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学園生活篇
18遊び
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先程から仕切りになずなが時計を見る。時計は十七時を過ぎた当たり。
「どうしたの?」
何だか、そわそわしているので蛍が気にしていた。
「ううん。弘海が帰って来ないから…」
どうやら、弟が帰宅しない事が不安らしい。確かに太陽も沈みかけている。
でも、何故そんなに心配なんだろう?
蛍には、兄弟を心配するなずなの気持ちが分からなかった……。
乃亜は目が覚めると、花畑にいた。確か、お坊さんに声を掛けられて、宿を貸してと言われて…。そこから覚えていない。
辺りは柔らかい光が差し込んでいて、暑くも寒くもない。
「どこ?」
周りの景色とは裏腹に、乃亜の頭の中は不安でいっぱいになる。乃亜は立ち上がり、歩き始めた。ここはどこだろう…家に帰りたい。歩けば、いつかたどり着くだろうか?
ふと、少し歩いた先に公園のような遊園地のような場所にたどり着く。
「ようこそ!いっぱい遊ぶんだよ」
そこには、袈裟を着たあの時のお坊さんがいたのだった…。
「…じゅあ、まずは俺がキーパーな」
弘海達は、交代でゴールの練習をする遊びを始めた。
「君からいいよ」
「いいの?」
弘海はまず、ネリネにゴールして貰う事にした。
(女の子だしな…ゴールは無理だろうな)
真人は弘海より少し背が高い。それに、サッカー以外で空手をしているので、体格もいい方だ。だから、女の子の蹴ったボールなんかすぐに受け止めてしまうだろうと弘海は思っていた。
「じゃあ、行くよ?」
ネリネが軽く言って、ボールを蹴り上げる。ボールは目に見えないスピードで飛んでいき、真人が動くは暇なく石壁にぶつかって、石壁の一部が砕ける。
真人も弘海も口を開いたまま、塞ぐ事が出来なかった。
「…す、すげぇ…」
まず、口を開いたのは弘海だった。すると、それに同調するように真人も感嘆の声を漏らす。
「えへへ!次は弘海の番だよ!」
「いいよ。でも、僕はテクニック重視だからね!」
石壁は砕けなくても、ゴールは絶対決める。そう心に決めて、弘海はボールを蹴り上げた。
確かにスピードはないが、それでもボールは真人を避けて、石壁にぶつかる。
「やったあ!じゃあ、真人」
「え?俺はいいよ。フォローのが得意だし…それより、他の遊びしようぜ?」
真人の提案により、次は遊具で遊び出した。
その時にはもう、太陽は沈みかけていたのだ。そして、一人の坊主がゆっくりと三人に近づいたのだった。
「やっぱり遅いわね」
あれから、30分以上たった。確かに辺りは暗くなりかけている。本来なら、子供は家に帰る時間帯である。
「なんで、そんなに心配なの?」
「…それはまだ幼いし、それに」
なずなが言うには、この近所で誘拐事件が起きたらしい。女の子が攫われたが、未だ見つからない。しかも、犯人から脅迫もなく、目撃者もいないらしいのだ。
なずなが話終わると、電話が鳴り出した。
「あ、ごめんね。ちょっと出る」
そう言って、リビングにある電話を取るなずな。
「もしもし、吉永です。…真人君のお母さん…うちもまだ…私、探してきます」
なずなは電話を切ると、蛍に話しかける。
「ごめんね。蛍くん、私弟を探しに行くわ」
「…そう。僕もいくよ」
蛍は何だか嫌な予感がした。大体、自分の予感は当たる。
今回は、妖怪が関わってなければいいが。
ネリネは楽しかった。地獄じゃ自分と同じくらいの子と遊ぶ機会が少ないし、それに瑠璃や他の鬼達の監視付き。少しでも、危ないと判断されれば、即止められる。
だけど、監視役が今日はいない。どんなに高い所に登っても注意されないのだ。
ジャングルジムから、見下ろした景色は最高だった。
「君たち」
ふと、ジャングルジムの上で三人が話し込んでいると坊主のような男が一番下にいた。
「あなた、誰?」
「…宿を貸してくれないか?」
ネリネは、すぐに妖怪だと気づいた。しかし、この時はまだこの妖怪の危険性に気づいていなかった。
