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第一部 幼少期

第六話 王都

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一年がまた経過し、今日は五月四日。俺もとい、ノイーズの誕生日らしい。
8歳となった俺は、執事の人と一緒に王都へ出かけていく。何やら、父様と母様は用事があるとかで、朝早くから家を出て行った。
そしてメイドさんたちも、何やら忙しそうにしている。これは、知らないふりをしていた方が、良いのだろうか。

「ノイーズお嬢様、今日は天気がいいですね」
「えぇ、そうですね」

爽やかイケメンの、執事“フレット・ランバード”
子供好きの青年だ。そして何より、

「………!?ノイーズお嬢様、お下がりください!」

元騎士出身である、フレットはノイーズの護衛役でもあった——。

ーーーーーーー

颯爽と魔物を倒し、フレットに怪我がないか、聞いてみた。

「フレット、大丈夫?」
「………はい、もちろんでございます。ノイーズお嬢様こそ、お怪我はございませんか?」
「えぇ、私は大丈夫です」

よかった、怪我はないようだった。
俺は安堵の息を吐き、フレットは剣を鞘に収める。
再び歩こうとした時、フレットは「痛っ」と声を出した。

「大丈夫?」
「はい、どうやら…足を怪我してしまったようで…」

捻挫だろうか。とにかく、このままじゃフレットが可哀想だ。
そう思った俺は、木陰に移動をし、俺はフレットの足を確認した。

「たかが捻挫ですよ。お嬢様のお手を煩わせるわけには参りません」
「じっとしてて」

フレットの靴を脱がせ、靴下を脱がせてみると、腫れてはいなかった為、治癒魔法をかけた。

「………どう?まだ痛む?」
「平気です。ありがとうございます。お嬢様」
「ううん、私も何かすればよかったわね。ごめんなさい。フレット」

だいぶこの世界にも馴染み、俺は本心でそう言った。
そうすると、フレットは否定する。

「そんな事ございません。私はお嬢様をお守りする為の盾であり、お嬢様に怪我をさせるような、輩が居れば、その者を倒す為の剣でもあります。なので、お嬢様にお怪我がなければ、私は安心出来るのです」

と、微笑んだ。
俺が心も中身も女性であれば、きっと惚れていただろう。
俺はそんな、フレットの言葉を聞き、そして微笑む。

「えぇ、ありがとう」

本当に8歳なのか。と、思うのだろうか。だが、ノイーズの中身である俺は、17歳。常識ぐらい弁えているつもりである。

ーーーーーーー

少し休憩した後、再び王都へ行く道を歩く。その間はフレットと談笑を交わし、フレットのことを少しは知れたような感じがした。

ーーーーーーー


王都へついた時、生で見る王都の景色は凄まじいものだった。何もかもが綺麗で、噴水の水は綺麗で、市場がたくさん出回っていた。

「うわぁ~…!すごい!」
「そうですね。さぁ、参りましょうか。お嬢様は何が欲しいですか?」

そんな事言われても、わかんないな。と、思い俺はフレットに決めてもらえるように頼んだ。

「私に………ですか?しかし、お嬢様のたんじょ……じゃなくて。お嬢様は欲しいものなどないのですか?」

(今、誕生日だって言いそうになったよな。何隠しているのだろうか)

やはりここはお約束のようだ。それはともかくとして、

「なら、王都を見て回って決めたいです」

と言うと、フレットは返事をする。
本当に俺が、中身も女の子だった場合、惚れていたかも知れない。このイケメン執事は。

ーーーーーーー

最初は出回っている、宝石店に行った。そこにはいろんな宝石のアクセサリーなどが、展示されており、21世紀ではなかなか見られない光景だった。

「お嬢様、欲しいものはありませんか?」
(8歳で宝石って早いよなぁ。…お?)

宝石を見ていると、宝石とは違ったものが置かれていた。
それはうさぎのぬいぐるみだ。だが、うさぎの胸元、リボンの場所にはペンダントが飾られている。それは本物の宝石だろうか。

「ノイーズお嬢様ですね。そちらはうさぎのぬいぐるみに、青いペンダントをつけた品物です。どうですか?」

と若い店主の人は、そう言った。
これなら、子供らしくていいだろう。と、俺はそれを手に取り、フレットに言う。

「これ欲しいです」
「なら、これをください」
「はい!もちろんです!」

フレットは金貨を3枚渡し、俺は店主の人に手を振り、宝石店を出た。
うさぎのぬいぐるみを、抱きしめながら、王都を歩く。

この世界でのお金事情は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨に分けられている。
銅貨は日本円では百円。
銀貨は日本円では千円。
金貨は日本円では一万円。
白金貨は日本円では10万円らしい。

白金貨などは、殆どが上位貴族が持っており、子爵家などの下級貴族は金貨が殆どである。

(日本ほど複雑じゃなくてよかったぁ)

何故なら、日本では一円玉、五円玉、十円玉、百円玉、五百円玉、千円、五千円、一万円。お釣りが出ない。この世界では銅貨百円玉より下はないのだ。その為、ややこしく無くて、済むのだが、それは俺の感覚がおかしいからか?

そう思いながら、王都を歩いていると、誰かにぶつかった。

「イッタタ…。すみません。前を見てなくて……」
「こちらこそ、悪かった」

ぶつかってきた人が、そう言ったからだろうか。周りがやけにザワザワしていた。
その中でも、

「うわ、あの子、あの方に当たったわ」
「これは最悪ね」

との声。つまりは貴族で子爵家より上。周りの人たちがそう言うほどの地位を、持っていると言う事。

顔を上げると、金髪の人が俺に手を差し伸べていた。

「え…?」
「大丈夫ですか!?ノイーズお嬢様!」
「ノイーズ…。つまりは、君か」

その身なりはまさに、オーティスと似ていた。
つまりは、パルラスここの王子。

「………!?ロト様!?」

え、ロト?
その名前を知っている。もしかして、ロト=アレクサンデル・パルラスの事だろうか?

「あの、本当に申し訳ありません。お怪我はございませんか?」

俺はそう聞くと、ロトは頷く。

「あぁ、平気だ。そう言う君は?」
「は、はい。大丈夫です」

まさにお兄ちゃん気質な気がする。
ロト=アレクサンデル・パルラスはパルラス王国の第一王子。18歳だ。10歳であるオーティスとは8歳違いだ。
それに、ロトにはオーティスを合わせた、後二人の弟がいる。だが、まだ俺は会っていない。その二人のどちらかが母さんの推しだった。
と言うのは、今はどうでもいい。

「ん?これは………」
「あ、それは私の執事が買ってくれた、うさぎのぬいぐるみなんです」
「そう。名前は決めたのか?」
「名前……ですか?いえ、まだ………」
「そうか、付けるのなら、可愛い名前にした方がいいと思う。このぬいぐるみの子、可愛いからね」

確かにわかる。
と、同感し、そのぬいぐるみをロトから受け取った。
そんなロトの後ろ姿を見ながら、俺は思った。

(こんなタイミングで、ロトと会ったっけ?ノイーズは)

小説の中では、学院である。つまりは、15歳でだ。15歳のノイーズと、25歳のロト。ロトがたまたまオーティスも通っている、学院にやってきたときに、婚約者として紹介をしてもらった。と言う内容のはずが、何故かそれが違っている。

(なんでだろ)

そんな違和感を抱え、俺はそんなロトの後ろ姿を見たまま、ぬいぐるみの方も見た。

(俺にも兄がいたらなぁ)

ロトと姉が何故か組み合わさる。やはり、血の繋がった姉と、お兄ちゃん気質を感じるロトは、似ているのかもしれない。と、感じた。




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