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盈月
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「それじゃあ、本格的に計画立ててくださいね~」
弾んだ声がこだまする。先生は、肩の荷が下りたのか、踊り出しそうな程に浮かれている。
ーーま、でも今はこっちか。
私は、見ていたら楽しそうな担任から目を逸らし、当面の課題に向き合った。
ーーさ~てと。
「どうしよっか? 自主研修」
試しに優しく問いかけてみる。
「適当に決めていいよ」
つれなかった。本から顔すら上げてもらえない。
「一世一代の大行事だよ! なんか行きたいとことか無いの?」
次は熱血風に問いかけてみた。
「別に」
やる気が微塵も見えなかった。まったくもって取りつく島がない。
ーー…………。
「よっと」
「あ……」
タイミングを伺い、無理やり本を奪い取った。取りつく島がないなら作ればいい。西山さんがこっちを見ないなら、邪魔者を取り上げてしまえばいい。
「返して」
無機質な瞳が真っ直ぐにこちらを向く。私は、それに対抗するように遠くへ腕を伸ばし、小説を持ち上げる。
「や~だ。せめて一箇所でも行きたい場所を挙げてよ。そしたら返してあげるからさ」
「…………」
優越感を醸し出す笑み。西山さんは何も言わない。ただひたすらにこっちを見てくる。
無言の見つめ合い。膠着状態。なんとも言えない雰囲気が二人の間に流れた。
ーーさて、どうしよっかな……。
心の中でため息をつく。本を持ち上げている腕が既にかなり辛かった。プルプルしている。もうあと数分も保たない。
別に腕を下ろしても、小説を渡しさえしなければいい話なのだが、なんだかこの沈黙を破ったら負けな気がしていた。だから、腕の限界よりも先に何か好手を指さなくては。
「分かった」
「へ?」
間抜けな声が出る。
ーー今、なんて言ったの……?
突然の事過ぎた。聞き間違えかもしれない。とても信じられない。でもーー。
彼女はゆっくりと地図を広げ、眺め始めた。
ーーえ? まじで?
喜びよりも驚きが先に立つ。頭の半分以上が混乱していて、何が何だかよく分からない。
「やったぁ……?」
実感は沸かない。でも、西山さんはじっと地図を見ている。私の要求は呑まれた。
ーーやった、私、勝ったんだ。
少しずつ嬉しくなってきた。実感が出てきた。私に対して彼女は折れた。"二人で計画を立てよう作戦"は成功した!
「ははっ」
なんだか浮かれてきた。
ーーたま子先生なんかより先に私が踊り出すかも。
疲れの残る右腕で小さくリズムをとって口の中で好きなアーティストの歌を口ずさむ。最高の気分だった。今ならなんでも出来そうだった。
「ーーんショップ」
「は?」
そんなほろ酔い気分にいきなり理解不能な単語が入ってくる。
「なんだって?」
「うなぴょんショップ。ここ、この辺にある。うなぴょんのお店」
地図を指差しながら西山さんが説明してくれる。だけど、全然分からない。うなぴょんって何? 人? 食べ物? 美味しいの?
「…………」
頭は綺麗にフリーズした。
弾んだ声がこだまする。先生は、肩の荷が下りたのか、踊り出しそうな程に浮かれている。
ーーま、でも今はこっちか。
私は、見ていたら楽しそうな担任から目を逸らし、当面の課題に向き合った。
ーーさ~てと。
「どうしよっか? 自主研修」
試しに優しく問いかけてみる。
「適当に決めていいよ」
つれなかった。本から顔すら上げてもらえない。
「一世一代の大行事だよ! なんか行きたいとことか無いの?」
次は熱血風に問いかけてみた。
「別に」
やる気が微塵も見えなかった。まったくもって取りつく島がない。
ーー…………。
「よっと」
「あ……」
タイミングを伺い、無理やり本を奪い取った。取りつく島がないなら作ればいい。西山さんがこっちを見ないなら、邪魔者を取り上げてしまえばいい。
「返して」
無機質な瞳が真っ直ぐにこちらを向く。私は、それに対抗するように遠くへ腕を伸ばし、小説を持ち上げる。
「や~だ。せめて一箇所でも行きたい場所を挙げてよ。そしたら返してあげるからさ」
「…………」
優越感を醸し出す笑み。西山さんは何も言わない。ただひたすらにこっちを見てくる。
無言の見つめ合い。膠着状態。なんとも言えない雰囲気が二人の間に流れた。
ーーさて、どうしよっかな……。
心の中でため息をつく。本を持ち上げている腕が既にかなり辛かった。プルプルしている。もうあと数分も保たない。
別に腕を下ろしても、小説を渡しさえしなければいい話なのだが、なんだかこの沈黙を破ったら負けな気がしていた。だから、腕の限界よりも先に何か好手を指さなくては。
「分かった」
「へ?」
間抜けな声が出る。
ーー今、なんて言ったの……?
突然の事過ぎた。聞き間違えかもしれない。とても信じられない。でもーー。
彼女はゆっくりと地図を広げ、眺め始めた。
ーーえ? まじで?
喜びよりも驚きが先に立つ。頭の半分以上が混乱していて、何が何だかよく分からない。
「やったぁ……?」
実感は沸かない。でも、西山さんはじっと地図を見ている。私の要求は呑まれた。
ーーやった、私、勝ったんだ。
少しずつ嬉しくなってきた。実感が出てきた。私に対して彼女は折れた。"二人で計画を立てよう作戦"は成功した!
「ははっ」
なんだか浮かれてきた。
ーーたま子先生なんかより先に私が踊り出すかも。
疲れの残る右腕で小さくリズムをとって口の中で好きなアーティストの歌を口ずさむ。最高の気分だった。今ならなんでも出来そうだった。
「ーーんショップ」
「は?」
そんなほろ酔い気分にいきなり理解不能な単語が入ってくる。
「なんだって?」
「うなぴょんショップ。ここ、この辺にある。うなぴょんのお店」
地図を指差しながら西山さんが説明してくれる。だけど、全然分からない。うなぴょんって何? 人? 食べ物? 美味しいの?
「…………」
頭は綺麗にフリーズした。
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