おっさん転生〜異世界に転生したおっさんは、かっこいい幼女になりたい〜

猫屋敷

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三章 元おっさん、竜王退治へ

33 竜王復活の見込み

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王宮内の執務室。
大臣のデルバーと騎士団指揮者のハズキが、話し込んでいた。
どうやら風の噂でランスたちの話を聞いたようだった。

「…そうか。報告ありがとう」
「では、私はこれで」

一礼をし、デルバーの元から去る。煙草を吸い、そして煙を吐く。
紫煙を吐き、机の上に置かれている書類を見る。絶望したような顔をし、そして大きな溜息を吐いた。

「ハァ…、最悪だ。次から次へと……」

書類に書かれていた内容。
【竜王:復活】

「これは、この国を焼き払うぐらいの被害だろうな」

冷静な物言いだが、心底焦っている。眉間に皺を寄せ、何とも言えない表情をしていた。
最悪だ…。と、息を吐くように何度も吐く。

竜王というのは、洞窟の地下深くに封印されている。他のドラゴンよりも攻撃力が強く、誰もその洞窟が存在している場所には近寄らない。

だが、その近くには村が存在している。
元々は洞窟には結晶が存在している。右も左も天井にも結晶があり、“結晶の世界”とも言えるぐらいの量。
その洞窟にある結晶はとても希少なもの。
その為、買い取る商人も多いが、その竜王がいるせいで魔物の数が多い。
困り果てている商人と、村の人達。

「ハァ、勇者様たちを召喚しなきゃ、不味そうだよな」

勇者召喚。
各国で召喚されし勇者。そしてその勇者のパーティー。
そのメンバーたちを召喚させるのが、国の神官たち。そしてその勇者パーティーのメンバーというのが、まず。勇者。聖女。魔女。弓使い。

この4人が各地の国で召喚され、そしてその4人が出会う為にその神官が言う。
そしてその地に巡り、パーティーになると言うのが、勇者パーティーの出来上がり。

性別などは決まっておらず、勇者が女性で、聖女が男性になることもある。
その竜王が復活すれば、この地は炎に包まれ、破滅の危機。
未だに竜王は復活していない。デルバー大臣が見ているのは、竜王復活の“見込み”

その竜王は元々古代遺跡を守る守り神とされていたが、力があまりにも凄まじく、封印することとなってしまった。
その為、その洞窟に封印を目論み、その当時の“勇者たち”が封印する。
竜王を封印する為に召喚されるのが、その勇者たち。

デルバーの頭の隅では、その“勇者召喚”の検討が行われていた。

(出来るものなら、竜王が復活する前に誰かが倒してくれればいいのだが……。そう簡単には行くまいか)

半ば諦めている。
竜王の名前は“ロヴィーナ”
復活した際、この国は破滅する———。





そんな事を露知らず、ヴィーゼたちそのまま呑気に王国へ戻った。





竜王ロヴィーナ。正式名称。破滅竜・ロヴィーナ。
赤い色をし、全体が大きく、背中には宝石があった。鋭い爪に、鋭い牙。竜の始祖と言われるぐらいの強さ。
そして生き物たちが恐れるぐらいの、威圧的なオーラ。
殺されかねないぐらいの、息が詰まるぐらいの、威圧。誰もが恐れ、魔物でさえ、近寄らない場所。
復活すれば最初に狙われるのは、神聖王国リアモス。それは何故か。一番襲いやすいからだ。あまり距離が離れていない、その洞窟の場所。
リアモスが襲われれば、近くの森も大変なこととなり、終幕に向かわせられる。強制的に。


♢♢♢


「では、ヴィーゼさんはここまでで」
「はい、わかりました。ローズとカメリアを迎えに行きます」
「では、門の前でお待ちを」
「ヴィーゼ、ありがとね」
(お礼言われるようなことしたっけ? あまりできてないじゃん)

魔導帝国から帰った俺たちは、一息つかせる。
大変なこととなっていた為、俺は休息として酒場に寄った。もちろん、「お嬢ちゃんはまだ早いからね」と言われた。
善良で言っているのだろうが、俺は40代のおっさん。全然お酒も飲める年頃だが……。一度でいいから飲んで見たい。
異世界に転生してからと言うもの、お酒を飲めずというのは、些かなものか。

(だけど、この世界に来て約10年ちょい。時間感覚おかしくなるわ)

なんせ見た目が変わらない。
異世界に来て〇〇年と言うのは、正直めんどくさくなった。
とりあえず酒場がダメなら、料理店に行く。そこには子供用の飲み物も置かれている為、ローズたちを誘って行くとするか。

