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序.出会いは未知の世界
第二話
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目を開くと、誰かが自分の顔を覗き込んでいた。
しかも、しっかりと目が合ってしまう。
驚いた坂井の身体はビクリと跳ねた。
「やあ」
話し掛けられた。
覚醒直後のボンヤリとした頭では大雑把な事しか考えられない。
相手は女性だろうか。
初めて聞く、いや、どこかで聞いた事がある声だ。
思い出そうとして、気が付いた。
頭の活動が本格的に再開する。
横たわっている場合ではない。
坂井は身体の軋みも気にせず跳ね起きる。
「芋虫の化け物!」
キョロキョロと周囲を確認するが、それらしいモノは見当たらない。
自分が倒れていた場所のすぐ近く。黒く焦げ付いた跡が床に残っているが、元からあったのかどうかははっきりしない。
アレが放っていたはずの絡み付くような気配も消えている。
「あ、あれ?」
助かったのだろうか。
いや、そもそも自分は生きているのか。
と言うか、話し掛けてきたのはどちら様なのだろう。
まさか、三年生を装った死神じゃないよね。
でも、こんなぽっちゃりした死神っているのかな。
死神って骨じゃなかったっけ。
坂井は瞳をグルグルと回しながら軽く錯乱してしまっている。
急激な状況の変化に思考がついて行ってないらしい。
「僕は死んだんでしょうか?」
「ヘ?」
暫定死神さんに勢い余って話し掛けていた。
服装で三年女子と分かるふくよかなその人は瞳をパチクリさせてから吹き出してしまう。
ひとしきり笑った後、坂井の肩をパンパンと叩いた。
「大丈夫、大丈夫。死んでない、死んでない」
「本当ですか?」
「私が保証する!」
ビシリと暫定死神さんがサムズアップを決めていた。
この人は死神ではないようだ。
なら、この人はいったい何者なのだろうか。
「あのぅ、あなたはどなたですか?」
「私? 私は鴇崎と言うよ。こんな場所でジッとしてるのもなんだし、歩きながら話そうか」
言われてみると、確かに。
何処にいるのか分かっていないが、廊下で突っ立っているよりいくらか建設的だろう。
この鴇崎という人を信用してしまってもいいのかどうか、現状判断しかねてしまう。しかし、気を失っていた坂井に手を出した様子もないので信用してもいいのかもしれない。
歩き始めた鴇崎の後を坂井は追いかける事にした。
どうやら坂井がいたのは三号棟の二階だったようだ。
近くにあった階段を下りてその先にある扉を開くと、目の前には校舎がもう一棟と研究用の貯水槽。
モノクロとはいえ、この風景には見覚えがある。
「ここってやっぱり学校なんだ」
異世界と表現されている奇妙な場所だが、現実とリンクしているのは確かだろう。
現実とリンクしているなら帰る事もできるのかもしれない。
「元の場所に帰れるんですかね」
「うん、帰れるよ」
坂井は耳を疑った。
非常に軽い感じで鴇崎が肯定したのだ。
「か、帰れるんですか?」
「帰れる。多分君の友達のはずだけど、さっきも三人送り返したんだ」
「三人……無事だったんだ、よかった」
坂井自身は芋虫の化け物に追いかけられていたため、単独行動をするしかなかった。
他の三人はしばらくしてから合流する事が出来たようだ。
三人は坂井を捜している最中に鴇崎と会い、坂井の捜索を任せて先に帰ったらしい。
鴇崎が言うには三人は坂井を見捨てた訳ではない。三人は坂井を捜すために残ろうとしたようだ。
それを無理矢理帰らせた。
一年生では足手まといにしかならないと言って。
何の? と思ったが、すぐに思い返す。
あの化け物を相手取れないといけないのかもしれない。あれが一匹と限らないのだ。
そして、はたと思い出す。
自分が気絶する直前に聞いた声。
あれは鴇崎なのではないか。
なら、あの芋虫を追い払ったのはこの人なのかもしれない。
「もしかして、化け物をどうにかしたのって先輩ですか?」
「気付いてなかったのかい!?」
「今気付きました……」
「あー、まあ、気絶したみたいだし仕方がないのかねぇ」
坂井の鈍さに呆れたのか、意表を突かれたののか。
なんとも言えない表情で鴇崎は右の人差し指で頬を掻いている。
自分の鈍さに頭を抱えそうになる坂井だが、その耳に奇妙な音を捉えた。
一言で表すなら、それは鳴き声。
鳥のものだとは思う。が、聞いた事のない不安を呼び起こす鳴き声だ。
ハッとした表情の鴇崎が叫ぶ。
「上だ! 避けろ!」
頭上に視界を向ける。
翼を広げた大きな鳥が鉤爪を広げ、降下していた。
咄嗟に後方へ飛ぶ。
タイミングはギリギリだったようだ。
鳥の羽が坂井の身体をかすめる。
「良い度胸してるな!」
鴇崎は右の拳に弾ける光を纏わせ、鳥を打ち据えた。
瞬間。
鳥は動きを止め、硬直。
直後、乾いた音を立て粉々に崩れ去る。
生き物ではなかったようだ。
「さっさと動いた方が良いかな。付いてきて」
