疑った。
 サッヴァはフェラをしながら、下の服を脱ぎだしたのだ。フェラされてたら気づかれないと思ったのか。でも普通に脱ぐよりも、俺が脱がせるよりも恥ずかしいと思うんですけど。見ていたいので気づかぬ振りだが。
 ズボンとパンツが下りて、サッヴァの尻が見えたとき。俺は我慢できずにサッヴァの頭を掴んだ。ごめん、このまま生殺しは辛いから。一回、このまま出させて。

「ん”、ぐ、んんん、ぐっ、んん」
「少し、んっ、強引にさせて、もらいますよ」

 もう待ってるのは辛いんです。せめて1回出しさせすれば冷静になるから。
 サッヴァの口を押さえて腰を前後に動かした。サッヴァはされるがままだ。
 そして俺は精液をサッヴァの口の中に吐き出した。前回フェラしてもらったときに口の中に出したので、無意識にやってしまった。だがサッヴァは体をビクビク震わせながら精液を飲み込んでいく。

「サッヴァさん。もう、さすがに脱がせますよ」

 吐き出して冷静になった頭で、サッヴァの両肩を掴んで体を起こしてやる。サッヴァはあのときのように悦に入っているようで、俺の言葉は聞こえていないようだった。
 俺はサッヴァの上の服を脱がそうとして、その股間を見て固まった。

 サッヴァさんも、射精していたからだ。

 え、ええええ、ええええええええ。フェラしてイっちゃったの!? 俺の精液飲んでイっちゃったの!? 待ってそれ何の同人誌!?
 俺が固まったことに気づいたサッヴァが、俺の視線の先を見て、自身に何が起きたのか気づいたようだ。

「これは、その、体内で急激に増えた魔力の衝撃に耐えられなくて、だな」

 言い訳をしようとするサッヴァだが、俺はそんなの気にしている余裕などない。
 魔力が急激に増えた衝撃による射精かもしれない。それでも俺の精液を飲んでサッヴァが射精したという事実が、俺にとっては衝撃的だった。
 サッヴァの上の服を掴む。

「脱がします」

 有無も言わせない俺の言葉に、サッヴァは黙ってうなずいた。
 俺はサッヴァの上を半ば無理矢理脱がすと、ベッドに体を押し倒し中途半端に脱いでいた下の服もはぎ取った。
 全裸になったサッヴァを鼻息荒く見つめていると、別方向から俺の名が呼ばれた。
 その方を向けば何かがこっちに飛んできた。なんとかキャッチして見れば精油の瓶だった。イスに座っていたアトランがこっちを観察している。

 俺は受け取った精油をサッヴァの腹の上に垂らした。
 そしてサッヴァが吐き出した精液と混ざり合った粘液を指に塗りたくり、尻の方へと移動する。そして慎重に指を挿入れようとして指を止めた。危ない危ない。清浄魔法のこと忘れてた。

「サッヴァさん。申し訳ないんですが、腹の中を綺麗にするので」
「ーーいいから」
「いや、ここを使うには綺麗にしないと」
「そうではなく。そこは、もう準備してある」

 サッヴァの言葉の意味を理解すると、俺はぶわっと顔に熱が溜まっていった。
 服は脱げないのに、そこは綺麗にするんですか。サッヴァさんの恥ずかしいラインがわからないんですけど。
 思わず勢いよく指を挿入れこんでしまった。

「んおおっ、おっっっ」

 声をあげたサッヴァのことを気にしている余裕なんてない。
 俺は指を出し入れして、尻の中を少し乱暴に解していった。
 中を弄る手とは別の手でチンコを擦る。するとムクムクと俺の手の中でその形は大きくなっていった。

「お、おぉ、あっ」

 俺は指が2本挿入れても問題ないくらいにまで解すと、思いっきり抜いてやった。
 そして俺は自分のチンコを手に取ると数回扱いてやる。それだけで固くなった。

「挿入れますけど、いいですよね?」

 ダメって言われても止められないですが。
 するとサッヴァはプルッと震えつつ、脚を広げた。

「クウガのそれを、私の中に・・・・・・挿入れて、くれるか?」

 そして放たれた言葉に、俺の心臓が打ち抜かれた。
 まさかここでおねだりさせるとは思わなかったわあああああ。

 俺は荒い息を吐いて、チンコを挿入れようと身構えた。







「お父さあああああああああああん」

 そして突如部屋の外から聞こえた大絶叫に俺とサッヴァの動きが止まった。

「お父さん、いるんでしょ!? どこにいるの!? ねぇ、魔導師の人といるんでしょ!? お父さんが魔導師の人に性的辱め受けてるって聞いたんだけど!?」

 サヴェルナ、ある意味タイミングすげぇよ。
 でもできればもう少し早めか遅めに来てほしかった。

「・・・・・・クウガ。本当に済まないが、ここで止めてくれるか?」
「・・・・・・はい」

 顔を手で隠したサッヴァの言葉に、俺はただ肯定するしか道はなかった。
 アトランが深いため息を吐いたのが聞こえた。


+++

 すぐさま俺とサッヴァは着替え、そして清浄魔法を互いの体と部屋中にかけてもらった。あれだけ高ぶっていた俺のモノも、シュンとなっている。サヴェルナの声が聞こえた段階で若干萎えてはいたけれど。

 面倒なことになるからと机の下に隠れているように、サッヴァに指示された。
 


「お前はまたも仕事をサボりおって! しかも帰ってくるなり大声を出して恥ずかしくないのか!」
「まだ2回しか早退したことないわよ! お父さんは年いってから神官になったから知らないんだろうけど、見習いである未成年はまだ時間に余裕があるんですう!」

 そしてサッヴァの部屋の出入り口では親子喧嘩が勃発していた。

「未成年だろうが何だろうが、仕事をサボっているようなやつが将来マトモな者になれると思っているのか!」
「なによ、お父さんが心配だから来たんじゃない! 最近魔導師の人に付きまとわれてんでしょ!?」
「アトランはそういうのではないと言っているだろ!」
「じゃあ何で客室じゃなくて、自室に連れ込んでるのよ!」

 確かにその通りである。サッヴァも言葉を詰まらせる。
 俺は机の下に隠れられたが、アトランはそういうわけにはいかない。イスに座ったまま親子の喧嘩を眺めていた。
 サヴェルナは「それにーー」と足下を見た。

「妙に部屋の空気が綺麗すぎるわ。部屋を開けてくれるまで時間かかったところからすると、清浄魔法でもかけたんでしょ。いかがわしいことがなかったら、そんな急に綺麗にすることないわよね?」

 確かにその通りであるパート2。サッヴァはさらに言葉を詰まらせた。
 サヴェルナの台詞から察するに、どうやらサヴェルナはサッヴァとアトランが只ならぬ関係なんじゃないかと疑っているようだ。
 いっそ俺出てきた方がいいんじゃないのか。それとも逆に出てこない方がいいのか。隠れてろ言われたから隠れてますけど。

「お、お前には関係ない!」
「はい、そうやってすぐ私を除け者にする。言っておくけど、私はお父さんが男とそういう関係になるのがダメなわけじゃないの。お父さんが恋愛拗らせてるのに、まったく別の人と爛れた関係になるのがダメって言ってるの」
「拗らせてなどっ」
「ないことないわよ。だってお父さんが好きなのは」

 サヴェルナが呆れたように口にした言葉。
 それに被るようにサッヴァが大声を出した。



「男を好きになるなど、気色悪いことを口にするな!!」



 その言葉に俺の心臓が抉られた。
 思いの外、ダメージが強くて俺はその場に倒れ込んだ。ゴンと部屋に重い音が響く。
 サッヴァが振り返って青ざめていた。
 サヴェルナが「クウガさん!?」と驚いた声をあげている。
 アトランが本日何度目かのため息を漏らしていた。


 人生で1番、気持ち悪い瞬間かもしれない。
 わかってたけど。男が好きとか、普通じゃないってわかってたけど。サッヴァに、「普通の人間だ」と言ってくれたサッヴァに、気色悪いと言われるのは正直堪えた。



「気色悪い人間で、ごめんなさい」


 それだけを言うのが精一杯だった。

 胃が、胃があああああああああああ。
 痛ああああああああああああああああああああいいいいいいい。

 この年で胃炎持ちだよ、チクショウがあああああああああああ。
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