アンナさんから言われた通り、門の前で待っていると元気に走ってくるカメリアが目に入る。
久々の再会すぎて涙出そう。
後ろからローズもやってくる。少し顔を背けているが、それは猫のツンデレ……と言うのにしておこう。うん、そうしよう。

「久しぶり、元気してた?」
「うん! もうそりゃあばっちりと!」
「でも、少しだけ遅かった……」
「あはは、ごめんごめん。帰りに料理店行かない? お腹すいたし、飲み物飲みたいし」
「うん! ローズもいいよね!」
「ま、まぁ、好きにしたら」

ツンデレか。かわいい。
と、おふざけはやめて3人で早速行く。

料理店につき、早速注文とる。
西洋風のレストランのような雰囲気を醸し出し、まるで西洋に来たように感じたが、そもそも異世界自体西洋風な為、あまり驚かない。
と言うより、何度も来たことのあるこの店だ。今更驚くはずもない。

「あむっ!」

注文したステーキがやってくる。
銀色のナイフとフォークで切り、口に運ぶ。
口の中に赤ワインで煮込まれたお肉が口いっぱいに広がり、めちゃくちゃ美味しい。
そして運ばれた飲み物を飲む。
一気飲みすると、五臓六腑に染み渡った。

お腹が空きすぎて、喉が渇きすぎて、色んな意味でやばかった道中。
何故か昼間は暑すぎて、水分補給が鉄則だった。
例えるなら、あの某ゾンビホラーゲームをやって、ゾンビに噛まれて、「死ぬ!」ぐらいのHPにまでなったが、ハーブを見つけて、調合した時の安心感。
今のところは死ぬことはない。と言う感じ。

その前に変異種のゾンビに追いかけ回されてやっと見つけた! みたいな。
届けこの思い!

(あのゲーム面白かったなぁ、ホラーは苦手部類だけど。一番好きなのはストーリー系と音ゲー! 音ゲーに関してはスマホでだけど)

ゲームしていた時の記憶が、ポンポンポンと蘇り、感傷に浸る。

(そういや、ステータス画面が見えるようになった理由が、本当にあったとは…。本気でバグと心底、思っていたのに)

ステータス画面がギルドカートから見えずとも、分かる理由。
魔導の力が関係していた。
その理由はほぼ全国にあるギルドは、元々帝国のギルド協会が関係していた。
その為、魔導の水晶を使い、個人のステータスがわかるように、と言う機能が追加され、それが全国にあるギルドカードに流出された。
どう言う機能なのか。それは正直何も教えてはくれなかったが、聞けば多分。頭こんがらがる。

(俺、そう言うのマジ苦手)

特に理系が苦手だった学生時代。
数学、物理、化学。そんなの社会に出たらほとんど使わないじゃん!!
そう言う職業につく人だけでいいじゃん!!

「この後どうする?」
「うーん、ヴィーゼさん。どうしますか?」
「え、うーん。どうするか……」
「久々にギルドに行きますか!?」

食いつきで言ってくる。
顔が至近距離にある。犬耳がぴくぴく動いていた。
後で触っていいだろうか。

「うん、そうだね。そうするか」
「でも、カメリア。先程ヴィーゼさん帰ってきたんだよ? 休息取らないと」
「あ! そっか…」

耳と尻尾が同時に垂れ下がる。
あれはしょんぼりしているのだろうか。
はっ! と言うことは、合法的に頭を撫でれる!

「そんな事ないよ。じゃあ、またギルドに行くか」
「うん!」

撫でてあげると目を細め、尻尾がブンブン振っていた。
なにこの子。めちゃ可愛いじゃん。

(俺が、ヴィーゼじゃなかったら、多分嫁にしてる。それか妹)

妹に一票。よし。
………なんか、自分が馬鹿に思えてきた。
中身はおっさん。そして今は幼女。
中身おっさんな為、自分の言動に少し、寒気を感じた。
もう、歳だからだろうか。

(いや! 俺はそこまでおじさんじゃない!!)

立派なおじさんだ!


♢♢♢


“結晶の世界”

「う、うわぁああああ!!」
「に、にげろぉおお!!」

足を踏み入れた冒険者たちは、竜王の姿を目の当たりにする。

『グルルルルル!』

竜王の復活は、もう既に始められていた。
今はまだ、結晶の中に閉じ込められているが、いつ復活するか分からないこの状況。
まさに、絶望的状況に過ぎない。
勇者たちが召喚されない限り、大変な事となる。

そして同時刻。竜王復活の噂を耳にした神官たちは、勇者召喚をする準備を開始する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【勇者の役目】
・世界の破滅者たちを、封印する事。
以下 竜王、魔王、冥界の王など。
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