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自覚
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「なんなの?さっきから黙って聞いてれば…。誰が死ぬ人間が生きる人間を好きになったらいけないって決めたのよ!?どうしてそんなにマイナス思考なの?残りを楽しむって選択はこよみの頭の中にはないわけ?!相手を傷つけるとか、そんなの関係ないでしょ!?明はそれでも側にいてくれるって言ってるんだから。どうして自分から離れていこうとするの、私だってずっとこよみといるに決まってるじゃない!!」
息どこで吸ってるんだ…というぐらい一気に話した菜緒。こんなに怒鳴ることなんて今まではなかった。
「ごめん」
何に対して謝っているのかな。自分に?菜緒に?どちらかわからない。菜緒が私を見据えていう。
「こよみ、私はあなたに後悔して欲しくない。少し勇気を持ってみても良いと思うの…」
「うん…。だから、私は言うと決めたよ、ちゃんと言わないと後悔すると思うから」
家に帰ると珍しくお父さんがいた。休みでも取ったの、と聞くと
「もともと前から予定してたんだよ」
「そうなんだ?やったね!…」
嘘だよね、きっと私のためだよね。
自分たちも辛いくせにずっと笑っていてくれる。あの二人を置いていってしまうんだ…。
きっと、たくさん泣かせてしまうんだろうね…。ずっと私は笑っていて欲しいのに。
ごめんなさい、とても親不孝者ですね私は。二人より先に死んじゃうなんて…。
「明、今日午後までだよね」
学校に着くと開口一番に明にこう言った。
「そ、そうだけど…。珍しい、こよみから話しかけてくるとか」
「そこは…どうでもいいの!とにかく放課後屋上来てね」
「わかった」
誘えた…。とりあえず、第一関門はクリア。
「ごめんね、私も居てあげたいのは山々なんだけど弟の面倒みなきゃで…」
「一人で大丈夫…きっと」
きっと…向こうの気持ちを知ってるとはいえ、改めて自分の気持ちを伝えるのはある程度の勇気がいるわけで…。
私は放課後、ドキドキしながら階段をのぼった
「明」
「おー、来たな。…で?どーした」
着くと明はもうそこに居て、私に手を振った。明は少し気まずそうに、
「…告白の返事か?別に無理しなくてもいい。なんならふってもらっても……」
「好き…です。私は明が好きです!」
「…構わないから…?」
明の言葉に半ば被せるように言った。当の明はというと、少し驚いているようだ。
「聞いて。私ね、正直言うと余命宣告されたとき、特に思い残したこともなくて、ただ菜緒に申し訳ないとかそれだけだった。確かに『死』ってものがどんなのか知らなくて現実味がなかったよ。でもね、だんだんと弱っていくのがわかって失いたくないものが見えてきた。明や菜緒と話したり、一緒にいたりする…そんなふつうのことが何よりも大切になった。でも、私には時間がない。やりたいことも出来ずに死んでしまうんだって思って、全部諦めてた」
ここまで一気に話してもう泣きそうだ…。明は黙ったまま私の話に耳を傾けてくれている。
「恋だって…しちゃいけないと思ってた。死ぬ人間だから、悲しませるだけで何もいいことないって。でも、恋…してしまった。私は誰かを悲しませたくないし、自分も悲しくなるのがいやだった。でも明言ったよね…はなれないって。明にはなんともない言葉だったとしても、私はとても嬉しかった。もう私、自分に嘘つけないなって、誤魔化せないなって思った…」
「……こよみ」
「だめって、思ってたのにっ…でも、好きなの…、しょうがないじゃん…」
ずっと黙ったままの明が私の手を握る。
「だめじゃねぇだろ。前も言ったが俺は何があろうが離れない。好きだ…これから先何があってもずっと好きだ」
その言葉にまた涙が溢れる…。
「でも私…死んじゃっ…」
「…こよみがいいんだよ、俺は。他のやつは嫌なんだよ」
手の甲で私の涙を拭く。
「あ…きら…」
目が合い、ついには二人の影が重なる…。その瞬間は何もかも忘れてしまいそうな…。
「…可愛い」
「うっさい…」
「とにかく、俺はずっとお前の味方だから」
私…今幸せです。罰が当たりそう。この時間が続けばいい…そんなことはありえないのだけれど。
あと、どうかもう少し…もう少しだけ私に時間を下さい。
息どこで吸ってるんだ…というぐらい一気に話した菜緒。こんなに怒鳴ることなんて今まではなかった。
「ごめん」
何に対して謝っているのかな。自分に?菜緒に?どちらかわからない。菜緒が私を見据えていう。
「こよみ、私はあなたに後悔して欲しくない。少し勇気を持ってみても良いと思うの…」
「うん…。だから、私は言うと決めたよ、ちゃんと言わないと後悔すると思うから」
家に帰ると珍しくお父さんがいた。休みでも取ったの、と聞くと
「もともと前から予定してたんだよ」
「そうなんだ?やったね!…」
嘘だよね、きっと私のためだよね。
自分たちも辛いくせにずっと笑っていてくれる。あの二人を置いていってしまうんだ…。
きっと、たくさん泣かせてしまうんだろうね…。ずっと私は笑っていて欲しいのに。
ごめんなさい、とても親不孝者ですね私は。二人より先に死んじゃうなんて…。
「明、今日午後までだよね」
学校に着くと開口一番に明にこう言った。
「そ、そうだけど…。珍しい、こよみから話しかけてくるとか」
「そこは…どうでもいいの!とにかく放課後屋上来てね」
「わかった」
誘えた…。とりあえず、第一関門はクリア。
「ごめんね、私も居てあげたいのは山々なんだけど弟の面倒みなきゃで…」
「一人で大丈夫…きっと」
きっと…向こうの気持ちを知ってるとはいえ、改めて自分の気持ちを伝えるのはある程度の勇気がいるわけで…。
私は放課後、ドキドキしながら階段をのぼった
「明」
「おー、来たな。…で?どーした」
着くと明はもうそこに居て、私に手を振った。明は少し気まずそうに、
「…告白の返事か?別に無理しなくてもいい。なんならふってもらっても……」
「好き…です。私は明が好きです!」
「…構わないから…?」
明の言葉に半ば被せるように言った。当の明はというと、少し驚いているようだ。
「聞いて。私ね、正直言うと余命宣告されたとき、特に思い残したこともなくて、ただ菜緒に申し訳ないとかそれだけだった。確かに『死』ってものがどんなのか知らなくて現実味がなかったよ。でもね、だんだんと弱っていくのがわかって失いたくないものが見えてきた。明や菜緒と話したり、一緒にいたりする…そんなふつうのことが何よりも大切になった。でも、私には時間がない。やりたいことも出来ずに死んでしまうんだって思って、全部諦めてた」
ここまで一気に話してもう泣きそうだ…。明は黙ったまま私の話に耳を傾けてくれている。
「恋だって…しちゃいけないと思ってた。死ぬ人間だから、悲しませるだけで何もいいことないって。でも、恋…してしまった。私は誰かを悲しませたくないし、自分も悲しくなるのがいやだった。でも明言ったよね…はなれないって。明にはなんともない言葉だったとしても、私はとても嬉しかった。もう私、自分に嘘つけないなって、誤魔化せないなって思った…」
「……こよみ」
「だめって、思ってたのにっ…でも、好きなの…、しょうがないじゃん…」
ずっと黙ったままの明が私の手を握る。
「だめじゃねぇだろ。前も言ったが俺は何があろうが離れない。好きだ…これから先何があってもずっと好きだ」
その言葉にまた涙が溢れる…。
「でも私…死んじゃっ…」
「…こよみがいいんだよ、俺は。他のやつは嫌なんだよ」
手の甲で私の涙を拭く。
「あ…きら…」
目が合い、ついには二人の影が重なる…。その瞬間は何もかも忘れてしまいそうな…。
「…可愛い」
「うっさい…」
「とにかく、俺はずっとお前の味方だから」
私…今幸せです。罰が当たりそう。この時間が続けばいい…そんなことはありえないのだけれど。
あと、どうかもう少し…もう少しだけ私に時間を下さい。
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