パンドラ

須桜蛍夜

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盈月

122

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「なんか、前にもこんなことあったね」

公園でブランコに座りながら賢太郎を待つ。あれはたしか、瑠璃と仲良くなって欲しいと伝えた時だ。現れた彼は、その時と重なった。

「何の用だよ」

ぶっきらぼうに告げて、賢太郎はブランコの柵に腰掛けた。前は、腰掛ようとすらしなかったな。見つめた彼の?を夕陽が赤く染めていく。

「遊びのお誘い。明日、瑠璃と三人で街に行こう」

「……俺は行かない」

軽快な声は即座に否定される。

「なんで?」

「…………」

少年はきまり悪そうに目を背けるだけだった。何かを言おうか迷っているようにも見える。

ーーやっぱり何かあるんだ。

少しほっとする。最近、賢太郎はあからさまに私達を避けていた。登下校にも来なくなったし、私が話しかけようとしても逃げてしまう。それに彼自身も、いつもの悪ガキ二人と居る訳でもなくひとりぼっちだった。明らかに様子がおかしい。

「理由無いなら行こうよ」

煽ってみる。原因を話して欲しい。賢太郎にも嫌われたのかもしれないなんて疑惑を早く消したい。

「俺は行けない。昇と約束したんだ、もう西山には近づかないって」

耐えきれないようにそうこぼした。賢太郎の目はまだ地面を向いている。

ーー昇くんね。

頭には、いろんな思いが同時に巡った。彼はまだ瑠璃のことが好きだったのか。賢太郎はようやく彼にも罪滅ぼしをすることに決められたのか。ほっとした。

「ふーん、でもそれって私には関係ないでしょ。私は賢太郎には瑠璃と仲良くなって欲しい。それで、賢太郎は私にも負い目がある。なら、私からのお誘いも断れないよね」

だけど、私は彼と遊びたい。これとそれは話が別だ。どさくさに紛れて瑠璃を誘えたのだ。何が何でも賢太郎を誘ってみせる。私は三人で遊びたい。

ーーなんか、瑠璃みたいな物言いしちゃったな。

それはそれでなんだか嬉しい。

「そんな……」

だけど賢太郎は裏切られたような顔をした。罪滅ぼしのためならば協力してくれると思っていたのだろう。

「はい、決まり。明日9時に駅集合。約束破ったら賢太郎の黒歴史をクラスにバラすから。じゃあね」

反論をさせる暇も与えず走り出す。

「えっ、ちょ、待てよ!」

追いかけてくる足音を振り向きもしないで速度を上げた。

多分こうやったら彼の性格上、明日は来るだろう。来なければいけない大義名分まで作ってやったのだ。
昇くんには悪いけれど、わたしはわたしの好きなようにやるよ。

空想の中、眼鏡の少年に言葉をかけた。






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