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第一部 幼少期

第十話 ちょっとしたハプニング?

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今日はのんびりと、子爵家で過ごしていた。
子供達は元気に仕事をしてくれているため、ものすごく助かっている。
そんな時、子爵家の門の方から人影が見えた。誰だろうと思い、魔力感知で覗いてみると、

(え!?なんで!?)

どうやら、ノイーズの婚約者。オーティスがやって来ていた。
なぜ彼がやって来たのか、俺には想像が出来ないが、それを三つ編みのメイドさんが対応していた。
今日は家庭教師の日ではなく、のんびり出来ると思ったが、何やら嫌な予感を感じる…。

俺は自室から見ていたが、何故かオーティスは俺の自室の方を向いていた。
なんだろうか、ものすごく怖い。

話しているが、何を話しているのか分からない。
今俺は、10歳。オーティスは12歳。オーティスはもう既に、学院に通っているみたいだ。
リジル学院には、初等部から高等部まで存在する。その為、初等部は7歳から、中等部は11歳から。高等部は15歳からとなっている。

だが、何故ノイーズは11歳から通うのか。それは……、

(親が行かせたくないと……)

学院では寮生活が存在する。だが、希望すれば自宅から通えるらしいが、殆どの生徒は寮生活を希望するらしい。

そう思いながら、時間が経つと、扉がノックされる。
俺は返事をすると、外から聞こえるのは三つ編みのメイドさんだ。
扉を開けると、やはり。オーティスがメイドさんの後ろに立っていた。

(くそ、クール系イケメンめ…。俺もそんな感じの顔が良かったなぁ…)

とか、思いつつオーティスに聞いた。
一体なぜここに来たのか。それを知るために。

「あの、オーティス様。一体どうなさったんですか?」
「婚約者の家に来てはいけないのか?」
「えっ…?」

あれ、父様に言ったっけ?
と思いつつ、俺は一応オーティスを中へ入れる。
メイドさんには、お茶菓子を持って来させるように言い、俺たちはソファーの上に座った。

「へぇ、可愛らしい部屋だな」
「あ、ありがとうございます」
「…まだ緊張しているのか?」
「え!?いえ?!別に」

緊張してない、と言うと嘘になるが。本当はバリバリ緊張している。
見透かされているかのような、目つきでオーティスは俺を見た。

「あの、オーティス様…」
「オーティスで構わない。俺もノイーズと呼ぶようにする」
「は、はぁ…。オーティス。一体なんのようで?」
「だから……。まぁ、いいや。それより、やけに騒がしいな。見た事ないぞ。あんな子供達」
(いや、俺たちだって子供)

と思っても、直接口には出さない。そんな時、ノックが再びされ、もう一回扉を開けると、どうやらお茶菓子を持って来てくれたようだ。

「ありがとう。下がっていいわ」

そう言うと、持って来てくれたリンは一礼をし、その場から去る。

「ケーキのようね。オーティスも食べましょ?」
「あぁ、そうだな」

ケーキが乗っている、二つの皿をテーブルの上に置き、俺もソファーに座る。
ケーキはいちごショートケーキと、チョコレートケーキであった。

「どちらがいい?ショートケーキ?チョコケーキ?」
「なら、チョコケーキにしよう」
「あら、そっちでいいのね」

俺はショートケーキ。
オーティスはチョコケーキとなり、フォークで、一部を切り、そして口へと運ぶ。
プレートらしきものに、おしゃれなコップが乗っており、その中には紅茶が注がれていた。

(………ん~!うまぁー!)

ショートケーキが大好きである俺は、ケーキを平らげる。
………オーティスに見られているとは、知らず。

(まずいまずい)

「ちょっと待ってろ」
「え?」

その言葉の意味がわからず、俺はそのままじっとしていると、オーティスは持ってきたハンカチで、俺の口元を拭いた。

「生クリームがついてたぞ」
(おっと、これは失礼)

お礼を言うと、何故か優しい笑みを浮かべていた。
なんだろうか、俺の知ってるクール系イケメンじゃない。
そう思いつつ、原作とは違ったオーティスに、俺は困惑していた。

ーーーーーーー

お茶菓子を食べ終わると、オーティスはマジマジと俺の部屋を見る。

「どうかなさいましたか?」
「いや。ん?あのうさぎのぬいぐるみ……」
「あぁ、誕生日プレゼントで買ってもらったんです」
「ふーん……」

そう言うとオーティスは、ソファーから立ち上がり、そのうさぎのぬいぐるみを手に取る。
どうしたんだろうか。

「可愛らしいな」
「そうですね」

そう言った。
なんだろう。ものすごく気まずい気がする。
俺もオーティスがいる方向へ行くと、足を引っ掛けそうになり、踏ん張ろうと思ったら、今度は体重が後ろにかかり、転びそうになる。
オーティスは血相を変えて、俺の片腕を引っ張り、なんと自分の胸に寄せた。
オーティスの右手は俺の右手を掴み、オーティスの左手は俺の腰あたりに存在してた。

なんだこれ。
中身が女の子だった場合、これをされたらどきっとしてしまうだろう。
だが、なぜだ。俺でもドキッとした。

「………大丈夫か?」
「え、えぇ。ありがとうございます」

お礼を言うと、何やらオーティスは焦った表情を見せた後は、穏やかな顔となった。
ものすごく恥ずかしい。顔が熱くなり、オーティスから聞かれる。

「…体調悪いのか?」
「え!?いえ、別に…。た、ただ、ちょっとびっくりしたって言いますか…。あはは…」

苦笑を浮かべるしかなかった俺は、そう告げた。
だが、そんな時、咄嗟にしたのかオーティスは俺の頭に手を置く。
え、なんだろう。励ましてくれているのかな?
そう思い、俺は顔を俯かせる。

(やばいぞ!弄ばれてる気がする!って言うか、何これ!クール系イケメンのはずなのに……!)

と、キャラ崩壊ぐらいの変貌っぷり。
誰だろうか。この人は。
と言う感じで俺は、オーティスを見る。

ーーーーーーー

オーティスとはあれから、一時間ぐらい喋ると、帰る時間帯となったらしく、俺の部屋を出て行く。
出て行ったのを確認した後、俺はベットに横たわった。
まだ、顔が熱い。

(ぬわぁぁあああ!こんなの違うぅうううう!)

さっきの事を振り返ると、何故だか恥ずかしがっている自分がいた。
嫌だ。恥ずかしい。
枕元に顔を押し付ける。

「はぁ、こりゃあ。ノイーズも本気で好きになるわけだ……」

自分にしか聞こえないぐらいで、そう言った。

その後は、今日起きた事をずっと考えていた。
それはもう、恋する乙女のように。
だけど、生憎と俺は恋愛対象は女性。そう、そのはずなんだ!

と、変な自分に言い聞かせるように。
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