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一章 元おっさん、異世界へ
20 ギルド
しおりを挟む衣服を着替え終えてから、フィンと共に居候しているアンナさんの家に向かう。
「いやぁ、仕立て屋の人めちゃくちゃ温厚だったね」
「ぐるる…」
フィンは頷いた。仮に帰ったとして、やる事なす事ないから、どうしたものか……。
今日は天気が良くて、空気も美味しい。そういや、ギルドが存在していたっけ?流石は異世界!よっし!そこへ行こう!
王都に存在するギルド。資金稼ぎには抜擢な場所だ。よく俺が見たアニメでは、レベルが存在し、レベルに応じての魔物討伐……。魔物、うーん、倒すとしたら使役可能かどうかだな。
まずはそれを確認してから、倒すべきかどうかをした方がいいだろうなぁ。
そうしたら、可哀想じゃん!
俺は気づいてしまった……。異世界に来てから、魔物使役の魔法という名の、固有魔法をゲットしてから、魔物たちと仲良くなる。そこで、魔物の子達と仲良くなると、動物のように愛着が湧く。
その為!使役ができるかどうかを確かめてから!と、俺は決めている。
と言うわけで、俺は王都に存在するギルドの場所へと足を運んだ。扉を開けると、色んな人で溢れかえっており、感動に包まれていた。
やばい、ここでの生活には慣れていたつもりではあったが、それ以上に感動している。
「こんにちわ。新規の方ですか?」
若そうな女性が接待をしてくれる。
若そうと言っても、絶対俺より年上だろうなぁ。身長高いし。
見上げるほどではないが、相手からしたら上目遣いになっているのではないか?
「あの~……?」
「あ、すみません。はい、そうです。新規です」
「なら、どうぞこちらへ。手続きを開始いたします」
受付の方へと行き、新規手続きを開始する。
なんかのカードに名前を書き、それで申請達成のようだ。簡単。
異世界に来てから10年が経過しているだけあり、読み書きとかはバッチリ。
「………ヴィーゼさん、ですね。ギルド内でのご説明を簡単に行います———………」
ふむふむなるほど。なんとも分かりやすい事だ。
しかも、ここのギルドはランク付けで新規の人物は
“ロウワー・クラス”
↓
“インテルメディオ”
↓
“アドバンスト”
↓
“スピリット・クラス”
↓
“ホーリー・ビースト・クラス”
↓
“セイクリッド・クラス”
とされているらしい。英語苦手だからどう言う意味かわからん。スピリットとかホーリーとかビーストとかは聞こえたが、ランク付けだけなら、知ろうとしてもしなくてもいいか。
そう受付嬢の人に言われ、俺は早速ギルドの掲示板にある依頼を受ける事にした。
ギルドカード無くすと大変だと言うのは、明らかに分かる。財布なくなった時よりも一大事であると言う事は、目に見えている。
掲示板に貼られている依頼を確認し、俺はその中の一つが目に止まる。
森の中に存在する洞窟に魔鉱石が存在するとの事。そこには巨大な蜂が屯しており、その駆除……。
おいおい!また虫かよ!!流石にこれはやめておくか……。うん?
う、うそだろ!?この報酬かなり高額じゃん!!えぇと、討伐報酬金額は金貨5枚。
こんな待遇のいい仕事、受けない奴なんていない!虫に関しては、しっかりと倒したことあるから……。
と言うわけで、その紙を受付の方へ持っていき、申請。そして、いよいよその洞窟が存在する森へと行く事に。ギルドの外に出ると、俺の姿を見たのか、嬉しそうに鳴くフィンが居た。
頭を撫でると、まるで犬のようだ。目を細めちゃって。
もちろん行く前には、しっかりと準備はする。回復薬オーケー、布袋オーケー。ばっちし!
多分、ノープロブレム!なんてたって、そんな予感がしたから!
というわけで、その森というのは先程まで俺たちが居た森。それは好都合。というか、あそことはまた違った最深部がある事にまず驚いている。最深部だけでもまぁまぁ暗かったのに、洞窟ともなると、視界を慣れさせないと早死にしそうだ。
フィンの上に乗り、再び王国の外へと出る。
「よし、ついた」
森へ到着し、そこから地図を頼りに目的地へ行く。木漏れ日が掛かり、俺はフィンと共に洞窟がある最深部まで歩き続ける。
なんだろう、緑が目の癒しになっている。今から虫に会うとは思わないほど、穏やかな気持ちだ。
これは資金のため、そう。資金のため。
働くもの食うべからず……。
だからって、金貨の為に働くのは、欲しいものを買うため……。そう、それだけの理由!!
蜂を早く倒し、早く帰る!それが仕事内容!!
大丈夫、大丈夫……。
緑が癒し。フィンが癒し。早く言って早く終わらせる!そういう精神で行こう!
「ぐるる!!」
「…ん?どした」
フィンがなんか警戒している。
どした?何かに対して威嚇をしている。何がいる?俺も警戒しなければならないみたいだ。
木の影が動いたような気がした。どうやら、敵が居そうだ。
ふっ、かかってこいよ(イケボ)
キシャーーーーー!!
