最強少女のおすそわけ

雫月

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第二章 魔法学園の日常編

第28話 観衆は【セイレーン】の美しさに酔いしれる

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『さあ!いよいよです!いよいよやってまいりました!レズィアム魔法学園の創立記念日!四年に一度のレアイベント!!』

 創立記念日の朝。
 日差しが暑く感じられるようになる中、女子生徒の更に熱い声が拡声石によって響き渡り、学園の校庭に集まった溢れんばかりの観衆がそれ以上の熱気で応える。

『今回のイベント、その司会と実況を務めさせていただくレズィアム魔法学園5年、魔法新聞部部長ウィンティラと申します!』

 自己紹介をする熱い声の主──ウィンティラの話術が巧みなのか、滅多に味わえないイベントの空気に酔う観衆が乗りやすいのか。はたまたその両方なのかもしれない。
 イベントの会場となった校庭は老若男女、多種族が入り乱れ、異様と呼べるほどの興奮と盛り上がりをみせていた。

『まずはご覧くださいこの大勢の観衆を!私も前回のイベントを見ていたのですが、それを遥かに越える人数です!過去一番だとの声も挙がっているほど大盛況となっております!!』

 興奮を抑えきれない様子のウィンティラ。その理由は会場を訪れた人々と同じで、とある噂話を耳にし、その真偽が確かなものになったからだった。

『この大盛況の理由は明らかです!既にお聞きになられている方もいるでしょう!ご自身の目で確かめた方もいるでしょう!』

 校舎側に設置された舞台の上には、シエルたちをはじめ総勢五組の冒険者チームが一堂に介していた。
 その中で明らかに浮いている人物が一人、他チームから場違いだろうといわんばかりの視線を受けている。

『なんと!まさかまさかの!聖王国クイーンガルトの王女ルヴェリア様が冒険者になられていましたあぁぁ!!』

 そんな視線もどこ吹く風か。ウィンティラの叫び声に同調し熱狂する観衆の声に、ルヴェリアは目映く美しい笑顔で応えた。
 きらびやかな金色の装飾が目を引く白甲冑姿が、彼女の美しさをより一層際立たせる。その神々しさに気を失い倒れる者が後をたたなかった。

「……あららー。まだ冒険者やってたんだねー。」

「……あ~……。よりによって何でアイツなんだよ。」

 呆れ気味の表情のシエルの横では、もう二度と会うことはないだろうと思っていたリッツが唸りながら頭を抱えている。

「……王女さま、派手だね。」

「うわ~、あんなに目立ってるのに平気だなんてスゴいよ……。」

 平然とした表情をしているユグリシアの陰では、リケアが身を小さくしながらそう呟く。

「……リケア、大丈夫?」

「今のところはね……。私ならこんな紹介のされ方したら気絶しちゃうよ……。」

 勇気を出して参加を決めたリケアだったが、大舞台を前に早くも緊張の限界を迎えていた。

『ルヴェリア王女には冒険者になられた経緯など色々お話を伺いたいのですが、ひとまず本題に移りましょう!今回の創立記念日イベント!何が行われるかは、この舞台に立っている冒険者のそうそうたる顔ぶれををご覧になれば容易に想像できると思います!』

 ウィンティラの言葉の誘導により、人々の関心はルヴェリア一人から舞台上にいる冒険者チーム全体へと移った。
 ルヴェリアの登場で話題が逸れたものの、世界中で人気を博す冒険者を直に見られるありがたみはそれをも凌ぐ。

『そうです!今回は冒険者が主役のイベント!冒険者チームによるお宝争奪クエストですっ!!』

 今や人々が日々暮らす中で、冒険者の活躍をチェックするのが当たり前な世の中になっている。有名なチームはもちろん、無名なチームにもファンがいるほどだ。
 自分の推しチーム目当てで夜を徹して当日を待ち望んでいた人も多く、グループに別れてチームの良さのアピール合戦があちこちで起こっていた。

『さて!それではチーム紹介の前にイベントの企画発案をされた担当の魔法ギルド、冒険者ギルドそれぞれの代表からクエストの詳細やルールの説明をお願いします!』

 と、ウィンティラが舞台袖に控えていたイベントの企画者であるスレイブとガルフィドを紹介する。
 多くの視線を一斉に受けるガルフィドは少し緊張気味の様子だ。方や緊張とは無縁な堂々とした態度のスレイブが拡声石を手に取る。
 開口一番ドでかい声が飛び出すだろうと、シエルたちだけが素早く耳を塞いだ。

『あー、ワシが今回のイベントを企画した冒険者ギルドのスレイブじゃ。まずは、この企画を快諾してくれた学園長のベッチェルに礼を言うぞ。』

 スレイブの口から出たのは、ベッチェルに対する謝礼の言葉だった。その声と口調は驚くほど穏やかで、豪快が服を着て歩くと言われている同じ人物とはとても思えない。
 そんな彼女は舞台袖にいるベッチェルに向かってウィンクをひとつ。ベッチェルは柔らかな笑顔でそっと手を振り返す。
 ベッチェルの了承が無ければこのイベントは開催されなかったため、その感謝と敬意を表す温かい拍手が観衆からも送られた。

