空からのI LOVE YOU

奈津 柚亜里

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ドキドキ

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それからしばらく体調不良が続いたが、多分風邪くらいだろうと思っていた。

「あー、こよみ、また無理してんでしょー。大丈夫、しんどい?」

「んー、平気。」

「いい加減病院行ったら?」

「いやだ」

絶対行きたくないね。小さい時から病院は嫌いなんだよね。学校で採血でもあろうものなら、私は校舎中走り回るよ。

「…いい加減その病院嫌いなおせば?ガキかよ」

突然会話に入ってきたのはこの男。

「まあまあいいじゃないの、明。あんただって今だにトマト食べられないでしょ」

そーだそーだ!もっと言ってやれー!

「うっせーよ…。しょーがねーじゃん、食べれないんだから」

「こよみの病院嫌いもそんなもんでしょ」

明は菜緒に説得されたようで、静かになった。

というか私、明と一言も話してないんだけどね。


「……で、なにかあったの」

「え?」

屋上でお昼ご飯を頬張っていたら突然、菜緒の言葉。

「なんかあったでしょう、二人」

どうして、わかるんですか。私なにも言ってないですよね。
逆に怖いわ。

「こよみは明の方向かないし、明はこよみのことちらちら見るし」

「…菜緒。明はこの地球を危険にさらすんだよ。私は絶対明のことなんか好きにならないから!」

「なにも言ってないじゃない。でも、明そこまで悪くないと思うけど?まあ、私は彼氏いるし関係ないけどね」

そこまでなんだよ、明は。だって、断りもなく女の子にキスするんだから。ほんと最低!…というか、

「菜緒、彼氏ってなに。私聞いてない!」

「あれ、言ってなかった。また、今度ね」

いつの間に…。まあ、菜緒は美人だからわかるんだけど。

「こよみは好きな人とかいないの」

「いない」

ほぼ即答。だってね、恋ってなにかわからないから。

「本当に、明にしといたら?多分明はこよみのこと好きだと思うよ」

いやいやいや、それはないだろう!仮にそうなら、私に無理矢理キスなんてしないはず。そもそも、私ずっといじめられてきたし!

でも、なんか…モヤモヤ?

「まあ、頑張って?(明もね)」

えぇー、と私は思ったが、まぁ菜緒はしっかりしてるし。でも、明のことは別だから!


昼休みが終わり教室に戻ると、担任の広瀬先生が入ってきて、懇談のことについて話した。広瀬先生は若くてかっこいいので女子に人気があるみたい。でもまあ、私は興味ないのだけれど。

「懇談かぁ…」

菜緒が横で大きなため息をつく。懇談って別にいやじゃないんだけど、何か得意じゃない。

「でも、菜緒は何も問題ないでしょ?」

「んー。それがね、その日両親不在で弟の面倒見なきゃなの。だから、はやくしてもらわないと……と、私そろそろ迎えに行かなきゃ」

大変だなぁ、お姉さんって。私は一人っ子だから、よくわからないけど、兄妹とかって羨ましい。

生徒玄関へ降りてみると、靴箱にもたれかかる一つの人影。

「…よぅ」

「何してんの、明」

そう問うと、待ってたと返されたのでそれはわかってるんだけど…と思ったり。

あの日以来、何となく気まずくて一言も交わしてはいない。

「この前は、悪かった」

「え?」

明が謝った…。なんでそんなすんなり受け入れてるんだよ。明らしくないんですが…(失礼
謝ってくれてるし、まぁいいかな?と自分に聞いてから、

「もう、いいよ。でももう、しないで」

「わかった…。一緒にかえる?」

えーー、また一緒に帰るんですか。私、またなにか言われるんですけど。

そう思いつつ私は明の後を追った。
家の前に着いて、突然明が私に聞いてきた。

「こよみ、俺のことどう思ってる?」

「えーと…明?明は明だよ。まぁ顔は優くんに似てるけど」

私は何も間違ったことは言ってないはず…だよね?

「うん、聞いた俺が馬鹿だったよ。こよみ、勉強できんのにそういうとこ、鈍いよな」

「は、それどういう意味。私は英語では明に負けたことないんだけど」

「そーいうことじゃねーんだよ。バーカ」

明は私に向かって笑顔を見せた。

「……っ??!!」

なんだ今のは。いくら嫌いとはいえ、顔はいいんだし、顔は。

「じゃ、じゃあね」

「え?あぁ」

なんで、なんでなんだ!私は明のことは嫌いなんだ。なのになんで…。この胸の苦しさは…いったいなに…??

いつもの倍くらい脈拍が速くなっている。
どーした、私。だって明だよ?おかしいよ。

私、さっきから明のことばっか考えてる。うわ、やだやだ。…取り敢えず、菜緒に色々聞いてみよう。

家の門に入ってから玄関に着くまでこんなに長いと感じたことはなかったのに。

「た、ただいま」

「おかえりなさいませ、こよみさん。あら、随分とお顔が赤いようですが…熱でも??」

お手伝いさんにまで言われる始末。そんなに赤かったんだ…。



_____このとき、私はまだ気づいていなかった。いや、気づかないふりをした。これが…切ない恋の始まりだということに。
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