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事のはじまり
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「おはよう。こよみ」
「おはよう、菜緒は眠そうだね」
「昨晩弟がクズってね。こよみ今日もきれいだね?」
「え、空?快晴だね」
「(天然め…)」
私は、坂倉こよみ。高校三年生で性格は、人見知り。よくおしとやかだって言われる。どこが、と思うのだけれど。
そして、私の横で大きなあくびをしているのが、水瀬菜緒。私の親友。弟がいて、とても面倒見がいい。
いつもの道を2人で歩くいつもの日常。
「こよみ、今日調子悪い?顔色悪いけど…」
菜緒が心配そうに訊いてくる。
「最近ちょっと調子悪くて…でも、大丈夫でしょ」
「そう?無理しないで、何かあったら言ってね」
こういうところに、姉感…とでも言うのだろうか、を感じる、
私たちが通っているのは、私立聖南高等学校。
歴史が古く、古風な校舎が私のお気に入り。
「二人とも、おはよう」
靴を履き替えていると、後ろから知っている声が聞こえた。
「ああ、おはよう。明」
菜緒が応える。
少し気だるそうなのは岡本明。私と菜緒の幼なじみで、小中と同じ学校。
私の家と明の家は距離にして徒歩10秒。小さいときから顔はよくて、女の子によくモテる。顔はいい、顔は。ちなみに、私は優しくされた記憶が全くない。よく、いじめられた、というかそれのみだ。だから私はこいつが苦手。
「おー、菜緒。…こよみ?」
私はあまり明とは一緒にいたくないんだけど…
目をそらしながら一言、おはようと言う。
「顔くらい見ろよな…」
私が何故ここまで明と関わるのを拒むのか…
率直に言うと、女の子の視線が痛いからだ。
「…あの子って、幼なじみの…」
「…ちょっと可愛いからって明くんに近づくなよ」
そうそう、今言われているこんな感じの。だいぶ前から言われてきたとはいえ気持ちの良いものではない。
そんな私をみかねて菜緒が助け船を出してくれる。
「この子、今日体調悪いらしくて、そろそろ教室行くね。」
「…ああ」
なんとか菜緒のおかげで助かった。ちなみに私と菜緒はクラスが一緒、明は別。
はあ…なんか気持ち悪い…。
その後も体調が優れないまま。今までの授業の内容は頭に入っていない。気付けばもう六時間目。
「って、ちょっと!こよみホントに大丈夫なの?」
私が思っているより私の顔色は良くないらしい…。
「保健室行っといでよ。私が先生に言っとくから。」
ありがとう、と言ってから私はふらつく足取りで保健室に向かった。
保健室に行くと先生はいなかった。
ベッド借りよう…まあ、使っても怒られないでしょ。
ベッドに入るとひどい頭痛のせいかすぐに瞼が重くなってきた。
どのくらいたっただろうか…。腕の辺りの温かさで目が覚める。頭痛はもうとうに治っているようで。
腕の辺りの温かさの正体…
「どうして明がここに…?」
すると私の声でか明が起きる。
「…はよ」
確かにおはようだけど、どうしているんだ…。
「菜緒に言われてきたら、お前寝てたから」
そうなんだ。…いつもあまり話さないからか、会話が続かない。昔は普通に話してたのに…
「HRは?」
とにかくこの沈黙を抜けたくて話しかける。
「終わったんじゃね?俺のクラスはとっくに終わってるけど…」
そっか、クラス違った。どうも慣れないこの感じ。
しばしの沈黙が2人を包む。
「私、そろそろ帰るね。カバンとってこないと…」
堪えきれなくなった私は早口で言う。
「あるけど、カバン…」
「あ、そうなの?」
ベッドから降り、立ち上がろうとした。が、まためまいがした。
やばい、そう思ったときにはもう遅い。床が近づく。
「…ったく、あぶねーな」
しかし、私の身体が床に落ちることはなかった。
「あ、ありがと」
危機一髪。顔面から床に落ちるのはいくらなんでも勘弁願いたい。
「…てかこいつ、細すぎだろ…」
明が何か呟く。
「そろそろ離して…?」
「あ、悪りぃ…。」
「平気だから。多分」
「…家まで送るから。」
なんてことだ。他の女子なら、もしかして私の事…?……となるところだけれど私の場合は違う。むしろ迷惑極まりない。
「いやいやいやいや、結構ですから」
一緒に帰るのはよろしくない。
「…なんで」
少し不満げな顔をする。どうしてだ…。私と帰らなくても女の子は手に取るほどいるでしょうに。
いや…、なんでって…女の子たちの…(以下略)
「1人で大丈夫」
「遠慮すんなって」
「別にしてない」
私が拒むごとに、明の機嫌が悪くなっていく。
「…1回だまれよ」
「何………ん?!」
私今…明になにされてる?いや、何されてるのかはわかっているのだよ。はい、落ち着こう…。
しばらくして、明の顔が遠ざかる。
「……何…すんのよ」
「何って…キス?」
そのくらいわかってます。
「なんで…?!」
「こよみが黙らないから。」
っこいつは、そんな理由で私に…キスしたのか!どうせ、その他大勢の中の1人であろうがいくらなんでもそれは酷すぎやしないか。
「さ、サイッテー!」
明は動じず私を見ている。なんだよ。
「はいはい、わかったから。帰るぞ」
完全に明のペースにのまれてる…。そんな自分に腹がたつ!!
