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対決、酒呑童子編
111 ひだるい
しおりを挟む「うーん。やっぱり、ちょっときつくなった?」
なずなはスカートのウエストを引っ張った。以前よりスカートの余裕がない気がする。
いつもなら、ベルトをするのだが……。
「きょ、今日はちょっと止めておこう」
諦めて、部屋からキッチンに向かった。
「あっ!なずな。お弁当、忘れないようにな」
今日は父が休みなので、お弁当を作ってくれる。
「ありがとう!パパ」
なずなはお弁当を受け取ると、カバンに入れた。
「今日は凄いぞ、張り切って、マヨからにポテトサラダ、それからデザートは特性チョコパンケーキだぞ」
その言葉になずなの顔は引きつってしまう。
「え?そんなに……」
「ああ!」
「いいな。姉ちゃんはお弁当で……俺なんか給食だし……しかも、今日は野菜炒めだし」
弟の広海はがっくりと肩を落とす。
「何言ってるんだ、野菜は農家さんが一生懸命作ってるんだぞ?2人とも、残さず昼ごはんは食べなさい」
確かに父の言う通り、ご飯を残すのはよくない。
「そ、そうね!じゃあ、行ってきます!」
なずなは慌てて、家を出た。
「あ!なずな、朝ご飯……」
「行っちゃったよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まさか、あんな事になるなんて……。梔子はいつもより早足で動いていた。
それは今朝、制服のシャツを着た瞬間ビリッと脇の辺りの記事が破れた。
そればかりではなく、以前よりシャツが小さくなった気もする。
鏡を見ると、浮腫んでいるのか、肉付きが良くなったのか知らないが、丸くなって来たような気もする。
(こんなの有り得ない!これ以上デブになったら蛍のお嫁さんになれないわ!)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……はっくしょん!」
蛍は盛大なくしゃみをする。何かが鼻に入ったのかと蛍は首を傾げる。
「蛍くん、風邪?」
「いや、そうでもない。それより、ぺんぺん……」
蛍はじっとなずなを見つめる。
(え……?ひょっとして、太ったのがバレた?)
なずなはぎくりと顔を青くする。
「何で今日、登校早かったの?広海君に聞いたら、先に行ったって?」
蛍は少し怒っているようにも、悲しそうにも見えた。なずなは何だか、蛍がとても可愛く見えた反面、自分の体型の事ではなくホッとしたようだ。
「え?あの……ちょっと急いでたのよ。日直だった気もしたし」
「ふーん」
つまらなそうに蛍はそっぽを向く。
その時だった。みのりが慌てた様子で、教室に入って来る。
「はあはあ……。遅刻じゃないわよね?」
髪を乱し、疲労困憊と言った様子でみのりは自分の机に着席する。
「お、おはよう。みのり。どうしたの?」
「おはよ。なずな……。今日ちょっと遠回りして学校来たのよね」
カバンからペットボトルを取り出し、お茶を飲むみのり。ボトルには、体脂肪にいい烏龍茶と書かれていた。
「……いつものじゃない?」
蛍がつぶやく。
「は?何?」
「君がいつも飲むのは、ミルクティー。因みにぺんぺんはいつもボトルに入れた麦茶……」
みのりは口を開けたまま、閉じなくなっていた。
「蛍くん凄い。なんで分かったの?」
「なずな、そうじゃない。」
「何でって、時々飲んでるから」
「やっぱりね」
みのりは顔を引き攣らせながら、首を振る。
その時、チャイムがなり、生徒達が一斉に席に着く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝食の食器を洗いながら、良介は食器が大きくなったと感じていた。
ついこの間まで、二人とも子供用の小さな皿や箸を使っていた。だが、今は大人用サイズを使用している
弘海は、来年中学生。なずなは、高校2年生。
いつか、弘海に車を運転してもらい、なずなは家を出ていくだろう。
そして、家族を作るのだろう。良介は起こってもいない事につい涙ぐんでしまう。
「はあ。俺は何考えてんだろう」
食器を洗い終えるとそんな自分に苦笑いをしてしまう。
なずなを初めて抱っこした時の温もりは忘れた事はない。
良介は何気なくソファに座ってテレビをつけた。
「……次のニュースです。昨夜、綾詩野市の路上で亡くなっているを発見されました。女性は餓死と思われるようです」
女子アナウンサーが、ニュースを伝える。
だが、この事件は実に不可解であると専門家が言っていた。
女性は、その日スイーツビュッフェに行っているとの調べで、決して餓死するような状況ではなかったということだった。
「なんか怖い事件だな」
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