「は、はい!」
何が起こったのか飲み込めていない。
それでも坂井には鴇崎を追うしかなかった。
しかも、しっかりと目が合ってしまう。
驚いた坂井の身体はビクリと跳ねた。
「やあ」
話し掛けられた。
覚醒直後のボンヤリとした頭では大雑把な事しか考えられない。
相手は女性だろうか。
初めて聞く、いや、どこかで聞いた事がある声だ。
思い出そうとして、気が付いた。
頭の活動が本格的に再開する。
横たわっている場合ではない。
坂井は身体の軋みも気にせず跳ね起きる。
「芋虫の化け物!」
キョロキョロと周囲を確認するが、それらしいモノは見当たらない。
自分が倒れていた場所のすぐ近く。黒く焦げ付いた跡が床に残っているが、元からあったのかどうかははっきりしない。
アレが放っていたはずの絡み付くような気配も消えている。
「あ、あれ?」
助かったのだろうか。
いや、そもそも自分は生きているのか。
と言うか、話し掛けてきたのはどちら様なのだろう。
まさか、三年生を装った死神じゃないよね。
でも、こんなぽっちゃりした死神っているのかな。
死神って骨じゃなかったっけ。
坂井は瞳をグルグルと回しながら軽く錯乱してしまっている。
急激な状況の変化に思考がついて行ってないらしい。
「僕は死んだんでしょうか?」
「ヘ?」
暫定死神さんに勢い余って話し掛けていた。
服装で三年女子と分かるふくよかなその人は瞳をパチクリさせてから吹き出してしまう。
ひとしきり笑った後、坂井の肩をパンパンと叩いた。
「大丈夫、大丈夫。死んでない、死んでない」
「本当ですか?」
「私が保証する!」
ビシリと暫定死神さんがサムズアップを決めていた。
この人は死神ではないようだ。
なら、この人はいったい何者なのだろうか。
「あのぅ、あなたはどなたですか?」
「私? 私は鴇崎と言うよ。こんな場所でジッとしてるのもなんだし、歩きながら話そうか」
言われてみると、確かに。
何処にいるのか分かっていないが、廊下で突っ立っているよりいくらか建設的だろう。
この鴇崎という人を信用してしまってもいいのかどうか、現状判断しかねてしまう。しかし、気を失っていた坂井に手を出した様子もないので信用してもいいのかもしれない。
歩き始めた鴇崎の後を坂井は追いかける事にした。
どうやら坂井がいたのは三号棟の二階だったようだ。
近くにあった階段を下りてその先にある扉を開くと、目の前には校舎がもう一棟と研究用の貯水槽。
モノクロとはいえ、この風景には見覚えがある。
「ここってやっぱり学校なんだ」
異世界と表現されている奇妙な場所だが、現実とリンクしているのは確かだろう。
現実とリンクしているなら帰る事もできるのかもしれない。
「元の場所に帰れるんですかね」
「うん、帰れるよ」
坂井は耳を疑った。
非常に軽い感じで鴇崎が肯定したのだ。
「か、帰れるんですか?」
「帰れる。多分君の友達のはずだけど、さっきも三人送り返したんだ」
「三人……無事だったんだ、よかった」
坂井自身は芋虫の化け物に追いかけられていたため、単独行動をするしかなかった。
他の三人はしばらくしてから合流する事が出来たようだ。
三人は坂井を捜している最中に鴇崎と会い、坂井の捜索を任せて先に帰ったらしい。
鴇崎が言うには三人は坂井を見捨てた訳ではない。三人は坂井を捜すために残ろうとしたようだ。
それを無理矢理帰らせた。
一年生では足手まといにしかならないと言って。
何の? と思ったが、すぐに思い返す。
あの化け物を相手取れないといけないのかもしれない。あれが一匹と限らないのだ。
そして、はたと思い出す。
自分が気絶する直前に聞いた声。
あれは鴇崎なのではないか。
なら、あの芋虫を追い払ったのはこの人なのかもしれない。
「もしかして、化け物をどうにかしたのって先輩ですか?」
「気付いてなかったのかい!?」
「今気付きました……」
「あー、まあ、気絶したみたいだし仕方がないのかねぇ」
坂井の鈍さに呆れたのか、意表を突かれたののか。
なんとも言えない表情で鴇崎は右の人差し指で頬を掻いている。
自分の鈍さに頭を抱えそうになる坂井だが、その耳に奇妙な音を捉えた。
一言で表すなら、それは鳴き声。
鳥のものだとは思う。が、聞いた事のない不安を呼び起こす鳴き声だ。
ハッとした表情の鴇崎が叫ぶ。
「上だ! 避けろ!」
頭上に視界を向ける。
翼を広げた大きな鳥が鉤爪を広げ、降下していた。
咄嗟に後方へ飛ぶ。
タイミングはギリギリだったようだ。
鳥の羽が坂井の身体をかすめる。
「良い度胸してるな!」
鴇崎は右の拳に弾ける光を纏わせ、鳥を打ち据えた。
瞬間。
鳥は動きを止め、硬直。
直後、乾いた音を立て粉々に崩れ去る。
生き物ではなかったようだ。
「さっさと動いた方が良いかな。付いてきて」
「は、はい!」
何が起こったのか飲み込めていない。
それでも坂井には鴇崎を追うしかなかった。
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