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二学期地獄編
84 悪鬼
しおりを挟む「せーのっ!」
みのりが箒でねずみを仰ぐと、ガラムが大きな袋を持ってまちかまえる。
この袋は、文化祭で使う道具が入っていたものでかなり大きかった。
なずなと桃もそれにならい、ねずみを追い込んでは袋に入れていく。
案外、頑丈にできており、袋は簡単に破れない。急いで、E組の教室へ運ぶ。
その間に、教師が生徒と家族達を誘導し、外へ出ていく。
「ご苦労さん!」
教室には、翔一が待ち構えており、なずな達に手を振っていた。
「さて……こいつらを地獄に連れていく」
「大丈夫なの?閻魔様、怒らない?」
なずなが心配そうに、袋を見ていた。
「ん?こいつらは、元々地獄の生き物だよ。多分、あの化け物が呼び寄せたんだろ?」
確かにねずみにしては凶暴すぎる。
「さて、なずなちゃん達。一旦、教室から出ろよ……大掛かりな術だ」
なずな達が、教室から出るのを確認すると翔一は術をかけ始めた。
「くっ……。さっき術をつかったからな」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
校舎にはもうなずな達以外は残っていないだろう。
外から怒号が聞こえていたが、校舎は静まり返っている。
それにしても、何故校庭に集まっているのだろう?
なずなは不思議に思っていた。
「大丈夫なの?あの人……?」
みのりに翔一が妖怪だと伝えても、いまいち理解していない様子だ。
なずなだって、最初は蛍が人間じゃないのを理解するまで時間が掛かった。
だけど、今は目の前に起きている事全て受け止めれる。
「大丈夫よ。翔一さんを信じてる」
それはなずなの心からの言葉だ。みのりは少し安心した。
「上で何が起こってるのさ?妖怪がいるのは分かるけど」
「頼豪って言うねずみの妖怪が暴れているみたい ……あ、あれ?」
なずなはふと誰かが走って来たのを見た。
経国だ。
「君たち!何をしている?」
「江間先生……?」
「……吉永君。頼豪め……蛍はどうなっている?」
なずなは経国に経緯を軽く説明する。
「そうか。しょうけらが、教室にいるのだな!」
そう言って、経国は教室の扉を開ける。
「お、おい!開けんなって……つ、経国様?」
「しょうけら私も手伝うよ……破っ」
経国が境界面を開いていく。
「……や、やべぇ!おい!お前ら扉閉めろ!」
なずな達は慌てて、教室の扉を締める。
「ふっ。これだけの化けネズミどもを地獄に贈れば、父上も怒るだろうな」
「え?!マジ?!それやばくねぇですか?」
顔が青白く染まる翔一を見て、経国はくすりと笑い言った。
「なあに。その時は私が責任を取るよ」
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「待て!」
蛍は、階段から飛び上がりながら、頼豪を追いかける。
頼豪の足は早く、中々追いつかない。
あっという間に外に出た。
「人間?」
いつの間にか、人間達は校庭に集まっていた。
教師に詰め寄る者、我が子を探す親。疲れ果て、その場に座り込む者。泣き出して、友人同士で慰め合うもの。
何故か、学校から去っていく様子もなければ、校庭から出ようともしていない。
まるで牢獄に入れられたかのように皆、校庭に待機している。
それに、人間達は警察や助けを呼んでもいない。
「坊ちゃん。ちと、様子がおかしい」
蛍と並走していた三吉はそう言った。
「うん……」
「おいっ!あいつ、あそこに入ったぞ!」
又三郎は、頼豪が体育館に入って行くのを発見する。
「……行くぞ!」
体育館に近寄ると、違和感を感じた。多分、人間達が誰1人近寄ならないのはこの所為だろう。
これは人間避けの結界。殆どの人間が近寄れない。
もし、入れるとしても強い霊力を持った者か、招かれた者だけだ。
「坊ちゃん。頼豪はこの中でしょう。罠が仕掛けてあるやしません」
「確かに。でも、なんでわざわざ人間避けの結界なんて……ここに集めれば人間なんて、一網打尽だろ?」
蛍は首を捻るが、考える時間は無い。一気に扉を開けて、体育館に突入するが……様子がおかしい。
「な、何だ?これ」
目の前に広がるのはまるで、寺のような建物があったのだ。
「……様子を伺った方がよいでしょう」
三吉はそう言って、隙間から中の様子を伺った。
「……頼豪の奴、やっぱり寺院を」
「寺院?」
「ああ。その昔、頼豪は国のお偉いさんに寺院を建ててもらう約束を反故にされたんだ」
又三郎によると、頼豪は元々坊主で、主に男子が産まれるように祈祷を命じれた。
その時の褒美は自分の寺院を建てて貰う事だった。しかし、敵対する宗派の横槍により、叶えられる事はなかった。
これに怒った頼豪は、断食して祈祷師し、男児は呪われ、凄まじい怨念で悪鬼魔道に堕ちて死んでしまう。
そして、妖怪として復活したのだった。
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