「明とは嫌っていってんでしょう!!」
「……じゃあ、誰とだったら良かったんだよ」
「は?」
「何でもねえよ…。こよみ、行くぞ」
仕方ない、ひとまずここは帰ることにしよう。私は諦めて明と帰ることにした。
もう…なんか頭いたいのどっかいったし…。
にしても…明、絶対許さない…。
「おはよう、菜緒は眠そうだね」
「昨晩弟がクズってね。こよみ今日もきれいだね?」
「え、空?快晴だね」
「(天然め…)」
私は、坂倉こよみ。高校三年生で性格は、人見知り。よくおしとやかだって言われる。どこが、と思うのだけれど。
そして、私の横で大きなあくびをしているのが、水瀬菜緒。私の親友。弟がいて、とても面倒見がいい。
いつもの道を2人で歩くいつもの日常。
「こよみ、今日調子悪い?顔色悪いけど…」
菜緒が心配そうに訊いてくる。
「最近ちょっと調子悪くて…でも、大丈夫でしょ」
「そう?無理しないで、何かあったら言ってね」
こういうところに、姉感…とでも言うのだろうか、を感じる、
私たちが通っているのは、私立聖南高等学校。
歴史が古く、古風な校舎が私のお気に入り。
「二人とも、おはよう」
靴を履き替えていると、後ろから知っている声が聞こえた。
「ああ、おはよう。明」
菜緒が応える。
少し気だるそうなのは岡本明。私と菜緒の幼なじみで、小中と同じ学校。
私の家と明の家は距離にして徒歩10秒。小さいときから顔はよくて、女の子によくモテる。顔はいい、顔は。ちなみに、私は優しくされた記憶が全くない。よく、いじめられた、というかそれのみだ。だから私はこいつが苦手。
「おー、菜緒。…こよみ?」
私はあまり明とは一緒にいたくないんだけど…
目をそらしながら一言、おはようと言う。
「顔くらい見ろよな…」
私が何故ここまで明と関わるのを拒むのか…
率直に言うと、女の子の視線が痛いからだ。
「…あの子って、幼なじみの…」
「…ちょっと可愛いからって明くんに近づくなよ」
そうそう、今言われているこんな感じの。だいぶ前から言われてきたとはいえ気持ちの良いものではない。
そんな私をみかねて菜緒が助け船を出してくれる。
「この子、今日体調悪いらしくて、そろそろ教室行くね。」
「…ああ」
なんとか菜緒のおかげで助かった。ちなみに私と菜緒はクラスが一緒、明は別。
はあ…なんか気持ち悪い…。
その後も体調が優れないまま。今までの授業の内容は頭に入っていない。気付けばもう六時間目。
「って、ちょっと!こよみホントに大丈夫なの?」
私が思っているより私の顔色は良くないらしい…。
「保健室行っといでよ。私が先生に言っとくから。」
ありがとう、と言ってから私はふらつく足取りで保健室に向かった。
保健室に行くと先生はいなかった。
ベッド借りよう…まあ、使っても怒られないでしょ。
ベッドに入るとひどい頭痛のせいかすぐに瞼が重くなってきた。
どのくらいたっただろうか…。腕の辺りの温かさで目が覚める。頭痛はもうとうに治っているようで。
腕の辺りの温かさの正体…
「どうして明がここに…?」
すると私の声でか明が起きる。
「…はよ」
確かにおはようだけど、どうしているんだ…。
「菜緒に言われてきたら、お前寝てたから」
そうなんだ。…いつもあまり話さないからか、会話が続かない。昔は普通に話してたのに…
「HRは?」
とにかくこの沈黙を抜けたくて話しかける。
「終わったんじゃね?俺のクラスはとっくに終わってるけど…」
そっか、クラス違った。どうも慣れないこの感じ。
しばしの沈黙が2人を包む。
「私、そろそろ帰るね。カバンとってこないと…」
堪えきれなくなった私は早口で言う。
「あるけど、カバン…」
「あ、そうなの?」
ベッドから降り、立ち上がろうとした。が、まためまいがした。
やばい、そう思ったときにはもう遅い。床が近づく。
「…ったく、あぶねーな」
しかし、私の身体が床に落ちることはなかった。
「あ、ありがと」
危機一髪。顔面から床に落ちるのはいくらなんでも勘弁願いたい。
「…てかこいつ、細すぎだろ…」
明が何か呟く。
「そろそろ離して…?」
「あ、悪りぃ…。」
「平気だから。多分」
「…家まで送るから。」
なんてことだ。他の女子なら、もしかして私の事…?……となるところだけれど私の場合は違う。むしろ迷惑極まりない。
「いやいやいやいや、結構ですから」
一緒に帰るのはよろしくない。
「…なんで」
少し不満げな顔をする。どうしてだ…。私と帰らなくても女の子は手に取るほどいるでしょうに。
いや…、なんでって…女の子たちの…(以下略)
「1人で大丈夫」
「遠慮すんなって」
「別にしてない」
私が拒むごとに、明の機嫌が悪くなっていく。
「…1回だまれよ」
「何………ん?!」
私今…明になにされてる?いや、何されてるのかはわかっているのだよ。はい、落ち着こう…。
しばらくして、明の顔が遠ざかる。
「……何…すんのよ」
「何って…キス?」
そのくらいわかってます。
「なんで…?!」
「こよみが黙らないから。」
っこいつは、そんな理由で私に…キスしたのか!どうせ、その他大勢の中の1人であろうがいくらなんでもそれは酷すぎやしないか。
「さ、サイッテー!」
明は動じず私を見ている。なんだよ。
「はいはい、わかったから。帰るぞ」
完全に明のペースにのまれてる…。そんな自分に腹がたつ!!
「明とは嫌っていってんでしょう!!」
「……じゃあ、誰とだったら良かったんだよ」
「は?」
「何でもねえよ…。こよみ、行くぞ」
仕方ない、ひとまずここは帰ることにしよう。私は諦めて明と帰ることにした。
もう…なんか頭いたいのどっかいったし…。
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