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盈月
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「失礼します。瑠璃の様子はどうですか」
保健室に入ると、先生は真面目な目でおれを見た。そして、にっこりと微笑むと優しく言う。
「今はよく寝ていますよ」
瑠璃が倒れた時、心臓が止まるかと思った。このまま死んでしまったらと考えると、気が狂いそうだった。
保健室に駆け込んで、先生の診察を受けている間も、気が気ではなかった。
だけど、彼女はおれに優しく笑いかけて言ったのだ。
「大丈夫ですよ。ただの寝不足です。しばらく寝たら元気になりますよ」
「寝不足……?」
身体の力が抜けて崩れ落ちる。
ーーよかった。
また、たいせつなひとを失ってしまうかと思った。おれの?には涙が伝っていた。
それから、先生の、人が居ない方が静かに眠れるだろう。という助言にしたがって、おれと吉田さんは保健室をあとにしたのだ。
「寝顔見ても大丈夫ですか?」
許可を取ってベッドに向かう。瑠璃はそこで静かに寝息をたてていた。
「巴ちゃん達が頑張ってくれてるよ。瑠璃に優勝を届けるんだってさ」
頭に手を置き、撫でてやる。少し汗ばんだ額は、瑠璃が生きていると伝えてくれる。
不思議な感覚だった。眠りの浅い彼女は、近づくといつも起きてしまう。それなのに、今日はこんなにも近くに寝顔がある。
「瑠璃」
呼んでみる。きっと起きたら文句言われるだろうな。
「西山さん」
「はい!」
瑠璃に夢中になっていたおれは声に驚き、慌てて振り向く。 突然の事に、敬礼もしてしまっている。
「すみません。驚かせるつもりは無かったのですが」
「いえ、こちらこそすみません」
いつの間にか後ろに先生が居た。優しそうな笑い方をするいかにも保健医というような女性。彼女は、申し訳なさそうに口を開いた。
「すごく失礼な事をお聞きするのですが」
「はい」
「虐待……していたりしないですよね?」
「は?」
虐待? おれが?
「まさか。してないですよ。瑠璃を虐待なんてしたら、おれが酷くやり返されそうだ」
「…………ですよね」
真剣におれの目を見ていた彼女は戸惑うような、ホッとしたような表情で視線を逸らした。
「何かあったんですか?」
今度はおれが真剣に彼女を見つめる。
「実はーー」
先生は小さく語り出した。
「失礼します。瑠璃の様子はどうですか」
保健室に入ると、先生は真面目な目でおれを見た。そして、にっこりと微笑むと優しく言う。
「今はよく寝ていますよ」
瑠璃が倒れた時、心臓が止まるかと思った。このまま死んでしまったらと考えると、気が狂いそうだった。
保健室に駆け込んで、先生の診察を受けている間も、気が気ではなかった。
だけど、彼女はおれに優しく笑いかけて言ったのだ。
「大丈夫ですよ。ただの寝不足です。しばらく寝たら元気になりますよ」
「寝不足……?」
身体の力が抜けて崩れ落ちる。
ーーよかった。
また、たいせつなひとを失ってしまうかと思った。おれの?には涙が伝っていた。
それから、先生の、人が居ない方が静かに眠れるだろう。という助言にしたがって、おれと吉田さんは保健室をあとにしたのだ。
「寝顔見ても大丈夫ですか?」
許可を取ってベッドに向かう。瑠璃はそこで静かに寝息をたてていた。
「巴ちゃん達が頑張ってくれてるよ。瑠璃に優勝を届けるんだってさ」
頭に手を置き、撫でてやる。少し汗ばんだ額は、瑠璃が生きていると伝えてくれる。
不思議な感覚だった。眠りの浅い彼女は、近づくといつも起きてしまう。それなのに、今日はこんなにも近くに寝顔がある。
「瑠璃」
呼んでみる。きっと起きたら文句言われるだろうな。
「西山さん」
「はい!」
瑠璃に夢中になっていたおれは声に驚き、慌てて振り向く。 突然の事に、敬礼もしてしまっている。
「すみません。驚かせるつもりは無かったのですが」
「いえ、こちらこそすみません」
いつの間にか後ろに先生が居た。優しそうな笑い方をするいかにも保健医というような女性。彼女は、申し訳なさそうに口を開いた。
「すごく失礼な事をお聞きするのですが」
「はい」
「虐待……していたりしないですよね?」
「は?」
虐待? おれが?
「まさか。してないですよ。瑠璃を虐待なんてしたら、おれが酷くやり返されそうだ」
「…………ですよね」
真剣におれの目を見ていた彼女は戸惑うような、ホッとしたような表情で視線を逸らした。
「何かあったんですか?」
今度はおれが真剣に彼女を見つめる。
「実はーー」
先生は小さく語り出した。
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