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Day by day
魔闘祭ペア戦(1)
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翌日からタルクは“伸長”の鍛錬を始めた。
精度が強く要求される魔術。それを素早く強固に発現しなければならないというのは難題だった。
それでも彼は諦めなかった。相棒が託してくれた信頼を裏切る訳にはいかなかった。
そして、なんとか形になってきた頃、時は魔闘祭を迎える。
***
「一回戦、十六試合。サク、タルクペアVSショウ、シイタペア。試合開始」
アナウンスとともに鐘が鳴り。パラパラと声援が巻き上がる。
『いい具合に油断してくれてるね』
エルードが入った。言葉通り、対戦相手は雑談に興じていた。落ちこぼれの相手など片手間でもできるのだろう。
『あぁ、好都合だ。生まれ変わった俺らを見せてやろうぜ』
タルクは笑う。そして二人は同時に駆け出した。
「――世界は光に満ちている」
サクの術が完成する。発生した強風は砂を巻き上げ、巨大な砂嵐となる。
「ちっ」
戦闘の開始に気がついて、ショウとシイタがタルク達を振り向く。それでも、その顔にはまだ余裕に満ちていた。先手を打たれても負けはしない。自信が全身から溢れている。
ショウが魔力を練り上げた。タルクとの距離はあと十歩。彼の実力ならば、タルクよりも早く魔術を完成できる。
「――強きをくじく鉄拳となれ」
馬鹿正直に突っ込んでくる少年に、魔術はニヤニヤ放たれる。それは寸分違わず向かっていく。しかし、ぶつかる寸前にタルクの姿は砂嵐にかき消えた。
「っ!」
氷の花は咲き乱れるが、手ごたえはなかった。
「ちょっとは強くなってるって事か」
感心はする。しかしまだ自分には敵わない。ショウはそれを確信している。シイタをサク討伐に向かわせて、彼は呪文を唱えた。
「――強きをくじく鉄拳となれ」
氷が地面を這って直径三ⅿ程の円状に広がり、鬱陶しい砂嵐をかき消す。
晴れた視界は遠くで倒れる相棒を捉えた。
「シイタ!」
駆け出そうとしたが、何かに気づいてショウは無理やりに身体を回転させる。風がなびいた服を切り裂いていく。見えない風の刃が迫っていたのだ。
「許さねぇぞ」
金糸で刺繍された服は無残に破れてしまった。
ーーお気に入りだつたんだぞ。
怒りで遠くの少女を見つめる。軽く終わらせるつもりだったが、サクだけは痛めつけなくてはいけない。
「ーー強きを……」
感情を魔力に乗せた瞬間、突然金は赤に染まった。
「たるく!」
腹から突き出る剣と血液。勢いよく振り返るが、そこには誰も居ない。困惑は隙を生む。少年はいとも容易く足を払われそのまま意識を失った。
「やったな」
タルクは、足元に転がるショウを見ながら顔の隣に掌を掲げた。
「うん」
サクが降り立ってきて手を打ちつける。三年間で初の一回戦突破だった。
精度が強く要求される魔術。それを素早く強固に発現しなければならないというのは難題だった。
それでも彼は諦めなかった。相棒が託してくれた信頼を裏切る訳にはいかなかった。
そして、なんとか形になってきた頃、時は魔闘祭を迎える。
***
「一回戦、十六試合。サク、タルクペアVSショウ、シイタペア。試合開始」
アナウンスとともに鐘が鳴り。パラパラと声援が巻き上がる。
『いい具合に油断してくれてるね』
エルードが入った。言葉通り、対戦相手は雑談に興じていた。落ちこぼれの相手など片手間でもできるのだろう。
『あぁ、好都合だ。生まれ変わった俺らを見せてやろうぜ』
タルクは笑う。そして二人は同時に駆け出した。
「――世界は光に満ちている」
サクの術が完成する。発生した強風は砂を巻き上げ、巨大な砂嵐となる。
「ちっ」
戦闘の開始に気がついて、ショウとシイタがタルク達を振り向く。それでも、その顔にはまだ余裕に満ちていた。先手を打たれても負けはしない。自信が全身から溢れている。
ショウが魔力を練り上げた。タルクとの距離はあと十歩。彼の実力ならば、タルクよりも早く魔術を完成できる。
「――強きをくじく鉄拳となれ」
馬鹿正直に突っ込んでくる少年に、魔術はニヤニヤ放たれる。それは寸分違わず向かっていく。しかし、ぶつかる寸前にタルクの姿は砂嵐にかき消えた。
「っ!」
氷の花は咲き乱れるが、手ごたえはなかった。
「ちょっとは強くなってるって事か」
感心はする。しかしまだ自分には敵わない。ショウはそれを確信している。シイタをサク討伐に向かわせて、彼は呪文を唱えた。
「――強きをくじく鉄拳となれ」
氷が地面を這って直径三ⅿ程の円状に広がり、鬱陶しい砂嵐をかき消す。
晴れた視界は遠くで倒れる相棒を捉えた。
「シイタ!」
駆け出そうとしたが、何かに気づいてショウは無理やりに身体を回転させる。風がなびいた服を切り裂いていく。見えない風の刃が迫っていたのだ。
「許さねぇぞ」
金糸で刺繍された服は無残に破れてしまった。
ーーお気に入りだつたんだぞ。
怒りで遠くの少女を見つめる。軽く終わらせるつもりだったが、サクだけは痛めつけなくてはいけない。
「ーー強きを……」
感情を魔力に乗せた瞬間、突然金は赤に染まった。
「たるく!」
腹から突き出る剣と血液。勢いよく振り返るが、そこには誰も居ない。困惑は隙を生む。少年はいとも容易く足を払われそのまま意識を失った。
「やったな」
タルクは、足元に転がるショウを見ながら顔の隣に掌を掲げた。
「うん」
サクが降り立ってきて手を打ちつける。三年間で初の一回戦突破だった。
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