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夏休み編
29ショッピングモールの乱
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「でも、意外ね」
ここは、大型ショッピングモール。雑貨や服飾、本屋や家電量販店などのテナントが立ち並ぶ。
スーパーも併設されていて、店内は家族連れやカップル、グループなどで賑わっていた。
二人は、なずなが好きな雑貨屋に来ていた。
「何が?」
「宗ちゃんがモールに来るなんて……」
「そんなにおかしいか?」
土帝は、苦笑いをしてくすくす笑うなずなを見た。
「だって、宗ちゃんのおば様、高級デパートに行くイメージだし、服だってブランド物ばかりだから」
「服はお袋の趣味だし、俺はあんまり興味が無いからな。それに学生の身で、お小遣い制だからな。嫌だったか?」
「ううん。そんな事ないよ!」
なずなは首を振り、嬉しそうに笑う。
「……まあ、大学卒業して就職したら、毎日でも連れて行ってやる」
「そんなの宗ちゃんの彼女になる人に悪いよ」
「できるわけないだろう。そんなの」
そう言って、土帝はなずなの頭をそっと髪を梳かすように撫でる。
「え……。あ、このぬいぐるみ可愛い」
なずなは慌てて、商品のぬいぐるみを取る。
「あ、半額になっている」
そうは言ったものの、なずなはぬいぐるみを元の位置に戻した。
「買わないのか?」
「うーん。今回は妖怪の本が欲しいんだよね」
なずなが少し照れ臭そうに答えた。
「妖怪……」
土帝は、まさかと思ったが、これ以上詳しく聞きたくなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……人間ばっかりね!」
「当たり前だろ。人間界なんだから」
ショッピングモールに着くなり、梔子に文句を言われて少しむっとする蛍。
「それにしても、あの子彼氏いたんじゃない?」
「彼氏……?」
「一緒にいた男子、あのなずなって子の彼氏でしょ?」
「違う!付き合ってない!」
蛍は、顔を真っ赤にして否定する。梔子は、びっくりしたのか眼を見開く。
周りの人間達も、蛍の大声にびっくりしてジロジロ二人を見ていた。
「そんなに怒鳴らないでよ」
「いや……あの二人はそんな関係じゃない」
その後は、たわいもない会話が続いた。
すると、ポップな看板の雑貨屋を見つける。
「へえ。なんか色使いが面白いね!ちょっと入ってみようよ」
梔子が蛍の腕を引っ張り、雑貨屋の入り口前まで行く。
「おい!引っ張りるな!」
蛍は抗議したが、女の子の梔子を無理やり剝がす訳にもいかずそのままついてくる。
雑貨屋には、色とりどりのバックや小物、化粧品に至るまで女の子が楽しめそうなもので溢れかえっていた。
店内にはもちろん、同じ年くらいの少女もいたが、カップルもいる。その中には、その店に似つかわしくない大柄な男もいたが……。
レジの方から、カップルと思われる話し声が聞こえてくる。
「本当にいいの?」
「ああ。半額だしな。まあ、鬼のぬいぐるみなんて節分の時くらいしか売れないからだろう」
その二人の様子は、少し低い商品棚から顔を出せば様子を窺えた。普段なら興味もないが、声に聞き覚えがあり、もしかしてと覗いてしまった。
案の定、やっぱりなずなと土帝で、蛍は覗いてしまったことを強く後悔した。
蛍はバレないように、商品の品定めをしている振りをする。が、それでもやはりレジが気になる。
「宗ちゃん、ありがとう」
「別にいいさ。そんな大した金額じゃない」
やっぱり、いけ好かない……蛍はそう思った。
二人がレジを終える。なずなが、小さな紙袋を持ってこちらに来る。
蛍は、見つかりたくないと必死で顔を下げる。
「ねえ!蛍、これ可愛くない?」
すると、梔子が蛍の肩を叩き、大きな声でそう言った。
「……あれ?蛍くん達?」
なずながこちらに気付いてしまったようだ。蛍は顔をしかめつつ、ゆっくり顔をあげる。
顔を上げた先では、土帝が嘲笑うかのようにこちらを見ている。
その顔は、まるで勝ち誇ったかのように蛍には見えたのだ。
「……あなた達も来てたの?」
梔子は、蛍の半袖の裾を優しく引っ張り、上目遣いで見た。
「ねえ、これ可愛いよ。色違いもあるし……」
梔子が見せたのは、ピンクと水色の猫のキーホルダーだ。
「へえ。お揃いで買ってあげたらどうだ?」
土帝に言われて、蛍はなずなが大事そうに抱えた紙袋を見た。
「分かった。梔子、それ」
「いいの?嬉しい」
梔子は2つのキーホルダーを蛍に渡す。
レジを終えると、なずなと土帝はいなかった。梔子に、二人のことを聞く蛍。
