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盈月
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しおりを挟む空は晴れていた。眩しそうに瑠璃が目を細める。
「まず、何しよっか」
私はうきうきと言って駆け出す。楽しげにしている方が余計なことは考えなくて済む。楽しくしなきゃ折角の旅行がもったいない。
「なんでもいい。っていうか、一応計画は立ててるんでしょ」
「んー、でも、計画通りに進めてるかどうかなんて監視してる先生は居ないからね」
悪戯っぽく笑って、私は真っ直ぐ美味しいお菓子屋さんへと向かった。
「どう? 旅行ってのも楽しいでしょ」
「…………」
返事は無い。代わりにもぐもぐといった物を食べる音が返ってくる。
ホテルを飛び出してから、私たちはずっと計画ガン無視で街をぶらついていた。二人旅行は楽し過ぎて私は始終ニコニコしている。
真逆に無表情な少女が旅行を楽しんでいるのかはいまいち分からなかった。しかし、腹ペコキャラを最大限に発揮して食べ物を片っ端から購入しているところを見ると、それなりに楽しんではいるのだろう。
「あ、瑠璃。雑貨屋あるよ。入ろ!」
肉まん屋さんに目を向けていた彼女の袖を引っ張って強引に店へと引き込む。
こじんまりとしているがセンスの良い小物たち。雰囲気の良い空間。あれもこれもと欲しくなる程に私好みの品揃え。
私は瑠璃を離し、一人でそれらを見て回った。砂時計、オルゴール、置物……。これらを部屋に置いたらと思うと興奮するが、値札を見て現実に戻る。その無駄で楽しいサイクルを何度も何度も繰り返す。
「あ、瑠璃! こっちこっち」
ある物を見つけ、手招きで友人を呼び寄せた。退屈そうに招き猫の貯金箱を見ていた少女は、とことこと素直にこっちへやって来る。
「これ、どう?」
その頭に透明感のある青色の花の飾りがついたピンを付けた。
「うん、可愛い。それ買ってあげる。瑠璃はもっとオシャレしなきゃね」
白いトレーナーにジーパン。いつ見てもそんな簡素な格好をしている少女に一点の異様。それは妙に目立ってその服装すら可愛く見せる。良い感じに似合っていた。
瑠璃は気になるのかぐりぐりと何度もピンをいじくる。そして何を思ったのか唐突に同じ種類の緑のピンを手に取った。
「じゃ、わたしもこれ、巴に」
信じられない言葉。
「瑠璃が、何かをくれる日が来るなんて……」
「そんなこと言うならあげない」
目を丸くする私にジト目が冷たく言い放つ。
「え! やだ、欲しい」
慌ててピンを戻そうとした手に飛びついてそれを奪う。
「ありがと。お揃いだね。じゃあこれが、私たちの友情の証ってことで」
そして、自分の頭にもそれをつけてニカッと笑った。
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