22 / 35
文化祭2
16
しおりを挟む
「た、拓人!大変よ」
「どうしたの、菜緒」
「こよみが攫われたって…。どうしよう。もし発作が出たら…」
「落ち着いて、菜緒。いい、まず冷静に判断しよう。犯人の可能性が高い人物は…?」
「…松平花織。なら早く行かないとっ…」
「待って。じゃあ、今邪魔が入らずに鍵がかかる場所。そして人が寄り付かない場所。どこだと思う?」
「…旧校舎と、部活棟と、体育館周辺」
「そうだね。でも旧校舎はグラウンドから距離が近いから人が来る可能性がある。部活棟は今日は鍵は先生が持ってる。もちろんスペアキーもマスターキーもね」
「じゃあ、体育館周辺よね。鍵がかかるのは…あ。体育館倉庫!!」
「うん、行こう!」
二人は駆け出した。
「________________ん…」
誰かの話し声がする…。ゆっくり目を開けるとそこは冷たいコンクリートに囲まれた部屋。
「あ、起きた?アリスちゃん。まだ薬が効いてるかな?」
だれ…?くらくらするしぼーっとする。
「あれ、忘れちゃった?昼にも会ってるんだけどなぁ」
この匂いは…香水。
「ナンパの人…」
少しずつ意識が覚醒していく。そして私は今自分が置かれている状況を理解した。
「ごめんね、頼まれてんだよね」
だれに…。連絡しないとみんなに。ポケットを探ろうとするも腕が縛られている。
「あら、お目覚め?私のこと知ってるよね?」
突然女の子の声がした。この子は…
「誰だったっけ…。ごめんなさい、人との付き合いが悪いもので…」
うそ。本当は知ってる。でも、こんな風にボケてないと泣きそうになる。松平のお嬢様ね。
「私に何か用ですか…?」
「なんなの、私達から明くんを取ったくせに」
「取ってない」
これは本当のこと。私は誰からも明を取ってない。だって明は明のものだから。
「ああ、ほんっとムカつく!いいわ、あなた達こいつを好きにやっちゃって!!」
え、それってまさか…。
「いや俺たちも得したな」
「ああ、こんなに可愛いの頂けるとはなぁ」
さすがに後ずさりする。誰か…早く…。明!!
その時大きな音を立ててドアが開いた。…訂正、外れた。月光に照らされて三人のシルエットが浮かび上がる。
「だれっ!!」
「誰なんてわかっているくせに。月に…じゃないこよみに変わってお仕置きするわよ」
「菜緒、それは古いぞ…」
「君たちこのオトシマエどうつけてくれるの?君たちのせいで俺の菜緒が悲しんじゃったんだけど」
安心する声。助けに来てくれたんだね…。
「おい、いい加減にしろよ?」
そう言って明は男二人に何かを耳打ちした。するとたちまち二人は謝って逃げ出した。
何て言ったんだろう。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
「待つのはあなたの方よ、松平花織さん。自分のした事わかってんの?」
菜緒が凍てつくような目で松平さんを睨む。さらに明にも睨まれ、とうとう泣き出してしまった。
「羨ましかった。お嬢様で明くんが恋人で素敵な友達もいて。明くんなら唯一……私を認めてくれると思ったの…」
最後の言葉はみんなの耳には届かなかった。この子は、きっと悪い子じゃない。そう思った。
「松平、こよみに言う事があんだろ」
「…ごめんなさい、坂倉さん」
「うん。もういいよ。でも、この先こんな事はもうしてはダメだよ。友達が欲しいなら私が…仲良くするから…。その時まで…だけど」
「うん、ありがとう…」
彼女は優しく笑った。
______そしてこの日は私が元気だった最後の日だった。
「どうしたの、菜緒」
「こよみが攫われたって…。どうしよう。もし発作が出たら…」
「落ち着いて、菜緒。いい、まず冷静に判断しよう。犯人の可能性が高い人物は…?」
「…松平花織。なら早く行かないとっ…」
「待って。じゃあ、今邪魔が入らずに鍵がかかる場所。そして人が寄り付かない場所。どこだと思う?」
「…旧校舎と、部活棟と、体育館周辺」
「そうだね。でも旧校舎はグラウンドから距離が近いから人が来る可能性がある。部活棟は今日は鍵は先生が持ってる。もちろんスペアキーもマスターキーもね」
「じゃあ、体育館周辺よね。鍵がかかるのは…あ。体育館倉庫!!」
「うん、行こう!」
二人は駆け出した。
「________________ん…」
誰かの話し声がする…。ゆっくり目を開けるとそこは冷たいコンクリートに囲まれた部屋。
「あ、起きた?アリスちゃん。まだ薬が効いてるかな?」
だれ…?くらくらするしぼーっとする。
「あれ、忘れちゃった?昼にも会ってるんだけどなぁ」
この匂いは…香水。
「ナンパの人…」
少しずつ意識が覚醒していく。そして私は今自分が置かれている状況を理解した。
「ごめんね、頼まれてんだよね」
だれに…。連絡しないとみんなに。ポケットを探ろうとするも腕が縛られている。
「あら、お目覚め?私のこと知ってるよね?」
突然女の子の声がした。この子は…
「誰だったっけ…。ごめんなさい、人との付き合いが悪いもので…」
うそ。本当は知ってる。でも、こんな風にボケてないと泣きそうになる。松平のお嬢様ね。
「私に何か用ですか…?」
「なんなの、私達から明くんを取ったくせに」
「取ってない」
これは本当のこと。私は誰からも明を取ってない。だって明は明のものだから。
「ああ、ほんっとムカつく!いいわ、あなた達こいつを好きにやっちゃって!!」
え、それってまさか…。
「いや俺たちも得したな」
「ああ、こんなに可愛いの頂けるとはなぁ」
さすがに後ずさりする。誰か…早く…。明!!
その時大きな音を立ててドアが開いた。…訂正、外れた。月光に照らされて三人のシルエットが浮かび上がる。
「だれっ!!」
「誰なんてわかっているくせに。月に…じゃないこよみに変わってお仕置きするわよ」
「菜緒、それは古いぞ…」
「君たちこのオトシマエどうつけてくれるの?君たちのせいで俺の菜緒が悲しんじゃったんだけど」
安心する声。助けに来てくれたんだね…。
「おい、いい加減にしろよ?」
そう言って明は男二人に何かを耳打ちした。するとたちまち二人は謝って逃げ出した。
何て言ったんだろう。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
「待つのはあなたの方よ、松平花織さん。自分のした事わかってんの?」
菜緒が凍てつくような目で松平さんを睨む。さらに明にも睨まれ、とうとう泣き出してしまった。
「羨ましかった。お嬢様で明くんが恋人で素敵な友達もいて。明くんなら唯一……私を認めてくれると思ったの…」
最後の言葉はみんなの耳には届かなかった。この子は、きっと悪い子じゃない。そう思った。
「松平、こよみに言う事があんだろ」
「…ごめんなさい、坂倉さん」
「うん。もういいよ。でも、この先こんな事はもうしてはダメだよ。友達が欲しいなら私が…仲良くするから…。その時まで…だけど」
「うん、ありがとう…」
彼女は優しく笑った。
______そしてこの日は私が元気だった最後の日だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」


【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる