パンドラ

須桜蛍夜

文字の大きさ
上 下
85 / 158
盈月

76

しおりを挟む
「で、ここからは私の考えなんだけどーー」

言葉が途切れた僅かな間。一瞬とは思えないほどに長く濃い時間。息が詰まる。喉が渇く。

「犯人は森本と沙羅達だと思う。多分ね。でも分からないのが…………ごめん、順を追って説明する。これ、悪い癖だね」

俺と目が合って、巴は気がついたように笑った。俺の理解と巴の理解が違う事を彼女はいつも忘れてしまう。まぁ、確かに悪い癖だ。俺が着いてけなくなる。

「んー、何から話そっか……。森本と写真のことはタイミングが良すぎるし、無関係じゃなさそうだってのは賢太郎も分かるよね?」

頷く。巴は満足そうに続けた。

「ます私がおかしいと思ったのは、沙羅達が静かすぎた事。あの子達なら、瑠璃のスキャンダルなんて出てきたら執拗に拡散して責め立てて、私と瑠璃を離そうとするはず。またとない好機だもん絶対に動く。だけどそうはしなかった。息を潜めて静かにしてた。自分達を印象付けたくないみたいにね。だから、あの子達が怪しいと思った」

唇は滑らかに動く。真剣な眼差しは憂いを秘めて俺を向く。不謹慎かもしれないけれど見惚れた。

絹糸みたいな前髪がキラキラ揺れる。彼女自身が輝いて見える。

ーー巴は綺麗だ。でもーー。

俺は雑念を払うように首を振って彼女の言葉に向き直った。

「状況証拠でしか無いけど、昨日、森本が瑠璃を呼び出した時に沙羅達が居なかった。これだけで決めつけるのはあまりな早計すぎるけど、写真を教師に送りつけたのが森本で生徒が沙羅達。そう考えたら私の所に写真が届かなかった事とかも辻褄が合うし、他の要因的にも色々納得できる。まぁ、確定じゃないけど一つの可能性として念頭に置いといて」

「了解。で、結局、ここに来た理由聞いてねぇぞ。いい加減教えろよ」

「ん? 単純だよ。写真の真偽を聞きに来たの。本当に万引きをしたのかってね」

「それだけ……?」

「うん、それだけだよ。でも重要かな。もし本当にやっててあれが瑠璃の弱味だったんなら……私はーー」

「そこで何やっているんだ!」

突然声が割り込んできた。勢いよく二人で振り向く。聞いた事の無い声。友好的とは思えぬ言葉。それを発した人物を四つの瞳がしっかり捉えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

美少女に転生しました!

メミパ
ファンタジー
神様のミスで異世界に転生することに! お詫びチートや前世の記憶、周囲の力で異世界でも何とか生きていけてます! 旧題 幼女に転生しました

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

処理中です...