「あー、待って!やめて!」
現れたのは、巨大な蜘蛛。最近虫しか見てない気がする。
巨大な蜘蛛の巣が襲いかかり、フィンは持ち前の羽で飛び、俺も回避する。今まさに絶叫したい気分だ。
だが、それは後回しだ。
「ぐっ、こんな所で虫って!さっきまでの俺の気持ち返せよ!!」
緑で安心していた俺の心には、大ダメージだ。
「ガルル!!」
フィンの空から攻撃が始まり、鋭い爪を振り翳す。
キシャーーーーー!!
大きな蜘蛛に大ダメージ!フィンに遅れをとるわけにもいかず、魔法を放つことにしよう。
「行け!———『風刃』!!」
木をも斬り倒すぐらいの威力を持つ、風刃。
蜘蛛の前足が斬られ、大蜘蛛の行動が制限された。
よし、このまま胴体を……。
キシャーーーーー!!
再び蜘蛛の糸を吐き出す。粘着力が高そうな蜘蛛の糸に足を取られてしまったら、死にそうだ。色んな意味で。蜘蛛の糸なら、炎が有効なはずだ。だが、ここは森。という事は、山火事になりそう。それは回避したい。なら、どんな魔法を放てばいい……?
いや、それなら。蜘蛛の胴体を切ればいいのみだろう。よし、そうしよう。
「『風刃』!!」
再び同じ魔法を放ち、胴体を切り刻む。
躊躇わずに放ち、大蜘蛛の体は真っ二つにされる。
ショッキング!NO!ショッキング!!
流石にこれはエグい。緑色の血液が地面に滴っており、見ては行けないものを見た。
あれ、これやばくね?トラウマになりかけそうだ。
と言うより、今から起こることが怖い。なんで虫がある依頼を受けたんだろう。
後悔してしまったが、強くなるためには仕方ない事だ。強くなるには、資金も必要だ。武器買ったり、防具買ったり・・・とか。
食料も必要、回復薬も必要。こりゃあ報酬がいい仕事を引き受けない限り、強くなる事はできない。
そう、俺の目標は——。憧れている主人公ヒーローのようになりたい事。
そうなるには、多分いくつもの修羅場を越えなければならない。
これも大事大事・・・。
倒れて死んだ蜘蛛は素材に変換され、俺はその素材を取る。蜘蛛の糸が何に使えるかどうかはわからないが、持っていて損はないと思う。
蜘蛛を倒した後、再び洞窟の方へフィンと共に行く。
洞窟の入り口に着いた時、洞窟の穴に入る。洞窟の中は流石に暗く、光魔法で視覚を確保した。
よし、ここにその蜂がいるようだな。フィンと共に洞窟の中を探索すると、入り口から奥の方には煌びやかな石が存在した。あれが魔鉱石だろう。
なら、周りに居るはずだ……。蜂の魔物が……。
うん、知ってた。もうここまで来たら、俺の知っている小さな蜂とかじゃなく、住んでいた村にいた可愛い蜂とかじゃなく、人と同じくらいの蜂が飛んでいた。
ハァ…、後でお口直ししたい。
ギャオオオオオ!!
そう叫び散らすが、俺は長々と見たくないため、早く魔法を放つ。炎魔法を放ち、ぼうぼうと燃えたぎる蜂。周りには数匹の蜂が現れ、おそらくどこかに蜂の巣があるはず。
「ガルルル!!」
フィンと共に協力し、周りに居る蜂を倒し続ける。
さっきは使役できてから……と言ったが、普通に恐怖さが勝ち、それ確認する前に倒してしまった・・・。
周りに飛んでいた蜂を倒し、近くにある蜂の巣を炎で燃やす。ばちばちと燃えたぎる蜂の巣を黙って見続ける自信はない。もうその場から速攻で逃げている。
よし、依頼達成!
さて、早く帰りますか。と言う事で、恐怖さが勝ってしまい、狼狽えながらも魔法を放つ。なんかもう、別のをやろう。と、虫以外のことをやろうかなと、思っていた。
ギルドに帰り、金貨5枚の報酬と、先程の大蜘蛛の報酬おまけをもらい、金貨5枚と銀貨1枚を受け取った。
うん、もう早く帰りたい。
おそらく後日もまたギルドに来るだろう。虫は嫌だったが、結構……楽しかった?と言うのも変だが、なかなかいい刺激にはなったのには、違いない。
お小遣いとして貯めよう……。
~おまけ~
「さぁ!隠密魔法を教えて!お兄さん!」
けしからん魔法を使っている、20代男性ぐらいの男の人にもう一度抗議した。名前も知らないこの男の人。すごく怪しい目で見てくる。まぁ、仕方ないか。この格好だし…。だけどその隠密魔法を使えば、誰からにも視認されずに済む。
それは俺に優位に働く!
「またお前かよ!いい加減しろぉ!!」
と、説教をされてしまった。お兄さんからしたら俺の格好は8歳から10歳ぐらいと思っているようだった。
「そういうのは18歳になってから!」と言われたが、本来俺の年齢は18歳を故に超えていますが、それは言えなかった。という事で、隠密魔法を教えてはくれなかった。
チクショウ。自分はムフフな事に使うのかよ。けしからん。若い頃の姿だったら説教しているだろう。
『よし!友人になろう』
今更思うが、俺本当に前世で性犯罪者にならずに済んだな…。ここは異世界。ムフフなことも安易にできそうだが、まぁ、それはしない事にしよう。
それはなぜか。なんかものすごく後が怖そうだからだ・・・。
アンナさんに怒られそう・・・。
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