「宿?家に泊めろって事?」
弘海と真人は、顔を見合わせる。
「いや、軒下でいいんだよ。寝かせてくれればいい」
「じゃあ、俺んち…」
弘海が言いかけた時だった…。
蛍となずなは、なずなのうちの近くの公園に来た。公園は静まり帰っていて、弘海を見つけるのは簡単であった。
しかし、様子が可笑しい。弘海の他に、二人の子供。一人は真人、一人は見た事がない少女。
「真人君と女の子は…」
「なんであいつが居るんだよ!」
イライラしたように蛍が言った。
「知ってるの?」
「…ああ。妹だ」
なずなには、衝撃的だった。だって、蛍は一度たりとも兄弟の話をした事がない。
「え…じゃあ、あのお坊さんも知り合い?」
指をさした先には袈裟を着た坊主が一人…それも妖怪だ。
二人は急いで、三人のいる方へ駆け出す。
「じゃあ、俺んち…」
坊主が、弘海を見上げる。
「ありがとう。坊っちゃん」
「待て!そこまでだ!」
三人と坊主が振り向いた先には、蛍となずながいた。
「おや?」
「こいつを泊めちゃダメだ」
蛍にそう言われて、坊主は大きな口でにやりと不気味に笑うと、数珠を取り出す。
「何者か知らんが、人でない事では確かだな…だが、もう遅い」
坊主がお経のようなものを唱えると、ブラックホールのようなものが空中に浮かび上がる。
「何をする気だ⁈」
「こうするのさ!」
坊主が手を動かすと、その中から強風が吹き荒れ始めた。風は大の男が立っていられないような強風で蛍も砂が目に入らないように凌ぐのがやっとの事だ。
そんな強風の中、女子供であるなずなや子供達も飛ばされそうな勢いだ。子供達は、ジャングルジムにしがみつき、なずなは身体を丸めて風を凌ぐ。ジャングルジムにしがみついた三人はまず、弘海が吸い込まれ、真人も…最後に残ったネリネもブラックホールのようなものに吸い込まれていった。
「やれやれ、前はこんな乱暴しなくても連れていけたのな…」
坊主は自らその中に飛び込んでいくと、ブラックホールは影も形も無くなり、風も吹き止んでいた。
「弘海!」
公園中になずなの悲痛な叫びが響いたが、それが届く事はなかった。
「どうしたの?」
何だか、そわそわしているので蛍が気にしていた。
「ううん。弘海が帰って来ないから…」
どうやら、弟が帰宅しない事が不安らしい。確かに太陽も沈みかけている。
でも、何故そんなに心配なんだろう?
蛍には、兄弟を心配するなずなの気持ちが分からなかった……。
乃亜は目が覚めると、花畑にいた。確か、お坊さんに声を掛けられて、宿を貸してと言われて…。そこから覚えていない。
辺りは柔らかい光が差し込んでいて、暑くも寒くもない。
「どこ?」
周りの景色とは裏腹に、乃亜の頭の中は不安でいっぱいになる。乃亜は立ち上がり、歩き始めた。ここはどこだろう…家に帰りたい。歩けば、いつかたどり着くだろうか?
ふと、少し歩いた先に公園のような遊園地のような場所にたどり着く。
「ようこそ!いっぱい遊ぶんだよ」
そこには、袈裟を着たあの時のお坊さんがいたのだった…。
「…じゅあ、まずは俺がキーパーな」
弘海達は、交代でゴールの練習をする遊びを始めた。
「君からいいよ」
「いいの?」
弘海はまず、ネリネにゴールして貰う事にした。
(女の子だしな…ゴールは無理だろうな)
真人は弘海より少し背が高い。それに、サッカー以外で空手をしているので、体格もいい方だ。だから、女の子の蹴ったボールなんかすぐに受け止めてしまうだろうと弘海は思っていた。
「じゃあ、行くよ?」
ネリネが軽く言って、ボールを蹴り上げる。ボールは目に見えないスピードで飛んでいき、真人が動くは暇なく石壁にぶつかって、石壁の一部が砕ける。
真人も弘海も口を開いたまま、塞ぐ事が出来なかった。
「…す、すげぇ…」
まず、口を開いたのは弘海だった。すると、それに同調するように真人も感嘆の声を漏らす。
「えへへ!次は弘海の番だよ!」
「いいよ。でも、僕はテクニック重視だからね!」
石壁は砕けなくても、ゴールは絶対決める。そう心に決めて、弘海はボールを蹴り上げた。
