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盈月
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「で、ここからは私の考えなんだけどーー」
言葉が途切れた僅かな間。一瞬とは思えないほどに長く濃い時間。息が詰まる。喉が渇く。
「犯人は森本と沙羅達だと思う。多分ね。でも分からないのが…………ごめん、順を追って説明する。これ、悪い癖だね」
俺と目が合って、巴は気がついたように笑った。俺の理解と巴の理解が違う事を彼女はいつも忘れてしまう。まぁ、確かに悪い癖だ。俺が着いてけなくなる。
「んー、何から話そっか……。森本と写真のことはタイミングが良すぎるし、無関係じゃなさそうだってのは賢太郎も分かるよね?」
頷く。巴は満足そうに続けた。
「ます私がおかしいと思ったのは、沙羅達が静かすぎた事。あの子達なら、瑠璃のスキャンダルなんて出てきたら執拗に拡散して責め立てて、私と瑠璃を離そうとするはず。またとない好機だもん絶対に動く。だけどそうはしなかった。息を潜めて静かにしてた。自分達を印象付けたくないみたいにね。だから、あの子達が怪しいと思った」
唇は滑らかに動く。真剣な眼差しは憂いを秘めて俺を向く。不謹慎かもしれないけれど見惚れた。
絹糸みたいな前髪がキラキラ揺れる。彼女自身が輝いて見える。
ーー巴は綺麗だ。でもーー。
俺は雑念を払うように首を振って彼女の言葉に向き直った。
「状況証拠でしか無いけど、昨日、森本が瑠璃を呼び出した時に沙羅達が居なかった。これだけで決めつけるのはあまりな早計すぎるけど、写真を教師に送りつけたのが森本で生徒が沙羅達。そう考えたら私の所に写真が届かなかった事とかも辻褄が合うし、他の要因的にも色々納得できる。まぁ、確定じゃないけど一つの可能性として念頭に置いといて」
「了解。で、結局、ここに来た理由聞いてねぇぞ。いい加減教えろよ」
「ん? 単純だよ。写真の真偽を聞きに来たの。本当に万引きをしたのかってね」
「それだけ……?」
「うん、それだけだよ。でも重要かな。もし本当にやっててあれが瑠璃の弱味だったんなら……私はーー」
「そこで何やっているんだ!」
突然声が割り込んできた。勢いよく二人で振り向く。聞いた事の無い声。友好的とは思えぬ言葉。それを発した人物を四つの瞳がしっかり捉えた。
言葉が途切れた僅かな間。一瞬とは思えないほどに長く濃い時間。息が詰まる。喉が渇く。
「犯人は森本と沙羅達だと思う。多分ね。でも分からないのが…………ごめん、順を追って説明する。これ、悪い癖だね」
俺と目が合って、巴は気がついたように笑った。俺の理解と巴の理解が違う事を彼女はいつも忘れてしまう。まぁ、確かに悪い癖だ。俺が着いてけなくなる。
「んー、何から話そっか……。森本と写真のことはタイミングが良すぎるし、無関係じゃなさそうだってのは賢太郎も分かるよね?」
頷く。巴は満足そうに続けた。
「ます私がおかしいと思ったのは、沙羅達が静かすぎた事。あの子達なら、瑠璃のスキャンダルなんて出てきたら執拗に拡散して責め立てて、私と瑠璃を離そうとするはず。またとない好機だもん絶対に動く。だけどそうはしなかった。息を潜めて静かにしてた。自分達を印象付けたくないみたいにね。だから、あの子達が怪しいと思った」
唇は滑らかに動く。真剣な眼差しは憂いを秘めて俺を向く。不謹慎かもしれないけれど見惚れた。
絹糸みたいな前髪がキラキラ揺れる。彼女自身が輝いて見える。
ーー巴は綺麗だ。でもーー。
俺は雑念を払うように首を振って彼女の言葉に向き直った。
「状況証拠でしか無いけど、昨日、森本が瑠璃を呼び出した時に沙羅達が居なかった。これだけで決めつけるのはあまりな早計すぎるけど、写真を教師に送りつけたのが森本で生徒が沙羅達。そう考えたら私の所に写真が届かなかった事とかも辻褄が合うし、他の要因的にも色々納得できる。まぁ、確定じゃないけど一つの可能性として念頭に置いといて」
「了解。で、結局、ここに来た理由聞いてねぇぞ。いい加減教えろよ」
「ん? 単純だよ。写真の真偽を聞きに来たの。本当に万引きをしたのかってね」
「それだけ……?」
「うん、それだけだよ。でも重要かな。もし本当にやっててあれが瑠璃の弱味だったんなら……私はーー」
「そこで何やっているんだ!」
突然声が割り込んできた。勢いよく二人で振り向く。聞いた事の無い声。友好的とは思えぬ言葉。それを発した人物を四つの瞳がしっかり捉えた。
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