「え?ランチに行くって!それよりも……」
梔子が蛍が持っている紙袋を指さした。蛍は、紙袋を渡すと、梔子はさっそく中を開けた。そして、水色の方を蛍に差し出す。
「はい。これ」
「え?2つ欲しかったんじゃないの!?」
「何言ってんの?お揃いだよ」
「いらない。いらないから」
こうも強く言われてしまえば、さすがの梔子も黙って引き下がるしかなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なずな達は、ランチのため、イタリアンレストランまで来ていた。
この店は、パンが食べ放題になっていて、さらに平日ランチは格安で提供されている。肉料理か魚料理から選べ、さらにドルチェが一つついてくる。
ウェイターが席を案内してくれて、なずな達は席に着く。
「パンの香りがいいな……。なずな。料理は決まったか?」
「…………」
「なずな?」
なずなは、土帝に呼ばれ、はっとする。
「あ……ごめんなさい」
「……魚料理、お前が好きな鮭のムニエルあるぞ?」
「……本当ね。ドルチェは桃タルトがいいな」
土帝がウェイターを呼び、注文をする。蛍くんの事嫌いなの?」
土帝が首を振る。
「……なんでそう思うんだ?」
「ううん。違うならいいの」
「そんな事より、パン選ばなくていいのか?俺の分も頼む」
なずなが席を立ち上がり、パンを選びに行く。土帝はズボンのポケットからスマホを取り出して操作する。
パンは、バイキング形式でたくさんの種類がある。パンは1口サイズでたくさんの種類があり、なずなは数種類を選んで席に着く。
「美味かったな」
料理を食べ終わり、土帝はナプキンで口を拭う。
「うん。桃、美味しかった」
「じゃあ、先会計だけ済ませてくるよ。手洗いしたいだろ?」
「あ、うん。後でお金渡すね」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なずなは、用を済ませ、髪を整えてからトイレから出る。
トイレの前では、待ち人の為に簡素なベンチが置いてある。
ベンチ付近には、フードを被った大柄な男が一人いる。
暑いのに、パーカーを着ている事になずなは不審に思った。
なずなは首を傾げながら、そのまま通り過ぎようとする。
ふと、背中に何かが当たる。
「騒ぐな。黙って着いてこい」
声は、何故か聞き覚えがあったが、それよりも恐怖の方が勝った。
ここは、大型ショッピングモール。雑貨や服飾、本屋や家電量販店などのテナントが立ち並ぶ。
スーパーも併設されていて、店内は家族連れやカップル、グループなどで賑わっていた。
二人は、なずなが好きな雑貨屋に来ていた。
「何が?」
「宗ちゃんがモールに来るなんて……」
「そんなにおかしいか?」
土帝は、苦笑いをしてくすくす笑うなずなを見た。
「だって、宗ちゃんのおば様、高級デパートに行くイメージだし、服だってブランド物ばかりだから」
「服はお袋の趣味だし、俺はあんまり興味が無いからな。それに学生の身で、お小遣い制だからな。嫌だったか?」
「ううん。そんな事ないよ!」
なずなは首を振り、嬉しそうに笑う。
「……まあ、大学卒業して就職したら、毎日でも連れて行ってやる」
「そんなの宗ちゃんの彼女になる人に悪いよ」
「できるわけないだろう。そんなの」
そう言って、土帝はなずなの頭をそっと髪を梳かすように撫でる。
「え……。あ、このぬいぐるみ可愛い」
なずなは慌てて、商品のぬいぐるみを取る。
「あ、半額になっている」
そうは言ったものの、なずなはぬいぐるみを元の位置に戻した。
「買わないのか?」
「うーん。今回は妖怪の本が欲しいんだよね」
なずなが少し照れ臭そうに答えた。
「妖怪……」
土帝は、まさかと思ったが、これ以上詳しく聞きたくなかった。
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「……人間ばっかりね!」
「当たり前だろ。人間界なんだから」
ショッピングモールに着くなり、梔子に文句を言われて少しむっとする蛍。
「それにしても、あの子彼氏いたんじゃない?」
「彼氏……?」
「一緒にいた男子、あのなずなって子の彼氏でしょ?」
「違う!付き合ってない!」
蛍は、顔を真っ赤にして否定する。梔子は、びっくりしたのか眼を見開く。
周りの人間達も、蛍の大声にびっくりしてジロジロ二人を見ていた。
「そんなに怒鳴らないでよ」
「いや……あの二人はそんな関係じゃない」
その後は、たわいもない会話が続いた。
すると、ポップな看板の雑貨屋を見つける。
「へえ。なんか色使いが面白いね!ちょっと入ってみようよ」