確かにスピードはないが、それでもボールは真人を避けて、石壁にぶつかる。
「やったあ!じゃあ、真人」
「え?俺はいいよ。フォローのが得意だし…それより、他の遊びしようぜ?」
真人の提案により、次は遊具で遊び出した。
その時にはもう、太陽は沈みかけていたのだ。そして、一人の坊主がゆっくりと三人に近づいたのだった。
「やっぱり遅いわね」
あれから、30分以上たった。確かに辺りは暗くなりかけている。本来なら、子供は家に帰る時間帯である。
「なんで、そんなに心配なの?」
「…それはまだ幼いし、それに」
なずなが言うには、この近所で誘拐事件が起きたらしい。女の子が攫われたが、未だ見つからない。しかも、犯人から脅迫もなく、目撃者もいないらしいのだ。
なずなが話終わると、電話が鳴り出した。
「あ、ごめんね。ちょっと出る」
そう言って、リビングにある電話を取るなずな。
「もしもし、吉永です。…真人君のお母さん…うちもまだ…私、探してきます」
なずなは電話を切ると、蛍に話しかける。
「ごめんね。蛍くん、私弟を探しに行くわ」
「…そう。僕もいくよ」
蛍は何だか嫌な予感がした。大体、自分の予感は当たる。
今回は、妖怪が関わってなければいいが。
ネリネは楽しかった。地獄じゃ自分と同じくらいの子と遊ぶ機会が少ないし、それに瑠璃や他の鬼達の監視付き。少しでも、危ないと判断されれば、即止められる。
だけど、監視役が今日はいない。どんなに高い所に登っても注意されないのだ。
ジャングルジムから、見下ろした景色は最高だった。
「君たち」
ふと、ジャングルジムの上で三人が話し込んでいると坊主のような男が一番下にいた。
「あなた、誰?」
「…宿を貸してくれないか?」
ネリネは、すぐに妖怪だと気づいた。しかし、この時はまだこの妖怪の危険性に気づいていなかった。
「宿?家に泊めろって事?」
弘海と真人は、顔を見合わせる。
「いや、軒下でいいんだよ。寝かせてくれればいい」
「じゃあ、俺んち…」
弘海が言いかけた時だった…。
蛍となずなは、なずなのうちの近くの公園に来た。公園は静まり帰っていて、弘海を見つけるのは簡単であった。
しかし、様子が可笑しい。弘海の他に、二人の子供。一人は真人、一人は見た事がない少女。
「真人君と女の子は…」
「なんであいつが居るんだよ!」
イライラしたように蛍が言った。
「知ってるの?」
「…ああ。妹だ」
なずなには、衝撃的だった。だって、蛍は一度たりとも兄弟の話をした事がない。
「え…じゃあ、あのお坊さんも知り合い?」
指をさした先には袈裟を着た坊主が一人…それも妖怪だ。
二人は急いで、三人のいる方へ駆け出す。
「じゃあ、俺んち…」
坊主が、弘海を見上げる。
「ありがとう。坊っちゃん」
「待て!そこまでだ!」
三人と坊主が振り向いた先には、蛍となずながいた。
「おや?」
「こいつを泊めちゃダメだ」
蛍にそう言われて、坊主は大きな口でにやりと不気味に笑うと、数珠を取り出す。
「何者か知らんが、人でない事では確かだな…だが、もう遅い」
坊主がお経のようなものを唱えると、ブラックホールのようなものが空中に浮かび上がる。
「何をする気だ⁈」
「こうするのさ!」
坊主が手を動かすと、その中から強風が吹き荒れ始めた。風は大の男が立っていられないような強風で蛍も砂が目に入らないように凌ぐのがやっとの事だ。
そんな強風の中、女子供であるなずなや子供達も飛ばされそうな勢いだ。子供達は、ジャングルジムにしがみつき、なずなは身体を丸めて風を凌ぐ。ジャングルジムにしがみついた三人はまず、弘海が吸い込まれ、真人も…最後に残ったネリネもブラックホールのようなものに吸い込まれていった。
「やれやれ、前はこんな乱暴しなくても連れていけたのな…」
坊主は自らその中に飛び込んでいくと、ブラックホールは影も形も無くなり、風も吹き止んでいた。
「弘海!」
公園中になずなの悲痛な叫びが響いたが、それが届く事はなかった。
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