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三章 元おっさん、竜王退治へ

35 こんなの聞いてないんですけど!

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【忘れ去られた古代塔】と呼ばれるようになっている塔に足を踏み入れたヴィーゼたち。
かなり古い場所であり、崩落しそうなほど困窮していた。
足場もかなり悪く、怪我してしまいそうだった。
丁寧に足取りを取り、下へと降りていく。足場も不安定なため、壁に手をつけながら、一歩ずつ降りていく。

「2人とも、大丈夫?」
「はい、何とか」
「うぅ、物凄く怖い」

ヴィーゼは見た目は幼女とはいえど、中身はおっさん。その為、こういう危機では先頭に立つのが良いだろうと、心底思っている。
後ろにいる2人が不安にならないように。

(ここに来る前に、アンナさんから聞いたけど。まさか、竜王復活の予兆があるとは…。ドラゴンは普通はSランク魔物。だが、竜王ともなれば魔王と同等のランク。SSSトリプルエス。魔物使役はできる…。あれ、ならSSSトリプルエスの魔物を使役できるようにすれば、いい問題じゃね?)

アホだ。竜王復活がいつになるのか。分からない以上時間がかなり欲しいはず。
未だにCランク程度(Dランクから上がった)の魔物を使役できるぐらいの力なはずが、一気にそこまで行くにはどれくらいかかるものか。


魔物にはそれぞれランク付けがされている。FランクからSランク。
それが通常そのもの。だが、稀にいるSSダブルエスSSSトリプルエス
これはかなり特殊な例なのだが、魔王が存在するこの世界では、“王”がつく魔物類は大体SSSトリプルエスだ。

魔王、竜王、冥王、百獣の王、蛇王など。

他にも沢山いるが、大体SSSトリプルエスランク。

それら類を使役できるなら、魔王だって使役できる。そうなれば、世界の命運を持っていると言っても過言ではないほどの力となる。
魔王を使役できるなら、地位や名誉、資金は全てヴィーゼのもの。

(流石に無理……? いやでも、そうしないとまずいんだよな。竜王の力では、あの王国は火の海。というより、何でこう立て続けに? 忙しすぎて死にそう。
異世界って意外とブラック?)

と嘆く。実際に何度か死にかけたことは多々あった。
そう、ここに来る前に蛇に食われかけそうになったり、瓦礫が落ちてきて死にそうになったり…。
不運立て続けに。

(っていうか、どこまでいくの? 流石に足パンパン)

地下深くまで潜っていそうだが、未だに階段は続く。ここまで歩いたのは、久しぶりだ。
と、思いながら。

「あ、ヴィーゼさん。そこに虫が」
「へ? ぬわぁあああああ!!」

危うく踏んでしまいそうなところに、蟻の大群がいた。何故こんなところにいるのか。
と、何度も何度も心の中で叫ぶ。

(し、心臓に悪い)

未だに心臓がドクドク言っている。煩いほどに。そしてその音はまるで、反響しているように、耳に残る。

「さ、先に進もう」

この先、嫌というほど虫が現れた。
ここはゴミ屋敷か何かかと、思うくらい虫が大量に。その度、驚いており、疲労が溜まりにも溜まって、憔悴していた。

♢♢♢

先へ先へと歩いて行っていると、いよいよ結晶の世界に辿り着けた。
アンナさんからの情報を頼りに来たが、ほぼ一本道。
あまり迷わずに来れた。

「ハァ…ハァ…、や、やっと着きましたね」
「う、うん…。疲れたぁ」

流石の2人も疲れ果てていた。
うん、俺も。俺も右に同じく。
結晶の世界はかなり綺麗で、あちこちに結晶があった。
右も左も上にも白い結晶。まるで幻想的だ。
こんなの日本ではなかなか見られないのではないだろうか?
そう考えるとめっちゃお得。
1本貰ってもいい?

ここまでの道のり、ほんと大変だった。
虫、虫、虫。
この塔、虫の記憶しかない。むしろ、虫が脳に刷り込まれた。
なんとも地獄。

「でも、綺麗ですね!」
「うん、確かに。まるで雪の世界みたい」

うん、同感。
カメラがあったら撮りたい。

「うん? なんでしょうか、あれは」

ローズが何やら何かに気づいた。
指さす方向を見ると、あたりの結晶とは違い、青く光っていた。
あの石は魔石の類。
魔力が内部に存在している、魔石だ。
だが、かなり大きいと見て取れる。何かが濁っていて、中の様子を見ることができないほど。

(なんだろうか、これは)

そう言えば、アンナさんが言っていた。
この、【忘れ去られた古代塔】には竜王が封印されていると。
竜王が復活する予兆。それは地面が割れ、天変地異が起こると言われているということ。
そしてその封印、噂では何かの石に閉じ込められている。ということ。
と言うことは、目の前にあるものは。

その魔石に触り、ガラスに白い息などがかかり、曇ったガラスに絵を描くように、スライドさせる。
先程まで濁っていたはずが、中の様子がくっきりと分かるぐらい綺麗となった。

(赤い体に、鱗。そしてあの翼と、この胴体……。間違いない、竜だ)

破滅竜・ロヴィーナ。竜王。
竜を従えている竜。その王とはこのロヴィーナ。
魔石越しだが、威圧を感じる。
もし、この竜が今ここで復活してしまえば。俺たちはただじゃ済まない。

威風堂々としている竜王ロヴィーナ。
マジで動いたらやばいんじゃないの!?
この大きさ。見上げるぐらいの大きさ。
うん、やばいって絶対!
確かに、火の海にはなりそうだ…。

「うーん、どうしますか?」
「………帰りましょう」

まだ封印が解けていないことがわかった。
ならば、それに備えて少しでもレベルを上げなくちゃならない。
今のレベルは40。あれからめちゃくちゃ上がった。ギルドに入ってからと言うもの、かなりのスピードでレベルが上がる。やはり、高ランク魔物を倒すとかなり経験値が美味しい。
Cランクの魔物しか使役できない俺からしたら、Bランク以上の魔物は、正直倒さないといけない。

(竜王が復活するまで、SSSトリプルエスいけるか?)

答えはノー。
普通に考えて無理だ。なら、普通に倒すしかなくなる。
まさか、竜王復活がするとは思っても見ない。
だが、ここは異世界。魔王以外そう言うのは、存在するのだろう。
魔王もSSSトリプルエスらしいが、魔王を従えたら、正直これ以上戦うことはないんじゃないのか?

よし、決めた。SSSトリプルエスまでの魔物を使役できるぐらいになったら、自然な場所でスローライフをしよう。うん、そうしよう。

流石に大変。だから休みたい。

だが、異世界ともなれば時間に追われる日々はあまりない。と言うことは、休みたい時に休める。
うん、それまで頑張ろう。






♢♢♢







【忘れ去られた古代塔】を出て、山道を降りていく。
やはり足場はかなり悪い。普通に心臓がバクバク言っている。
生えている木で、少しずつ足取りを気にして降りているが、やはり怖いものは怖い。

『ギャオオオオオオ!!』

「………は?」

突然、そんな雄叫びが聞こえた。
誰かの断末魔か何かですか?(難聴)
アンナさんから聞いていた情報と全く違う。なぜなら、何も起こらず突然塔が崩れ、そこから先程封印されていたはずのドラゴンが、空を飛んでいる。

「え、嘘!?」
「ド、ドラゴン……」
「ど、どうするんですか!?」

何事もうまくいかない。
はい、人生そんなもん。
天変地異が起こるわけでもなく、なんの前振りもなしにロヴィーナは出てきた。
ロヴィーナの巨大な体で、塔は崩れ、その瓦礫が降ってくる。

「このままじゃまずい! 今すぐ逃げよう!」
「で、でも村の人たちは!?」
「………まずは、助けを呼びにいかないとだ!」

何が正しくて、何が違うのか。
そんなの分かりっこない。

だけど、それでも。助けを呼びにいかなくちゃ。
俺たち3人じゃ、普通に無理だから。

ほんと、異世界に来てから常識変わった。
っていうか、ロヴィーナさん! なんでいきなり封印が解かれるんですか!?
マジ意味わからん!!
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