空からのI LOVE YOU

奈津 柚亜里

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初めての喧嘩

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少しのモヤモヤとドキドキを残したまま教室に戻るとほとんどの生徒はもういなかった。黒板の字を見ると、

「言い忘れていたけど今日から懇談だから。遊んでもいいけど勉強もしろよ」

という、先生の字。なんといういい加減さ。私らの担任は一体どんな人だよ。

菜緒と帰ろうか。

「ね、今日いつものとこ行こうよ」

「いいよ」

なんだかんだと菜緒も好きなあのカフェバー。二人で行くとマスターが直接迎えてくれた。

「菜緒ちゃんもこよみちゃんもいらっしゃい。ところでこよみちゃん、この前の…」

「マスター」

マスターがあのことを言いそうになったので遮る。今、言われるわけにはいかない。

「了解です。じゃああとでね」

「なに?まぁいいや。私ワッフルね、苺の。あとは、カフェオレで」

菜緒は相変わらずの甘党。私はそうでもないので、見ているだけでお腹いっぱいになってしまう。

かくして数分後。

「美味…!やっぱり美味しいわぁ~。そうそう、マスター。私彼氏できたの」

「へぇ、さぞかしかっこいいんだろうね」

そういえば私まだ紹介してもらってなかったなぁ…。

「というか、誰なの?」

「矢野拓人」

ヤノタクト…って誰だよ。

「誰なの」

「また今度ね」

そんなやりとりを見ていたマスターは、

「二人は本当に仲が良いね」

「でしょう?」

「あ、そろそろ弟の迎えがあるから帰るわね。お会計お願いします」

「いいよ、払っておくから。仮にも坂倉家令嬢だからね」

「ありがとう」


「さて…どうだったの」

マスターが菜緒がいなくなったのを確認して話してきた。

「実は余命宣告されちゃって」

「まさか…」

「本当なの」

マスターはしばしショックわを受けたように黙り込んだ。

「さっきの様子じゃ、菜緒ちゃんには言ってないみたいだね」

言わなければいけないことくらいわかっている。でも、菜緒が悲しくなるのは嫌なんだ。

「くれぐれも無理はしないで。ごめんね、困らせたかったわけじゃないんだよ。でも、言ってもらえない方の気持ちも考えてね」

「うん、わかってるよ。わかってるのよ…。それじゃあ、そろそろ帰るね」

「じゃあ、また来てね」

「そうするわ」


マスターは正しい。ずっと黙っているわけにもいかないんだから。どうやって言おうかな。よし、決めた。明日こそ絶対に菜緒に話す。きちんと…話さなきゃ。
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