117 / 158
盈月
108
しおりを挟む
「っ……謝れば許されるとでも思ってるのか?」
「思ってねぇ。だから、罪滅ぼしをさせてくれ。頼む。お前が許してくれるまで、俺ができることならなんでもやる。こんなことしかできねぇけど、本当にすまなかった」
この申し訳のなさがどうすれば伝わるのか分からない。だから、できる限りの思いを込めて頭を下げた。
俺のプライドはもうそれを邪魔してこない。
下手すれば昇を殺していた。俺が殺されていたかもしれない。前にも、巴を殺しかけたことがあった。俺の軽率な行動一つでこんなにも命を脅かしてしまっていた。
そんなことを思ったら、もう小さなプライドなんかに縋り付いていられなくなった。
「本当になんでもやるんだな。僕の言いなりになるんだな?」
「……あぁ」
神妙に頷いた。でも、心は決まっていなかった。恐ろしかった。憎しみに燃える昇がどんなことを命じるのか。俺の人生はこの先どうなるのか。罪滅ぼしなんてやめてしまいたいとすら思ってしまう。
「僕の言いなりに……」
怒りと笑い。相反する二つを同時に表現してほくそ笑む。狂っている。そう捉えてしまいそうな表情の昇を俺はじっと見つめた。
早くして欲しかった。生殺しの状態で放置して欲しくない。
握っていた拳が汗ばんでくる。何をされるのか。想像は悪い方にしか転がらない。
「じゃあまず……」
ようやく昇は命令を口にした。
「思ってねぇ。だから、罪滅ぼしをさせてくれ。頼む。お前が許してくれるまで、俺ができることならなんでもやる。こんなことしかできねぇけど、本当にすまなかった」
この申し訳のなさがどうすれば伝わるのか分からない。だから、できる限りの思いを込めて頭を下げた。
俺のプライドはもうそれを邪魔してこない。
下手すれば昇を殺していた。俺が殺されていたかもしれない。前にも、巴を殺しかけたことがあった。俺の軽率な行動一つでこんなにも命を脅かしてしまっていた。
そんなことを思ったら、もう小さなプライドなんかに縋り付いていられなくなった。
「本当になんでもやるんだな。僕の言いなりになるんだな?」
「……あぁ」
神妙に頷いた。でも、心は決まっていなかった。恐ろしかった。憎しみに燃える昇がどんなことを命じるのか。俺の人生はこの先どうなるのか。罪滅ぼしなんてやめてしまいたいとすら思ってしまう。
「僕の言いなりに……」
怒りと笑い。相反する二つを同時に表現してほくそ笑む。狂っている。そう捉えてしまいそうな表情の昇を俺はじっと見つめた。
早くして欲しかった。生殺しの状態で放置して欲しくない。
握っていた拳が汗ばんでくる。何をされるのか。想像は悪い方にしか転がらない。
「じゃあまず……」
ようやく昇は命令を口にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる