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盈月
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巴の部屋は思ったよりも可愛らしかった。
「どうしたの、キョロキョロして」
オレンジジュースとクッキーを持って巴が戻ってくる。
「くまのぬいぐるみとかあるとは思わなかった」
「あぁ。小学生の時に家族旅行に行って買ってもらったんだ。それだけは捨てられなくて」
「ふーん」
わたしは手に取ったぬいぐるみをベッドに戻す。そしてもう一つの気になることを聞いた。
「隣の部屋に誰が居るの?」
「……ぇ、あ、兄貴がね」
「へー、巴ってお兄さん居たんだ」
物音の理由が分かってすっきりしたので、わたしは本棚に手を伸ばした。巴らしく、センスの良さそうな小説が並んでいる。
「ねぇ、瑠璃。ちょっといい?」
「ん?」
中表紙を開いた指を止める。巴はテーブルの上にジュースとクッキーを並べて真っ正面からこちらを見ていた。
わたしは本棚に小説を戻して、巴の向かいに座った。そして、クッキーを食べる巴につられて手を伸ばす。思ったよりも甘い。
「なに?」
巴は迷っているように目を伏せている。わたしはその様子を見守ったまま、オレンジジュースに口をつける。
そこでゼリーを渡していないことに気づいて、壁際に置いた紙袋に手を伸ばす。
ーーあれ?
紙袋がひしゃげて見えた。手を支えられなくなって、そのまま地面に倒れる。
「な……に」
身体の異変に意識がついていかない。妙に頭が働かない。
「ごめん、瑠璃」
そんな呟きを聞いた気がした。だけど、それを確かめる暇もなく、わたしは白に飲まれて意識を失った。
「どうしたの、キョロキョロして」
オレンジジュースとクッキーを持って巴が戻ってくる。
「くまのぬいぐるみとかあるとは思わなかった」
「あぁ。小学生の時に家族旅行に行って買ってもらったんだ。それだけは捨てられなくて」
「ふーん」
わたしは手に取ったぬいぐるみをベッドに戻す。そしてもう一つの気になることを聞いた。
「隣の部屋に誰が居るの?」
「……ぇ、あ、兄貴がね」
「へー、巴ってお兄さん居たんだ」
物音の理由が分かってすっきりしたので、わたしは本棚に手を伸ばした。巴らしく、センスの良さそうな小説が並んでいる。
「ねぇ、瑠璃。ちょっといい?」
「ん?」
中表紙を開いた指を止める。巴はテーブルの上にジュースとクッキーを並べて真っ正面からこちらを見ていた。
わたしは本棚に小説を戻して、巴の向かいに座った。そして、クッキーを食べる巴につられて手を伸ばす。思ったよりも甘い。
「なに?」
巴は迷っているように目を伏せている。わたしはその様子を見守ったまま、オレンジジュースに口をつける。
そこでゼリーを渡していないことに気づいて、壁際に置いた紙袋に手を伸ばす。
ーーあれ?
紙袋がひしゃげて見えた。手を支えられなくなって、そのまま地面に倒れる。
「な……に」
身体の異変に意識がついていかない。妙に頭が働かない。
「ごめん、瑠璃」
そんな呟きを聞いた気がした。だけど、それを確かめる暇もなく、わたしは白に飲まれて意識を失った。
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