空からのI LOVE YOU

奈津 柚亜里

文字の大きさ
上 下
9 / 35
初めての喧嘩

6

しおりを挟む
「私は延命しません」

次の日病院で私はそう言い放った。

「では、担当医を紹介します。白川恵梨香さんです」

「白川です。何か不安があれば言ってね」

第一印象は若くて綺麗でお姉さん。今日もお麗しい、って言葉が似合う。

「よ、よろしくお願いします」

「さて、取り敢えず薬を出しますね。痛み止めと、進行を遅める薬とかね。それと、なにかあった場合はきちんと私に連絡すること。いいわね」

病院できるだけ行きたくないんですが…。顔はにこやかなのに、まったく優しそうな感じじゃないです…。

「じゃあ、学校行っておいで」

「行ってきます」

菜緒になんて言おうかな…明にも言わないと…。どうしよう。

少し気が重くなったまま学校に行くと、菜緒が飛びついてきた。

「大丈夫だった?なにもない?」

どうしよう。言うべき?言わなきゃ…

「あ…大丈夫。なんともない。少し風邪が酷くなった感じ」

私の口から出たのは反対の言葉だった。でも、菜緒は信じてくれたみたいで、

「良かった、次移動だから早く行こ?」

ごめんね、菜緒。菜緒には一番に言うはずだった。でも、菜緒が悲しむ顔は見たくない。

お昼休み、私は屋上でご飯を食べることにした。菜緒は、彼氏さんと食べるらしい。

誰もいないようで大きく伸びをする。頬をくすぐる風が、心地いい。

雲ひとつない空。私の心の中とは反対。 

「なにしてんの」

「なんでもいいじゃん」

どうしてこいつは私のいるところに現れるのかなぁ。

「どっか行ってよ」

「ひどいな、おい」

「………。」

「なんか言えよ、傷つくだろうが。まあ、そんなこよみも嫌いじゃないけど」

…なんなんだよ、こいつは。地味にドキッとしてしまったじゃないか。まあ、明は友人としての意味で言ってるんだろうけど。

「今日の、こよみ変じゃね?」

「そ、そ、そ、そんなことは…ないよ??」

「…嘘つくの下手すぎだわ。菜緒と話してても上の空だしな」

そんな、顔に出てたんだろうか。だとしたら、私は相当正直者らしい。

「そ、そんなわけないじゃん」

「じゃあなんだ、そのうろたえようは。ずっとこよみを見てる俺が言うんだから間違いない」

明は少し赤くなって顔を伏せた。自分で言って照れてるの?
…あ、そういうことか。

「明は面倒見いいからね」

「馬鹿じゃねーの。ったく、どんだけ鈍いんだこよみは」

「はあ?ふざけないで。誰が鈍いのよ」

「…お前だよ。さぁ、そろそろ五限始まるな」

私は立ち上がろうとしたがバランスを崩して倒れ込む。

「え?わ、きゃあぁぁぁ!」

「おま、おい!!」

ドスンと鈍い音がしたと思えば、目を開けると、どアップの明。それに、この体勢…私、明に覆いかぶさっちゃってるんですけど!!俗に言う、床ドンってやつだ。

「いってー。こよみ、おま、どけろ…やばいから。…色々…」

明だと余計に恥ずかしいっ…。え、明っ?……まさか。


「わ、わたし…先行く!!じゃあね!!」

「おう…あれ、これデジャヴ…」


まさか、ね。恋なわけないよね。明じゃなくてもそうなるんだよね。

わたしは、また自分に嘘をつく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。

ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」  はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。 「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」  ──ああ。そんな風に思われていたのか。  エリカは胸中で、そっと呟いた。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

処理中です...