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盈月
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家に帰ると、息がつける。
一人になると悩んでしまうが、だけどその分、それを隠さないで済む。
ーーなんでこんなことになっちゃったんだろう。
瑠璃と仲良くなれた気がしていた。だから調子に乗った。賢太郎にも瑠璃の可愛さを、面白さを知ってもらいたかった。
初めてこんなにも他人が大切だと思えた。だから兄貴の脅迫を最初は断った。だけど結局自分に負けた。
裏切ると決めたなら、捨てられればいいのに。瑠璃を完全に嫌いになれればいいのに。
「心なんてなくなればいいのに」
考える。瑠璃と共闘してUSBを奪う算段。二人でやれば出来るかもしれない。彼女となら可能だと思う。
それでも怖気づいてしまう。私は兄貴には敵わないのだと自分が認めてしまっている。少しでもリスクがあるならと踏み出せない。
戻れればいいのに、瑠璃と出会う前の一匹狼に。そうすれば悩むことなんてなかった。
私はスマホを取り出し、何をするでもなくいじった。落ち着かない。ずっと心がうるさい。何か他のことをしたい。
「ん?」
LINEが鳴った。
「っ……」
開くとあるのは、知ってはいるけど知らない名前。
「タラクサカム……」
賢太郎に瑠璃の弱点を教えた奴だ。
それが罠だと即座に分かった。このタイミングで来るということは、きっと兄貴と私のことを知っている。そしてきっと、私に決意をさせようとしている。
スマホの画面を凝視した。
通知に書いてあるのは“タラクサカムが写真を送信しました"
開くべきではないのだろう。
ーーでも……。
私は通知をタッチした。分かっている、理解している。それでも、今の私にとって中途半端から抜けられることは何よりも甘美だった。
そして、画面に映る写真。薄暗く、分かりにくい。
「瑠璃……」
視線が外せない。許容できない。でも納得している。
写真は映画のワンシーンのようだった。
真ん中にフードを被り、黒いコートをなびかせる人物が立っている。そしてその周りはーー血の海だった。
大勢が倒れている。腕から、頭から、足から、いたるところから血を流し、死んだように倒れている。実際、死んでいるのだろう。きっと殺されたのだ。
黒コートのナイフによって。
「そっか」
知らず手が震えている。黒コートはフードを目深に被っているため、顔も何も分からない。それでも、その立ち姿は見たことがある。そして、タラクサカムが送ってくるということはそういうことなのだろう。
寒かった。手近な布団を手繰り寄せて入る。身体の芯が温まらなかった。
結局、私はあの子を全然知らない。
一人になると悩んでしまうが、だけどその分、それを隠さないで済む。
ーーなんでこんなことになっちゃったんだろう。
瑠璃と仲良くなれた気がしていた。だから調子に乗った。賢太郎にも瑠璃の可愛さを、面白さを知ってもらいたかった。
初めてこんなにも他人が大切だと思えた。だから兄貴の脅迫を最初は断った。だけど結局自分に負けた。
裏切ると決めたなら、捨てられればいいのに。瑠璃を完全に嫌いになれればいいのに。
「心なんてなくなればいいのに」
考える。瑠璃と共闘してUSBを奪う算段。二人でやれば出来るかもしれない。彼女となら可能だと思う。
それでも怖気づいてしまう。私は兄貴には敵わないのだと自分が認めてしまっている。少しでもリスクがあるならと踏み出せない。
戻れればいいのに、瑠璃と出会う前の一匹狼に。そうすれば悩むことなんてなかった。
私はスマホを取り出し、何をするでもなくいじった。落ち着かない。ずっと心がうるさい。何か他のことをしたい。
「ん?」
LINEが鳴った。
「っ……」
開くとあるのは、知ってはいるけど知らない名前。
「タラクサカム……」
賢太郎に瑠璃の弱点を教えた奴だ。
それが罠だと即座に分かった。このタイミングで来るということは、きっと兄貴と私のことを知っている。そしてきっと、私に決意をさせようとしている。
スマホの画面を凝視した。
通知に書いてあるのは“タラクサカムが写真を送信しました"
開くべきではないのだろう。
ーーでも……。
私は通知をタッチした。分かっている、理解している。それでも、今の私にとって中途半端から抜けられることは何よりも甘美だった。
そして、画面に映る写真。薄暗く、分かりにくい。
「瑠璃……」
視線が外せない。許容できない。でも納得している。
写真は映画のワンシーンのようだった。
真ん中にフードを被り、黒いコートをなびかせる人物が立っている。そしてその周りはーー血の海だった。
大勢が倒れている。腕から、頭から、足から、いたるところから血を流し、死んだように倒れている。実際、死んでいるのだろう。きっと殺されたのだ。
黒コートのナイフによって。
「そっか」
知らず手が震えている。黒コートはフードを目深に被っているため、顔も何も分からない。それでも、その立ち姿は見たことがある。そして、タラクサカムが送ってくるということはそういうことなのだろう。
寒かった。手近な布団を手繰り寄せて入る。身体の芯が温まらなかった。
結局、私はあの子を全然知らない。
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