ねぇ、大好きっていって

友秋

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ウワサ話

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 ロミオのような遼ちゃん、あたしの手を掴んで。

「ひよ、俺を信じてくれ。ケンさんに認めてもらう為だ。俺は、ひよだけだから」

 あたしだって。

 あたしだって遼ちゃんだけだよ。だから、出来る事ならずっとずっとずっと一緒にいたいのに。

 遼ちゃんに触れたいのに。

 あたしの手に、遼ちゃん優しくキスをしてくれた。

「大好きなひよ。必ず迎えに来るから」





 ロミオとジュリエットのお話しって、とてもロマンチック。

 なんて今は思えません。

 ダメです。会いたいのに会えないなんて!

 ロミオさんとジュリエットさん、可哀想過ぎます!

「ひより、何してるの? 大丈夫?」

 無意識に机に突っ伏してバンバンしてました。

 茉菜ちゃんがあたしの顔を心配そうに覗き込んでて、慌てて顔を上げた。

「大丈夫? なんか、苦しそうにしてたよ」

 あ、うん。すごく苦しいです。

 茉菜ちゃん、聞いて、って言いたいけど。

「朝ごはん、食べ過ぎた?」

 ちがいます。

 あのね、と口を開いた時。

「えーっ、うそぉ!」
「しんじたくないーっ」

 教室の端で集まってお喋りしていた女の子達が、悲鳴のような声をあげた。

 なんだろ?

 茉菜ちゃんと顔を見合わせた。

 興味津々の顔をした茉菜ちゃんとあたしに気付いたお友達が、手招きしてくれた。

「おはよー、きてきてー」
「おはよ、みんな、なにお話ししてるの?」

 あたしと茉菜ちゃんは集まってるみんなのとこへ。

「あのねあのね、平田センセのことー」

 え?

 ドキンとした。どうして遼ちゃんのこと?

 遼ちゃんの、なに?

 どきどきが止まらない。

 それと同時になんだか、イヤな感じがした。

 なんで?

 その理由、直ぐに分かった。

「一昨日ね、平田センセがすごーく綺麗な女の人とデートしてるとこ、カヤノちゃんとユリが見ちゃたんだって!」

 あたし、一瞬、理解できなかった。

 停まってしまった思考が、ゆっくりと動き出して。やっと、理解する。

 遼ちゃんが、昨日、でーと?

 誰と?

 そういえば、あたし、最近の遼ちゃんの事、何も知らない。

 頭は、真っ白だった。

 カヤノちゃんは、キャッキャッと「そうなのー!」って言いながら話しを続ける。

「あまりにもお似合いで、見てるだけでドキドキしちゃうくらいでね、わたし達、思わず後付けちゃって」

 みんな、それでそれで? って目をキラキラさせてる。

 あたしは――、

 そこに立っているだけで精いっぱいだった。

「お洒落な飲み屋さんに入っていったよ。残念ながら、わたし達だけで入れるようなお店じゃないからそこまで」

 みんな、なーんだ、って言ってる。

 あたしは、なにか言う気持ちにはとてもなれなくて、その場で崩れないように必死に立っていた。

 遼ちゃん?

 昨日、あたしに、何も言わなかった。

 その〝綺麗な人〟は誰?

 二人で、会ったの?

 あたしの知らない遼ちゃん。

 遼ちゃんが、どんどん知らない遼ちゃんになっちゃう。

 沢山の不安が、押し寄せてきてあたしを呑み込もうとしていた。

 ねぇ、緒方さん。

 こういう時も、遼ちゃんにちゃんと聞いた方がいいのかな。

 それとも、遼ちゃんからお話ししてくれるのを待っていた方がいいのかな。

 あたしは、どうしたらいいのかな。


 この後、あたしは、自分の目で決定的なものを、見てしまうことになるーー。
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