28 / 32
Day by day
保健室の夜
しおりを挟む
***
深夜の保健室。
いつもは誰も居ないはずのそこに今日は明かりが点いている。
「あんまり変な時間に呼び出さないでよ。出てくるの大変になるから」
「密会がバレないように気を使ってあげてるんだけどね。お節介かい?」
魔力提供が終わり、気だるい身体に鞭打って、サクはゆっくり立ち上がる。
途端に襲ってくる目眩重力に彼女はバランスを崩す。
「今日は一段と辛そうだね」
「誰のせいだと……」
机に手をつき、しゃがみながら息を整える。人並みの魔力は残っているが、多い魔力を平常として動いている身体は欠乏を訴える。
「でも、今、日は許すかな……今日、は、頼みがあるから……」
「頼み? 君が?」
面白がるようなDrを無視し、サクは言葉を続けた。
「魔闘祭、まで……魔力の提、供は控えてほしいの」
ルートの瞳が鷹のように細くなる。
「へぇ、それはどうして?」
「次の魔闘祭は……きちんと取り組むから、ボロを、出さないように。こないだみたいな……失敗をしない為」
「そんなの、適当に初戦敗退でもしておけばいいだろ」
「そうはいかないから、頼んでる。それが終わったら、もう後は……好きにしていいから」
「それは毎回限界まで絞りつくしても文句言わないって事かい?」
悩む風に頷くサク。ルートは彼女を観察する。真意はどこにあるのか。
「分かった。何が魔闘祭にあるのか知らないけど、その要求を呑もう」
「良かった。じゃあ今日はこれで失礼する」
机を支えにサクはふらふらと立ち上がった。
急いで帰って寝よう。そうしなければ明日は平静を保てない。そう思って持ち上げた顔の先、Drが笑いながら立ち塞がった。
「許さないよ」
そのままサクは、簡単に押し倒される。ただでさえ力の入らない手足を強引に押さえつけられ、抵抗力を根こそぎ奪われる。
「何を……あっ」
彼の口が少女の首筋に襲い掛かった。感じた事の無い苦痛に、サクは細く儚い悲鳴を上げる。
「あと二週間も魔力をもらえないんだろ、なら、今全部貰っちゃっても文句ないよね」
男は再び貪り始める。そこに容赦という言葉は無い。
声が出ない。身体は動かない。彼女の身体はされるがままで、痛みが限度を超えていく。身体の全てが渇望に喘いでいる。気が狂いそうだ。耐えるなんてとんでもない。手も足も、首も腰も、全ての部分から魔力が引き剥がされていく。血は出ない。しかし、肉を剥がされる事と同種の痛みが広がっていく。発狂したい。逃げたい。無が彼女を苛んでいく。
そして、尋常ならざる苦痛に溺れ、サクの意識は闇へと溶けた。
深夜の保健室。
いつもは誰も居ないはずのそこに今日は明かりが点いている。
「あんまり変な時間に呼び出さないでよ。出てくるの大変になるから」
「密会がバレないように気を使ってあげてるんだけどね。お節介かい?」
魔力提供が終わり、気だるい身体に鞭打って、サクはゆっくり立ち上がる。
途端に襲ってくる目眩重力に彼女はバランスを崩す。
「今日は一段と辛そうだね」
「誰のせいだと……」
机に手をつき、しゃがみながら息を整える。人並みの魔力は残っているが、多い魔力を平常として動いている身体は欠乏を訴える。
「でも、今、日は許すかな……今日、は、頼みがあるから……」
「頼み? 君が?」
面白がるようなDrを無視し、サクは言葉を続けた。
「魔闘祭、まで……魔力の提、供は控えてほしいの」
ルートの瞳が鷹のように細くなる。
「へぇ、それはどうして?」
「次の魔闘祭は……きちんと取り組むから、ボロを、出さないように。こないだみたいな……失敗をしない為」
「そんなの、適当に初戦敗退でもしておけばいいだろ」
「そうはいかないから、頼んでる。それが終わったら、もう後は……好きにしていいから」
「それは毎回限界まで絞りつくしても文句言わないって事かい?」
悩む風に頷くサク。ルートは彼女を観察する。真意はどこにあるのか。
「分かった。何が魔闘祭にあるのか知らないけど、その要求を呑もう」
「良かった。じゃあ今日はこれで失礼する」
机を支えにサクはふらふらと立ち上がった。
急いで帰って寝よう。そうしなければ明日は平静を保てない。そう思って持ち上げた顔の先、Drが笑いながら立ち塞がった。
「許さないよ」
そのままサクは、簡単に押し倒される。ただでさえ力の入らない手足を強引に押さえつけられ、抵抗力を根こそぎ奪われる。
「何を……あっ」
彼の口が少女の首筋に襲い掛かった。感じた事の無い苦痛に、サクは細く儚い悲鳴を上げる。
「あと二週間も魔力をもらえないんだろ、なら、今全部貰っちゃっても文句ないよね」
男は再び貪り始める。そこに容赦という言葉は無い。
声が出ない。身体は動かない。彼女の身体はされるがままで、痛みが限度を超えていく。身体の全てが渇望に喘いでいる。気が狂いそうだ。耐えるなんてとんでもない。手も足も、首も腰も、全ての部分から魔力が引き剥がされていく。血は出ない。しかし、肉を剥がされる事と同種の痛みが広がっていく。発狂したい。逃げたい。無が彼女を苛んでいく。
そして、尋常ならざる苦痛に溺れ、サクの意識は闇へと溶けた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
善とか悪とか、魔法少女とか
結 励琉
ファンタジー
銀行の金庫室からの現金紛失事件や、女子高生の失踪事件が立て続きに起きていたある日、高校に入ったばかりの少女、藤ヶ谷こころはSNSで勧誘を受けアルバイト紹介会社を訪れた。
会社の担当者箕輪は、自分たちは魔法のような力(ウィース)を持っているティーツィアという組織であり、マールムと呼ぶ現金紛失事件の犯人と戦うために、こころに魔法少女となってくれないかと依頼した。
こころの決断は?
そして、「善」とは?「悪」とは?
彼女の運命はどうなる?
結励琉渾身の魔法少女ファンタジー、今開幕!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
GM8 Garden Manage 8 Narrative
RHone
ファンタジー
少し作業の隙間が出来たので手直し更新再開
この世の悪が集う庭には大魔王から正義厨まで何でも御座れ。困った厄介者達の説話集。
比較的短編の説話集ですが、内容がかなり際どい事があるのでご了承ください。
八精霊大陸シリーズの8期後半想定、トビラ後の話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
「破滅の町」~ruin the town~
KeiSenyo
ファンタジー
その町は滅びた街の上にあった。黄金都市と呼ばれたその街で、三百年前自滅の戦争が行われたのである。人々は、その街を隠さなければならなくなった。
かつて十五人の子供たちは、そこで秘密の探険を繰り広げた。しかし、町の地下にはいまだに跋扈する彼らの先祖の霊のほかに、オグという、人間の悪意の集合したいにしえの魔物がいた。
二十二歳の女性ルイーズ=イアリオは、十五人の子供たちの一人だった。彼女はいまだ地下に閉じ込められている膨大な死者たちのために、ひとりで彼らを供養することを思いつく。その墓参りの途中、彼女は膨大な数の光の霊と出会う。「この町は滅びる。滅びなければいけない。」彼女はそう告げられる。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる