34 / 109
夏休み編
33 不吉な予感
しおりを挟む
寺の狭い庭があり、その奥に崩れそうなお堂が立っている。
ここまで、近づいてようやく悪い瘴気に気付いた。
土帝は、周りを見渡し、悪霊がちらほら見えるのを確認する。しかし、祓われるのが嫌なのか、こちらには近付こうとしない。
多分、土帝は霊能力があり、陰陽師だと言うことにも気付いているのだろう。
だが、それより厄介なものがある。妖怪だ。妖怪は、悪霊達と違い、実態がある。
そして、能力があっても平気で襲ってくる輩がいる。
物理的攻撃は通用するものの致命傷を与える事は出来ず、札や霊術で封印するしかない。
土帝は、護身のため札を数枚いつでも持ち歩いている。陰陽師とは言え、いや陰陽師だからこそ、妖怪には狙われやすかった。
きっと邪魔者をすぐにでも排除したいのだろう。
今、土帝が感じている瘴気。間違いなく妖怪。そして、妖怪の中でも厄介な存在……"鬼”。
そして、この瘴気。誰かのモノによく似ている。
「田中蛍。お前の目的は一体なんだ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……誰か来たようだな」
お堂の中で鬼八がそう言った。
「おいっ!これを外せ!」
坂本は縄のような物で、手を後ろに縛られて床に転がされていた。
すぐ隣にはなずなも同じような格好で縛られている。
「うるせえな。てめえはついでだ。用があるのは、そこの小娘……小娘!起きろ!」
鬼八は、気を失っているなずなの髪を掴み、無理やりなずなを起こす。
「いっ……」
「おうおう。可哀想になあ……閻魔の倅と関係しちまったせいでこんな目にあっちまっあて」
鬼八は、下衆な笑みを浮かべなずなを見る。なずなは、何とか逃れようと藻掻くが、身体が思うように動けない。
それを見て、坂本は自分のした事を強く後悔する。そして、なずなを何とか助け出せないか頭を捻る。
「……さて、さっきからいる人間を何とかするか。来い!」
鬼八は、いったんなずなの髪を放し、今度は腕を引っ張る。なずなは、よろめきながら御堂を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
御堂から2つ声がする。一つは坂本、もう一つは聞いたことがない声だ。
間違いなくなずなの声ではない。誰かといるなどと坂本からは聞いていない。
やはりこの気配……。
土帝は、ポケットから札を取り出し、構える。
すると、御堂の扉が開くと巨体とそれに腕を引っ張られ縛られているなずなが出て来た。
「なずな!」
「宋ちゃん……」
なずなが力無くこちらを見ている。巨体は口を開いた。
「おいおい、俺は無視か?」
巨体は顔を歪ませ、土帝を見る。
「……貴様、鬼だな?」
「その通りだ。鬼八っていうんだ。この小娘の知り合いか?」
そう言ってなずなを前に出す。
「なずな!」
「宋ちゃん……助けて」
なずなの顔は恐怖で引き攣っていた。
「おい。小娘、てめえは蛍を呼び寄せる餌なんだ。他の奴に助けて貰っちゃ困るんだよ!!」
そう言って、鬼八はなずなの腕を強く握る。
「あぁ!」
「やめろっ!」
鬼八は、舌打ちをしてなずなの腕を離すと、なずなはよろめいてその場に座り込むように尻もちをつく。
「うるせえな!とりあえずてめえは血祭りにあげてやる」
鬼八は、御堂から離れ、土帝に殴りかかろうとする。瞬時に土帝は、腕をクロスさせ防御体制に入る。
鬼八の拳が土帝に当たる瞬間だった。
「蓑火」
緑の炎の玉が鬼八の拳に当たる。
「あっちい!!」
鬼八は慌てて、炎を振り払う。
「……鬼八。久しぶりだな……と言ってもあまり会いたくなかったけど」
「ああ。てめぇか、蛍。相変わらず憎たらしい顔してやがる」
睨んでいる蛍をにやにやと顎を摩り、鬼八は見下ろす。
「田中蛍!こいつは知り合いのか?」
「だから、フルネーム呼び止めろよ。知り合いも何もこっちは知りたいとも思ってないんだ」
蛍は指を指し宣言する。
「ぺんぺんを返してもらうぞ!」
「あ?ああ、あの小娘か……」
なずなが今にも泣きそうな顔で蛍達を見ている。
「ちょっと乳くせェが、ありゃいい女になるぜ……蓮華みてぇにな!」
「母さんの名前を呼ぶな!!」
蛍がそう怒鳴ると、土帝は驚いたように蛍を見る。ただ、大声に驚いたと言うより、そんな声を出すのかという感じであった。
それと同時に不吉な予感と恐怖を覚える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭が痛い……蛍は、鬼八が母の名を口に出した時からそう感じた。
頭だけでなく、吐き気、眩暈、イライラ。それから、動悸。周りのものを全て破壊したい気分だった。
「自分で殺しておいて、母ちゃんが恋しいか?」
鬼八は、蛍の胸ぐらを掴む。
「あの小娘は蓮華の代わりだ。蓮華に出来なかった事、してやるよ」
そう言われた瞬間、蛍の額から角のようなモノが生え始める。
蛍は鬼八の腹を膝で蹴り上げた。
すると、鬼八は腹を抑える。
「懲罰が必要なようだな!!」
ここまで、近づいてようやく悪い瘴気に気付いた。
土帝は、周りを見渡し、悪霊がちらほら見えるのを確認する。しかし、祓われるのが嫌なのか、こちらには近付こうとしない。
多分、土帝は霊能力があり、陰陽師だと言うことにも気付いているのだろう。
だが、それより厄介なものがある。妖怪だ。妖怪は、悪霊達と違い、実態がある。
そして、能力があっても平気で襲ってくる輩がいる。
物理的攻撃は通用するものの致命傷を与える事は出来ず、札や霊術で封印するしかない。
土帝は、護身のため札を数枚いつでも持ち歩いている。陰陽師とは言え、いや陰陽師だからこそ、妖怪には狙われやすかった。
きっと邪魔者をすぐにでも排除したいのだろう。
今、土帝が感じている瘴気。間違いなく妖怪。そして、妖怪の中でも厄介な存在……"鬼”。
そして、この瘴気。誰かのモノによく似ている。
「田中蛍。お前の目的は一体なんだ?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……誰か来たようだな」
お堂の中で鬼八がそう言った。
「おいっ!これを外せ!」
坂本は縄のような物で、手を後ろに縛られて床に転がされていた。
すぐ隣にはなずなも同じような格好で縛られている。
「うるせえな。てめえはついでだ。用があるのは、そこの小娘……小娘!起きろ!」
鬼八は、気を失っているなずなの髪を掴み、無理やりなずなを起こす。
「いっ……」
「おうおう。可哀想になあ……閻魔の倅と関係しちまったせいでこんな目にあっちまっあて」
鬼八は、下衆な笑みを浮かべなずなを見る。なずなは、何とか逃れようと藻掻くが、身体が思うように動けない。
それを見て、坂本は自分のした事を強く後悔する。そして、なずなを何とか助け出せないか頭を捻る。
「……さて、さっきからいる人間を何とかするか。来い!」
鬼八は、いったんなずなの髪を放し、今度は腕を引っ張る。なずなは、よろめきながら御堂を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
御堂から2つ声がする。一つは坂本、もう一つは聞いたことがない声だ。
間違いなくなずなの声ではない。誰かといるなどと坂本からは聞いていない。
やはりこの気配……。
土帝は、ポケットから札を取り出し、構える。
すると、御堂の扉が開くと巨体とそれに腕を引っ張られ縛られているなずなが出て来た。
「なずな!」
「宋ちゃん……」
なずなが力無くこちらを見ている。巨体は口を開いた。
「おいおい、俺は無視か?」
巨体は顔を歪ませ、土帝を見る。
「……貴様、鬼だな?」
「その通りだ。鬼八っていうんだ。この小娘の知り合いか?」
そう言ってなずなを前に出す。
「なずな!」
「宋ちゃん……助けて」
なずなの顔は恐怖で引き攣っていた。
「おい。小娘、てめえは蛍を呼び寄せる餌なんだ。他の奴に助けて貰っちゃ困るんだよ!!」
そう言って、鬼八はなずなの腕を強く握る。
「あぁ!」
「やめろっ!」
鬼八は、舌打ちをしてなずなの腕を離すと、なずなはよろめいてその場に座り込むように尻もちをつく。
「うるせえな!とりあえずてめえは血祭りにあげてやる」
鬼八は、御堂から離れ、土帝に殴りかかろうとする。瞬時に土帝は、腕をクロスさせ防御体制に入る。
鬼八の拳が土帝に当たる瞬間だった。
「蓑火」
緑の炎の玉が鬼八の拳に当たる。
「あっちい!!」
鬼八は慌てて、炎を振り払う。
「……鬼八。久しぶりだな……と言ってもあまり会いたくなかったけど」
「ああ。てめぇか、蛍。相変わらず憎たらしい顔してやがる」
睨んでいる蛍をにやにやと顎を摩り、鬼八は見下ろす。
「田中蛍!こいつは知り合いのか?」
「だから、フルネーム呼び止めろよ。知り合いも何もこっちは知りたいとも思ってないんだ」
蛍は指を指し宣言する。
「ぺんぺんを返してもらうぞ!」
「あ?ああ、あの小娘か……」
なずなが今にも泣きそうな顔で蛍達を見ている。
「ちょっと乳くせェが、ありゃいい女になるぜ……蓮華みてぇにな!」
「母さんの名前を呼ぶな!!」
蛍がそう怒鳴ると、土帝は驚いたように蛍を見る。ただ、大声に驚いたと言うより、そんな声を出すのかという感じであった。
それと同時に不吉な予感と恐怖を覚える。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
頭が痛い……蛍は、鬼八が母の名を口に出した時からそう感じた。
頭だけでなく、吐き気、眩暈、イライラ。それから、動悸。周りのものを全て破壊したい気分だった。
「自分で殺しておいて、母ちゃんが恋しいか?」
鬼八は、蛍の胸ぐらを掴む。
「あの小娘は蓮華の代わりだ。蓮華に出来なかった事、してやるよ」
そう言われた瞬間、蛍の額から角のようなモノが生え始める。
蛍は鬼八の腹を膝で蹴り上げた。
すると、鬼八は腹を抑える。
「懲罰が必要なようだな!!」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる