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盈月
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「いやぁ~喰った」
腹が減っていたせいで調子に乗ってジャンボラーメンを完食してしまった。食べた時はまだまだいける気がしたけど、今はお腹がきつくてしょうがない。
「美味かっただろ?」
「……うん」
テンポの悪い会話。瑠璃は、今日、いつもに増して喋らなかった。
でも、勝手にラーメンを二杯頼んだり、黒タイツをカゴに突っ込みまくったりと当てつけの様な行動をしている所を見ると、怒っている訳ではなさそうだ。単におれの望み通りに散歩してるのが気に食わないのかもしれない。
表情はいつものように読めなくて、何考えてるかは分からない。でも、そんな瑠璃を可愛いなと感じてしまうのは、おれが親バカになりつつあるって事なのかもな。
「瑠璃、ちょっと寄り道していい?」
そう思案する中で、やっぱりおれはあそこに行きたいと、瑠璃を連れていきたいと思った。
「いいよ」
答えを聞いて、家とは逆方向に角を曲がる。瑠璃は黙って後ろをついてきた。
沈黙が続く。
でも、もうそれは気にならなかった。むしろありがたい。
あそこへ行くと思い出される記憶。おれの忘れてはいけない思い出。それが頭の中を侵食して"あいつ"の事で頭がいっぱいになっていたから。
「…………」
着いた。何の変哲もない河原。人影のない閑静な空間。そして、"あいつ"の大好きだった場所。ゆっくりと腰を下ろす。草特有の冷たさが服の下から伝わってくる。空には、街灯が少ない薄闇が星の光を映えさせていた。
"街中で、これだけ星が見える場所もなくない?"
そう言ってごろんと寝転んだ"あいつ"。それは昨日の事のように鮮明に思い出される。
「ここ、おれの彼女が大好きな場所だったんだ」
隣に座る少女に語った。
「どっか行くより、ここの方が安心出来るしよくない? とか言ってデートもここに変えさせられるくらいに大好きでさ……」
瑠璃は無言でおれの言葉に耳を傾けている。ぬるいような冷たいような風がおれらを吹き抜け、なんとも言えない感情に堕ちていく。
「…………」
ごろんと草むらに横になった。星がとても綺麗だった。
腹が減っていたせいで調子に乗ってジャンボラーメンを完食してしまった。食べた時はまだまだいける気がしたけど、今はお腹がきつくてしょうがない。
「美味かっただろ?」
「……うん」
テンポの悪い会話。瑠璃は、今日、いつもに増して喋らなかった。
でも、勝手にラーメンを二杯頼んだり、黒タイツをカゴに突っ込みまくったりと当てつけの様な行動をしている所を見ると、怒っている訳ではなさそうだ。単におれの望み通りに散歩してるのが気に食わないのかもしれない。
表情はいつものように読めなくて、何考えてるかは分からない。でも、そんな瑠璃を可愛いなと感じてしまうのは、おれが親バカになりつつあるって事なのかもな。
「瑠璃、ちょっと寄り道していい?」
そう思案する中で、やっぱりおれはあそこに行きたいと、瑠璃を連れていきたいと思った。
「いいよ」
答えを聞いて、家とは逆方向に角を曲がる。瑠璃は黙って後ろをついてきた。
沈黙が続く。
でも、もうそれは気にならなかった。むしろありがたい。
あそこへ行くと思い出される記憶。おれの忘れてはいけない思い出。それが頭の中を侵食して"あいつ"の事で頭がいっぱいになっていたから。
「…………」
着いた。何の変哲もない河原。人影のない閑静な空間。そして、"あいつ"の大好きだった場所。ゆっくりと腰を下ろす。草特有の冷たさが服の下から伝わってくる。空には、街灯が少ない薄闇が星の光を映えさせていた。
"街中で、これだけ星が見える場所もなくない?"
そう言ってごろんと寝転んだ"あいつ"。それは昨日の事のように鮮明に思い出される。
「ここ、おれの彼女が大好きな場所だったんだ」
隣に座る少女に語った。
「どっか行くより、ここの方が安心出来るしよくない? とか言ってデートもここに変えさせられるくらいに大好きでさ……」
瑠璃は無言でおれの言葉に耳を傾けている。ぬるいような冷たいような風がおれらを吹き抜け、なんとも言えない感情に堕ちていく。
「…………」
ごろんと草むらに横になった。星がとても綺麗だった。
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