聖なる悪魔~sin of faith~

須桜蛍夜

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Day by day

保健室(3)

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長く続いた苦痛。

その行為が終わったのはサクの身体が悲鳴を上げる直前であった。

「はぁ……はぁ」

 息が切れている。身体の重さが尋常ではない。とてつもない虚脱感、限界を優に超えている。魔力がいつもの半分も残っていなかった。

「いやぁ、想像以上だ。こんな美味しい魔力なんてこの世にあったんだね。君を手に入れられて本当に良かった」

「気が済んだ……なら、治療して。私はこんな所で……」

 言葉が続けられない。話す労力も惜しいくらいに体力は足りていない。

「治療? あぁ、そう言ってたんだっけ」

 Drはにやりと笑って指を鳴らす。途端、サクの身体を縛っていた拘束感が消え失せた。

「君の身体は治療済みだよ。貴重な餌を危ない状態で放っておかないさ。抵抗されないように縛ってはいたけどね。そしてもう一つ良いニュースだ。君の友人が来ているよ」

ルートが保健室の扉を開ける。そこにはタルクが立っていた。

「サク!」

 少年は涙を滲ませながら嬉しさで爆発するように飛び込んでくる。

「良かった。死んじゃったらどうしようかと思ってた」

 泣きじゃくるタルク。そんな彼に、サクは弱っているところを見せられる訳がない。

「私が死ぬ訳ないじゃん。元気いっぱいだよ」

 無理やりに身体を起こし、彼の頭に手を当てる。こんな動作だけでも全身が悲鳴を上げる。

「じゃあ、迎えも来た事だし、帰ってもらおうかな。僕は魔闘祭の間は大忙しなんだ」

「そうだよな。サク、歩けるか?」

「うん、大丈夫」

 元気な様子で歩き出す二人。

「外道」

 少女がすれ違いざまに呟いた。身体の不調も全て押し隠して平静を装う様子、恨みに満ちた声色の言葉、そして濃厚な魔力。

変態医は新しい最高級玩具に満面の笑みを送った。
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