幻獣使役はアケコンで!

小曽根 委論(おぞね いろん)

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Chapter 7 大幻獣が、ご機嫌斜めで。

scene 26

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 ピストの両端に立つ、それぞれの幻獣。
 先に動いたのは、大介のサラモンドだった。とりあえずといった形で、ゆっくりと前進する。

「フン。真っすぐ来るか……いいのか? この狭苦しいピストとやらの中じゃ、横に避けるなんて芸当は出来ねえぜ?」

 イジドールはそう言い放つと、自分の幻獣に炎の弾、フランバルを撃たせた。大介のそれより明らかに大きく速いそれは避けられるものではなく、ガードをさせるのが精いっぱいだった。

(……)

 言葉を返さず、考え込む大介。一瞬、後ろを振り返る。クレールが固唾を飲んで見守っているのが見えた。
 アデラはその傍らでしっかり祈っている。万一、彼以外に敵がいたとしても、これで大丈夫だ。

(……抜かりねえな。こういう時はしっかりしてやがる)

 一発目はガードした大介のサラモンドだったが、二発目以降は前ジャンプで避けつつ近づく。そして、ピストの端からまったく動かなかった怠慢なイジドールのサラモンドに対し、ちゃっかりトリカゴ戦法のできる間合いを取る。

 前跳びを警戒しながら、大介もフランバルを撃つ。

 が、

「貧弱なんだよ、あんたの幻獣はよお!」

 相手の飛び道具と運悪くかち合う。相殺されると思ったそれは大介の予想に反し、そのまま大介側の幻獣に飛んできた。フランバルを撃った後の構えを解く暇もなく、大介のサラモンドは敵の弾を食らう。

「ヒヒヒ! ほれ、どうした! 旧式の方が性に合ってるんじゃなかったのかぁ?」

 嫌味ったらしくイジドールがわめく。
 が、大介はそんな彼の言葉などまるで意に介さずに考えていた。

(フランバルは『風』『炎』『光』のボタンで発射が可能……風より炎、炎より光で撃った方が速い弾が出る)

(敵さんのフランバルも要領は一緒、だが……全体的に発生が遅く、撃った後構えを解くのも遅い。スピードがパワーの代償になっている)

(ブレット・デ……あれ、技名また忘れたな。とにかく、50%消費技の方の飛び道具は、威力が高くスピードも超高速だ。敵は今のところ、フランバルの性能にばかり意識が行っていて、こっちの技は失念している……ように見える)

(つまり、だ。この状態でこいつに勝つには……)

 人が良いのか馬鹿なのか、イジドールは考え込む大介に対し、完全に手を止めている。下品な笑いをまったく引っ込める気配がないので、余裕をかましている、という表現が一番正確かもしれなかった。

「……お? すまん。待たせちまったか?」

「構わんよ。降伏するなら今のうちだぜ?」

「冗談。悪いけど、お前には負けねえよ」

「ハッハッハ! ほざきよるわ! そんな貧弱な型で、どうやって俺のサラモンドに勝つつもりだ?」

「こうするのさ」

 大介は、再び炎の弾を撃ち出した。しかも今度はかなりの連射だ。

「……ち。それがうぜぇんだよな。そんなにひっきりなしに術を出してくんなよ」

 いささか不満そうに言う怪物だったが、実際は簡単に状況を覆せると思っているのか、それほど冷静さを欠いているようには見えなかった。そんな相手に大介は、『風』ボタンでひたすら遅いフランバルを撃ち、相手がガードした瞬間に次の弾を射出していた。

「だが……何度やっても、同じだってな!」

 安易に前へ跳んでこないのは、戦士のカンがそうさせたのか。イジドールは弾を撃ち返す。

 と、

「アチッ! ……くそ、急に速いヤツを撃ってくんなよ」

 実際にフランバルと食らったのは幻獣だったが、イジドールは悲鳴をあげた。大介は遅い弾をひたすら撃ち続け、相手が反撃をしたくなるタイミングを見計らって速い弾に切り替えたのだ。狙いは見事に的中し、敵のサラモンドがフランバルの構えを取った瞬間に、大介側のフランバルがヒットした。出鼻をくじかれ、イジドールは渋い顔だ。

「うざくて悪いな。これが俺の戦い方なんだよ」

 面食らった様子の敵に、再び飛び道具を連発する大介側の幻獣。時折緩急をつけて、相手の行動をより大きく制限する。

「クソが……クソがよお!」

 しびれを切らせた敵のサラモンドが、弾の合間を縫って跳び込んできた。
 当然のように、大介側の幻獣は何もしていない。タイミングを計り、ばっちり根元でクープスペリアを当てる。こちらの幻獣の拳がふたつ、敵の胸部にクリーンヒットする。二体の幻獣が宙に舞い、敵のそれだけがそのままダウンする。

「悪いな。今日は一段とカンが冴えてる。このまま押し切らせてもらうぜ」

「ああ? ……冗談にしても笑えねえな。そういうセリフは、もっとしっかりダメージをこちらに負わせてから言うもんだぜ?」

 確かに、敵のサラモンドをピストの端に追い詰めているとはいえ、体力はほぼ五分である。パワーは向こうが上なため、ワンアクションで戦況がひっくり返る恐れは充分にあった。
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