蛍地獄奇譚

玉楼二千佳

文字の大きさ
上 下
103 / 109
対決、酒呑童子編

105 店の秘密

しおりを挟む




  店内も外装と同じくピンクと紫の壁だった。
 店の棚や机には、可愛い人形、おもちゃ、雑貨なんかが並べられている。更にポールに衣服。それら全てに、値札が貼られていいた。

「可愛い……。あれ……」

 ネリネは、机に置いてある人形を見つける。どこかで見た事があるものだ。

「どうしたの?」
「うん。ちょっとこれ……あっ」

 ネリネは鞄の中を探ろうとした。

「お嬢さん」

 唐突に後ろから声が聞こえて、2人はビクッと振り返る。

「やあ、びっくりさせちまったな。オイラはこの店のオーナーだよ」

 2人の後ろにいたのは、赤いタキシードとマント姿の男だった。

「そうなんだ」

 ネリネは、後ろに隠れてしまったアジュガをちらりと見る。

「ねえねえ、さっきこのお人形さん見てなかった?」

 赤いマントの男は、さっきの人形を指さした。

「あ!そのお人形なんだけど、それ地獄でしかう……」

 口を押えて、ネリネは首を振る。

「どこで……?」

 さっきまで普通の顔していた筈の男の顔は、まるで嗤うお面を被っているようだった。

「ええっと……」
「あはは。見間違えじゃないかな?これは輸入品だよ。日本じゃほとんど見かけないさ」

 さっきまでお面だった顔は、元の人間の顔に戻る。

「さあて、他に欲しいものはあるかい?」

 2人は店の中をぐるりと見渡す。

「……しかし、何で人でないのが混じってんだよ」

 人でない……そう言われてネリネは肩をふるわす。まさか、自分が閻魔大王の娘だと悟られた?

 すると、目の前にいる男は人間では無い?

「ねえ、このお店は……」

 赤いマントの男は、質問をするネリネを無視をして、アジュガをじっと見て言った。

「おい。お前、ここはオイラの縄張りだ。何しにきやがった?」

 凄まれたアジュガは、今にも泣き出しそうな顔になり、ネリネの後ろにサッと隠れてしまう。

「ちょっと!あなた、この子を脅す気?」

「……ああ。めんどくせぇな。いいや、上玉が来たんだ。こうなりゃ、二人とも」

 男が大きくマントを広げると、二人はその中に包まれて行った。

 (こいつ……?!助けて!兄様)


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 逢魔が時。まだ17時だというのに、辺りはすっかり暗い。

「もうすかっり夜みたいね」

 蛍の隣で歩くなずなは、そう話しかけた。

「ああ」

 なずなと歩くのは嬉しいはずなのに、蛍は浮かない顔だ。何故ならば、先程から妙な気配がする。

 遠回りをしているので、いつもと違う道だからなのか落ち着かない。まるで、何かが自分を探しているようだった。
 蛍はキョロキョロ見渡していると、不思議な看板を見つける。

「ねえ、蛍くん。私、実は話したい事が……」
「ぺんぺん、ちょっと寄り道していいかな?」

 そう蛍が指さした店は、意外な店だった。

「え?あんな店、この辺りにあったかしら……?」

 小中学生が入りそうな店だなとなずなは思った。

「蛍くん、ああいう店……あ、ネリネちゃんにお土産買うの?」
「いや、まあそんな所だな」

 蛍が足早にその店に入って行く。

「ま、待ってよ」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……わあ、可愛いわね」

 確かに店の商品は、可愛いもので溢れているが、なずなにはデザインが可愛すぎた。
 店の外観と同じく、これも小中学生向けという感じ。

「ネリネちゃんに何か買うの?だったら、こっちの人形……」
「それに触るな!」

 蛍が急に大声を出すので、なずなはビックリして胸を抑える。

「ぺんぺん、すぐに出ろ!……来る!」
「え、ええ?」

 なずなは店の出口に急ごうとするが、遅かったようだ。

「へ……。久しぶりじゃねぇか!小娘、閻魔のガキ!」

 店のど真ん中に現れたのは……。

鬼八きはち!ぺんぺんに近寄るな!」

「ああ。今回の目的は小娘じゃねぇから安心しろよ」

 蛍はその言葉を信じられなかったが、それでも目的は違うと感じた。

「ならば、何故ここにいる?」
「へっ。今回はただの客人だ……でなきゃ、こんな趣味の悪い店に来るかよ」

 そういいながら、鬼八は肩をグリグリ回している。

「どちらにせよ、僕を呼んでいるのはお前か?」

 蛍は鬼八を睨みつける。

「あ?何の話だ?まあいい。百鬼夜行はもうすぐ起こる」

「まさか……」

 百鬼夜行……。それは、夜人間が寝静まった頃に妖怪達が列をなし、騒ぎを起こす。
 妖怪達には単に祭りのようなものだったが、中には酷い悪行を起こすものもいた。


 しかし、ある時からそれが怒なれなくなった。
 それはとある大妖怪が人間との戦を起こそうと策略し、それに気づいた閻魔大王が禁止してしまったのだ。

 それ以降、閻魔手形がなければ妖怪達は下界することが出来なくなる。

だが、今鬼八の口からそれが出た。

「百鬼夜行って……」
「……知りてぇか?小娘?そうだよな。きっかけはお前なんだからよ」

そう言って、鬼八は大笑いを始める。

「下らない事を……。ぺんぺん、帰ろう」

蛍はなずなを促そうとするが、鬼八に静止される。

「待てよ。よく見た方がいいぜ?多分、呼んだのはてめぇの妹だ。左目で見てみろ」

蛍は舌打ちをして、左側の髪をあげる。

すると、蛍の脳内には捕まっているネリネの姿が……。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...