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対決、酒呑童子編
107 助け舟
しおりを挟む「随分、ひでぇ事いうじゃねぇか!気持ち悪いなんてな!」
変わらない仮面の表情で、赤マントはネリネに近寄る。
「だって、本当の事なんだもん」
ネリネは、赤マント対して舌を出し、目の下を引っ張るような仕草をした。
「生意気な奴!ますます、唆るぜ!メスガキィ」
赤マントがネリネに突進しようとした為、ネリネはそこから逃げようとする。
だが、隣にはアジュガがいた事に気づいて、ネリネは庇うように覆い被さる。
「ネリネちゃん?」
赤マントがぶつかる寸前、不思議な光のようなモノに包まれた。
赤マントはそれにぶつかり、盛大に後ろに倒れる。
「ちっ!……座敷童子の力か」
倒れた赤マントはゆっくりと立ち上がり、土埃を落とした。
「……アジュガ、あなた本当に?」
ネリネはアジュガの方を見る。アジュガは俯き、胸元をぎゅっと掴む。
「あの私……」
「心配しないで、友達でしょ?」
俯いたアジュガに向かい、ウィンクをして見せるネリネ。
「丁度いいや。座敷童子の力も吸収してやるっ!」
「そんな事させない!アジュガ、隠れて!」
ネリネは髪をまるで鎌の様に変化させた。アジュガは慌ててソファの後ろに隠れる。
「もう容赦しねえよ」
マントの中から、ナイフを取り出してネリネに突き出した。
そして、ネリネの元に走って来る。ネリネも負けじと鎌を前に出し、ナイフを受け止める。
「……メスガキっ!お前の精力寄越せ!」
「嫌よ!変態っ!」
必死で抵抗するネリネだが、赤マントの力は強く押され気味だ。
「ほらっ、ほらっ!ほーらっ!」
壁際に追い詰めるように、赤マントは力を込める。それでも、抵抗するネリネに舌打ちをして、空いてる方の手で小さなナイフを投げつける。ナイフは、ネリネの腕に刺さった。
「痛っ!」
ネリネは怯み、力が抜ける。チャンスとばかりに赤マントは飛び上がる。
「貰ったあ!」
「……蓑火」
碧色の炎が、赤マントを取り囲み、一気に炎に包まれる。
「くそ!今日はやたら邪魔が入りやがる」
自分に着いた炎を振り払い、赤マントは炎が飛んできた方向を見た。
振り向いた先には、2人の男女がいた。
「あ?……ここは根暗男とばばあが来る場所じゃねぇ!」
「威勢のいいやつだな」
「ちょっと待って!」
一触即発の2者をなずなが制止する。
「ばばあって私の事?」
赤マントはなずなの質問に頷く。
「いや、ぺんぺん。今そこは……」
「私、女子高生だよ?え……もしかして、老けて見えてる?」
なずなは、蛍に確認するようにじっと見つめる。
「大丈夫だからぺんぺん」
「うるせー!どう考えても年増だろうが!」
なずなは顔を蒼白させてたと同時に、すぐに顔を紅潮させた。そして、蛍に叫ぶ。
「蛍くんっ!この人成敗して!」
「え……?う、うん。そのつもりだよ」
蛍はジャケットから警棒を取りだし、鞭へと変える。そして、床を打つ。
「怪人赤マント!……さあ、懲罰の時間だ!」
「ちっ……!誰だが、知らねぇがやってやるぜ」
赤マントは、ナイフを持って蛍に振り落とす。蛍は、なずなを庇うように避ける。
「ぺんぺん、今のうちにネリネの方へ」
蛍は、なずなを促した。なずなもネリネの方へ走って行く。
「ネリネちゃんっ!大丈夫?」
なずなは腰を抜かしたままのネリネを立ち上がらせる。
「あ、ありがとう。私は平気……それより……」
ネリネは呆然としているアジュガを見た。
「お友達?あなたも大丈夫?」
なずなは、アジュガの存在に気づき、安否を確認しする。アジュガはこくりと頷く。
「オラァ!」
雄叫びをあげ、赤マントは蛍にナイフを振り落としていた。蛍はその度に身をかわし、ナイフを避けていく。
(拉致があかない。それに、こいつ以外に妖気があるな……あれ……か)
蛍は、アジュガの方を確認する。
「今日の俺は、イライラしてんだよ!お前といい、座敷童子といい、邪魔ばかりしやがって!」
(……座敷童子)
座敷童子。家に住み着くという妖怪。本来は住み着いている家を反映させる福の神のような存在で、あまり野外で見かける事はない。
それにあんなにはっきり姿を見せることも稀である。
蛍はキリがないと、隙を見て赤マントの手首を蹴り、ナイフを落とした。
「さあ、これでお前の得物はない!」
「掛かったな!」
赤マントはマントを翻す。すると、十本ほどのナイフが蛍に襲いかかる。
「兄様危ない!」
ネリネは叫ぶと髪を伸ばし、その髪でナイフを掴む。
「ちぃっ!邪魔しやがって」
ネリネはナイフから髪を離し、ナイフはカランという音を立てた。
「2対1だ。お前に勝ち目は無っ……くっ」
蛍は腹を抱え蹲る。床には血溜まりを作っていた。
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