パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

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「へ?」

戸惑いで固まる。

予想した敵ーー警察とか教師とかヤがつく職業の人とか、怖いイメージを持った人がそこには居ない。立っているのはコンビニ袋を持った人畜無害そうな優男だけだった。

ーーえ、……これ、どういう状況?

巴も状況が掴めないのか隣でフリーズしている。俺らの間には不思議な空気が流れていた。

「あ、もしかして巴ちゃんと賢太郎くん?」

それを破ったのは優男。どこか嬉しそうに紡がれた言葉に今度は違う意味で身体が硬直する。

「なんでてめぇが知ってんだよ!」

声を荒げた。俺にこんな知り合いは居ない。心当たりも無い。

油断していた。優しそうだろうがなんだろうが相手は正体不明の男なのだ。敵かもしれない男なのだ。もっと警戒して当たるべきだった。

「なんでって、二者面談で聞いたから?」

もう俺らの身元はバレている。どうすればいい? こいつは一体……二者面談?

「っ……」

隣の少女が息を呑む。彼女はまた俺を置いていっているらしい。

ーーひとまず落ち着け。

深く息を吸い、高ぶった鼓動を緩和する。脳にも空気が渡ってきて、空回りしているそれがきちんとした働きを取り戻す。

ーー二者面談ってことは学校関係者か? 先生とかにこんな奴居たか?

二者面談なんて言葉、学校以外で聞くことは無い。多分間違いはないだろう。

それなら俺らの名前を知っていてもおかしくはなーーいや、違う。"二者面談で聞いた"ってことは学校関係者というより……。

意外過ぎる可能性が頭に浮かんだ。

ーーまさかな……。

「もしかして瑠璃のーー」

巴が俺の答えを代弁する。

「そうだね、一応父親。よろしく」

「…………」

邪気の無い笑顔は俺ら二人を完全に氷づけにした。





 
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