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享年39歳の看護師が転生しました。前前前世と前前世と前(あの)世の記憶持ちです。

やらかしたその禁忌の対価は、退転という名の代償でした。

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「あーぁー…。…やっちまったぜ…」
と、両手を地面について、orzのポーズをして後悔しても後の祭り。

やってしまったものは、どうしようもない。

大事なのはやってしまった事を後悔する事ではなく、そのやってしまったその後。

これからを、いかにどうするかだ。


前前世あれはあれ。
前世それはそれ。
今世これはこれ。
と、まずは割りきって。

子供に会いたい、という叶わない願いは横に置いといて。


…さて。
如何に何をどうすれば、元の世界に輪廻出来るのだろうか?。

有難い事に、私はソレを知っていた。

あの世の知識のお陰だ。


あの世に居たとき、仕事先で出会った、とある観音様が言っていたのだ。

「人はハッハと笑ってシクシク泣く。
ハッハで六四、シクシク三六。
それ二つを足せば百。
人の一生で、苦しみ悲しみの数は百の内の三六で、人生は本来ハッハと笑って過ごす、楽しいものなのだ。

しかし、かなしいかな。
人はどうしても苦しみ悲しみにばかりに目を向けてしまう。

幸せや楽しみを忘れて、苦しさや辛さばかりが心に残り、どんどん心が酷く疲弊していく。
だから、生きている事は辛いことだとよく嘆く。

だから、…時には、死にたくなる事もあるのだろうよ。


だからといって、死んではいけない。
生まれたならば、誰しもしなきゃならない役目というものがあるからね。
それは時に命題とも呼ばるけど、それを果たさず死ぬと、まず、それが、罪になるからね。

だから、寿命以外…病気や事故で亡くなると、生まれ持った役目が果たせずに亡くなるから罪になってしまう。

そなたが、己が役目を果たせずに、幼き子を置いて先に死んだことにより、沢山の子を育てる事となったと同じ様に、な。

でも、それはまだ軽い罪だ。
中でも、一番の罪になるのは自殺だからね。

自殺だけは、何があってもいけないんだよ。
他殺よりも、罪が大きい。
むしろ、禁忌と呼ばれる領域だからね。


禁忌を犯すと、退転といってね。
今まで居た世界よりも、程度の低い世界に産まれてくる事しかできなくなるんだ。

人は誰しも、己が罪をあがなうのに適した場所と体に生まれ変わるからね。

人それぞれの人生、すなわち"それぞれの罪の形"。と、いうわけだ」

「そういう人は、どうしたら…。どうにかして、助けてあげられないの?」

「こちらから手出しはできないのだよ。自分の過ちは、自分で気が付いて何とかしないと、魂の成長が阻害される意味がないからね

「じゃあ、ずっとそのままなの?」

「いや。こういう場合はね、まず、生きることだね。
そして、自分の弱さに負けないこと。
負けないこととは、逃げないこと。

生きていると、様々な"難"…問題が出てくる。
それ一つ一つを逃げずに乗り越えていくと、魂が磨かれる。
それから、善い行をして善を積む事。
魂が磨かれれば、良い世界に生まれ変わる事ができる。
善行を行えば、それは徳となり、因果応報として福運として戻ってくる。

そうやって少しずつ少しずつ。
まるで塔を作るかのように、石という名の善を積んでいくことさ。
さすればいずれ、転変と成れよう」


そういう話をした事があったな…。


…ならば。

まず戻るためにやる事の一つ目は、"何があっても生きる事"だ。

そして、二つ目は、"善を積む事"。

更に三つ目は、その善が帳消しにならない様に、または、罪を作らないように"悪事を働かない事"。


…生きること。
何があっても生き抜くこと。

生きることは、辛いことだ。
生きることには、必ず苦しみや悲しみが付きまとう。


人種や身分の差別のある、人の命が軽い生きずらい世界。
現代人にとっては、まさに地獄と呼べる様な世界。

それがここ。

私は幸運な事に、辺境伯爵家に産まれた。
まず、何かしらの身分のある家ならば、この世知辛い世界でも、そうそう命の危険は無いだろう。

それに、悪を重ねて善を帳消しにする機会も、民衆よりかは多少は少なくなるかもしれない。

だから、この辺境伯爵令嬢である今世のうちに、どんな嫌な事が起こったとしても、逃げずにいくつもの難を乗り越えて、悪い事はせず、寿命を全うして、その間に沢山の善行を積めば良い。

そして、最終目標は、元の世界に輪廻する事!。


目標の第一歩として、私はまず現実を受け入れる事にした。

じゃないと、何も始まらない。




今日も明日も明後日も。
今までの記憶という名前の罪を背負って、頑張って。



私は、生きる。




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