梔子が蛍の腕を引っ張り、雑貨屋の入り口前まで行く。
「おい!引っ張りるな!」
蛍は抗議したが、女の子の梔子を無理やり剝がす訳にもいかずそのままついてくる。
雑貨屋には、色とりどりのバックや小物、化粧品に至るまで女の子が楽しめそうなもので溢れかえっていた。
店内にはもちろん、同じ年くらいの少女もいたが、カップルもいる。その中には、その店に似つかわしくない大柄な男もいたが……。
レジの方から、カップルと思われる話し声が聞こえてくる。
「本当にいいの?」
「ああ。半額だしな。まあ、鬼のぬいぐるみなんて節分の時くらいしか売れないからだろう」
その二人の様子は、少し低い商品棚から顔を出せば様子を窺えた。普段なら興味もないが、声に聞き覚えがあり、もしかしてと覗いてしまった。
案の定、やっぱりなずなと土帝で、蛍は覗いてしまったことを強く後悔した。
蛍はバレないように、商品の品定めをしている振りをする。が、それでもやはりレジが気になる。
「宗ちゃん、ありがとう」
「別にいいさ。そんな大した金額じゃない」
やっぱり、いけ好かない……蛍はそう思った。
二人がレジを終える。なずなが、小さな紙袋を持ってこちらに来る。
蛍は、見つかりたくないと必死で顔を下げる。
「ねえ!蛍、これ可愛くない?」
すると、梔子が蛍の肩を叩き、大きな声でそう言った。
「……あれ?蛍くん達?」
なずながこちらに気付いてしまったようだ。蛍は顔をしかめつつ、ゆっくり顔をあげる。
顔を上げた先では、土帝が嘲笑うかのようにこちらを見ている。
その顔は、まるで勝ち誇ったかのように蛍には見えたのだ。
「……あなた達も来てたの?」
梔子は、蛍の半袖の裾を優しく引っ張り、上目遣いで見た。
「ねえ、これ可愛いよ。色違いもあるし……」
梔子が見せたのは、ピンクと水色の猫のキーホルダーだ。
「へえ。お揃いで買ってあげたらどうだ?」
土帝に言われて、蛍はなずなが大事そうに抱えた紙袋を見た。
「分かった。梔子、それ」
「いいの?嬉しい」
梔子は2つのキーホルダーを蛍に渡す。
レジを終えると、なずなと土帝はいなかった。梔子に、二人のことを聞く蛍。
「え?ランチに行くって!それよりも……」
梔子が蛍が持っている紙袋を指さした。蛍は、紙袋を渡すと、梔子はさっそく中を開けた。そして、水色の方を蛍に差し出す。
「はい。これ」
「え?2つ欲しかったんじゃないの!?」
「何言ってんの?お揃いだよ」
「いらない。いらないから」
こうも強く言われてしまえば、さすがの梔子も黙って引き下がるしかなかった。
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なずな達は、ランチのため、イタリアンレストランまで来ていた。
この店は、パンが食べ放題になっていて、さらに平日ランチは格安で提供されている。肉料理か魚料理から選べ、さらにドルチェが一つついてくる。
ウェイターが席を案内してくれて、なずな達は席に着く。
「パンの香りがいいな……。なずな。料理は決まったか?」
「…………」
「なずな?」
なずなは、土帝に呼ばれ、はっとする。
「あ……ごめんなさい」
「……魚料理、お前が好きな鮭のムニエルあるぞ?」
「……本当ね。ドルチェは桃タルトがいいな」
土帝がウェイターを呼び、注文をする。蛍くんの事嫌いなの?」
土帝が首を振る。
「……なんでそう思うんだ?」
「ううん。違うならいいの」
「そんな事より、パン選ばなくていいのか?俺の分も頼む」
なずなが席を立ち上がり、パンを選びに行く。土帝はズボンのポケットからスマホを取り出して操作する。
パンは、バイキング形式でたくさんの種類がある。パンは1口サイズでたくさんの種類があり、なずなは数種類を選んで席に着く。
「美味かったな」
料理を食べ終わり、土帝はナプキンで口を拭う。
「うん。桃、美味しかった」
「じゃあ、先会計だけ済ませてくるよ。手洗いしたいだろ?」
「あ、うん。後でお金渡すね」
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なずなは、用を済ませ、髪を整えてからトイレから出る。
トイレの前では、待ち人の為に簡素なベンチが置いてある。
ベンチ付近には、フードを被った大柄な男が一人いる。
暑いのに、パーカーを着ている事になずなは不審に思った。
なずなは首を傾げながら、そのまま通り過ぎようとする。
ふと、背中に何かが当たる。
「騒ぐな。黙って着いてこい」
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