「……え、うわっ、スレイブが普通にスピーチしてる。」

「気持ち悪ぃな。まさか緊張してんのか?」

「二人とも言い過ぎだって……。」

 驚きのあまり目を丸くするシエルとリッツを注意するリケアだったが、内心同じことを思っていた彼女は苦笑いしていた。
 と、社交的な挨拶をそこそこに、スレイブが大股に歩幅をとり片手を腰にあて豪快な姿勢に戻る。

『さて!知っとる者もおると思うが、ワシのいる冒険者ギルドはガルトリー国にある【天使の夜明け】という名じゃ!何か依頼があれば即座に対応するぞ!初回なら割引も……』

『ちょ、ちょっとスレイブ様!今ギルドの宣伝してる場合じゃないっスよ!』

 スレイブは声高らかに突然イベントとは無関係な話をし始め、隣にいるガルフィドが慌てて止めに入った。

『なんじゃガルフィド。別にかまわんじゃろう?』

『かまわなくないッス。クエストの説明をって言われたでしょ?ちゃんと台本通りに進行してくださいッス!』

 なぜ自分が注意されているのか分かっていないスレイブはキョトンとした顔を見せる。
 そんな彼女に「勝手なことをしないで」とガルフィドは必死に説得、というよりお願いしていた。

『むぅ、そこまで言うなら仕方がないの。』

 納得していないスレイブは不満そうな表情で渋々話を本題に戻す。

『……あー、このクエストの名は……『ロゼロの迷宮というクエストを作ったんじゃが果たして……』なんじゃこりゃ。長すぎるわ!誰じゃこんな名前をつけたのは!』

『そんなのスレイブ様以外いないッスよ……』

『なんじゃと!?そんな記憶はないぞ!ガルフィドお主じゃないのか!?』

『んなわけねーっス!』

 突然始まった喜劇に、観衆からは盛大な笑い声が巻き起こる。
 進行そっちのけで続く押し問答。ワガママを貫くスレイブの姿は他の人々にはウケが良かったが、シエルたちにとっては見慣れた光景だったた。
「……うん。やっぱりスレイブだったね。」

「だな。見事な傍若無人っぷりだぜ。」

「だから二人とも言い過ぎだって……。」

 はじめは面白がって見ていたシエルたちはすぐに飽きてしまった。これは時間がかかるだろうとその場に座り込み雑談を始める【カーバンクル】に、他チームからは冷ややかな視線が向けられる。

『もう!わかったっスから先に進んでくださいッス!』

 一方、話が進まず埒があかない状況に、とうとうガルフィドがなげやり気味に降伏した。彼の反応が面白くてからかっていたスレイブは気が済んだようで、ようやく本題に入った。

『まぁよかろう。ではワシが作ったこのダンジョンを紹介しようか。今回のはなかなかの出来じゃ。天然もののダンジョンと遜色なくできておるから油断していると痛い目を見るぞ?さぁ、遠慮なく挑むがよい!』

 派手なポーズと共にどや顔を決めるスレイブ。しかし説明されたのは大まかな部分だけ。
 これには出場者はもちろん、観衆からも首をかしげる者が続出した。

「うわ~さすがスレイブ。ざっくりし過ぎてる。」

「まぁアイツに細かい説明とかできるワケがねぇもんな。」

「……あー、うん。私もそう思う。」

 シエルたちは呑気にお菓子を食べながら野次を飛ばす。
 言われたい放題のスレイブだが、本人は気にすることもなく満足した様子で舞台袖の席にドカッと腰をおろした。

『……えー……。で、では僭越ながら私から少~しだけ捕捉させていただきますね……。』

 すると状況を見かねたウィンティラがすかさずフォローに入り、イベントの詳細の説明を申し出てくれた。


 ■クエスト『ロゼロの迷宮』は当学園の魔法練習場(フィールド)内の地下に作成され、内部は文字通り迷宮となっている。随所に罠も仕掛けられ、低ランクだが魔物も徘徊している。攻略難易度はC~Dとの事。

 ■迷宮への入口は五ヶ所設けており、全チームがそれぞれ違う位置からスタートする。ただし、冒険者ランクの差を考慮してランクが低い順から先にスタートとなる。

 ■各チームには『小型魔法転写装置』と呼ばれるマジックアイテムが一個配布され、ダンジョン内の様子が観客席の前にある巨大なスクリーンに映し出されるようになっている。これにより、観客は全チームの動向が常に見ることができ、運営側も不正がないかをチェックできる仕組みだ。

 ■チーム同士が鉢合わせた場合、模擬戦という形で戦闘を行う。その際には教員が審判として立ち合い勝敗を決め、勝利チームのみが先へ進める。

 ■最深部に目標となるお宝があり、それを一番最初に手にいれたチームの優勝となる。


 これらの要項をウィンティラは観客に向けて簡潔に、かつ分かりやすく丁寧に説明した。
 その見事な話術に観衆からは称賛の拍手が降り注ぎ、ウィンティラは照れながら深く一礼をする。

「うむ!さすがじゃの!ワシが言いたかったのはそういう事じゃ!」

 と、進行を引っかき回した張本人が騒ぐ中、いよいよイベントの主役たちが紹介される。

『さあ!以上を踏まえましてこのクエストに挑む五組の冒険者チームをご紹介しましょう!』

 待ってましたといわんばかりに会場の熱気が一挙に上がる。チームの紹介だけでこの盛り上がり様だ。たとえ冒険者を知らない者がいたとしても、いかに彼らが人気なのかがよく分かる。

『まずは!言わずと知れた超名門校!クイーンガルト聖王国立セイント・ノヴァリス魔法学院より!ルヴェリア王女とその親衛隊長ラノーファ様の最強コンビ!チーム【セイレーン】!!』

 名を挙げられたと同時に熱狂的な歓声が沸き起こる。
 人々は公務の場以外で王女の姿をほとんど見ることがなかった。
 それ故に「いまだにこれは夢なんじゃないか」と錯覚するほど、聖女ガルトの生き写しといわれる彼女の荘厳華美な姿に人々は目を奪われていた。

『ごきげんよう皆様方。本日はわたくしの勇姿をとくとご覧くださいませ。』

 美しい微笑を見せ歓声に応えるルヴェリア。その柔らかな表情は【カーバンクル】にそっとむけられた。

「……なぁリッツ。さっきからめっちゃこっち見てくるんだけど……」

「シッ!目ぇ合わせんな。」

 右側からひしひしと視線を感じるシエルとリッツはルヴェリアと逆方向に顔を背ける。

『続きまして!西のウィングロード領ファナリア王国!ダレスコール魔法技師専門学校より!こちらのチームも侮れません!あのSランク2位【フレスベルグ】傘下の新鋭!チーム【ベルケイオス】!!』

 次に呼ばれたのは男性三人組の【ベルケイオス】。【セイレーン】の華やかさとは正反対の地味な色合いの服装に身を包む彼らは、特に言葉も述べず軽く手を振るだけだった。
 しかし結成してわずか数ヶ月で冒険者ランクをCにまで上げた彼らの急成長ぶりの話題は聖王都まで届いており、人気の程はそれなりにあるようだ。

「……ふん。まさかルヴェリア王女が冒険者になっていたとはな。リサーチの報告がずいぶん違うじゃないか?」

 と、文句を言い放つ体格が良い男──チームのリーダー、ガーベルは隣にいる茶髪の男を睨む。

「いや~、前に調べた時は王女の名前なんてなかったからな~。」

 肩をすくめる細身の男──オズラムはガーベルの睨みを軽く流し、代わりに言い訳を返した。

「……あれ?どうしたリーダー?なんか顔が赤いぜ?」

 不機嫌そうな態度をとるガーベルだったが、先ほどからルヴェリアの方ばかり見ている。それに気がついたオズラムは冗談交じりに彼に質問をする。

「うっ!……な、なんでもない!」

 無意識だったガーベルは指摘を受けると凄まじい勢いで顔を背け、わざとらしく咳払いをして場を誤魔化した。

「あ~、どうでもいいけど面倒だからさっさと始めましょうよ……。」

 上手く話題を逸らすことができてしめしめといった表情のオズラム。その隣では背の小さなドワーフ族の男──ケリスはつまらなそうに愛用する斧を点検していた。

「……チッ、【フレスベルグ】絡みかよ……」

 【ベルケイオス】を見ていたリッツの表情は、驚きとも怒りともとれる複雑なものだった。
 その理由は彼の口からこぼれたチーム名に関係しているようだが、真相はリッツ本人しか知り得ない。

「へー、ファナリアからだって。リッツと同じ故郷じゃん。もしかして知ってるチームだったりする?」

「…………」

 何気なしに話しかけてきたシエルの言葉も、今の彼の耳には届いていなかった。

「……リッツ……?おーい?」

「……あ?あ、あぁすまねぇ。ちょっと考え事しちまってた。何の話だ?」

 顔を覗き込んできたシエルに対してリッツは普段通りの表情を作る。彼の複雑な心中を知ってか知らずか、シエルはそのまま会話を続けた。

「あの【ベルケイオス】ってチームさ、何か知ってる?って話。」

「いや……。学校は知ってるがチームは知らねぇな。向こうにも冒険者はたくさんいるからよ。」

「そっかー。まぁ【フレスベルグ】の傘下に入れるくらいだし、やっぱり警戒してた方がいいかなー。」

「……あぁ。そうかもな……」

 情報が少ないが故に不気味な存在でもある【ベルケイオス】を前に、真剣な表情で悩むシエル。
 しかし、リッツから返ってくる言葉はどこか上の空のように聞こえた。

「…………」

 そんな彼をユグリシアは黙ったまま静観していた。

『さあさあ!どんどんまいりましょう!続いては我らレズィアム魔法学園から三チームが出場します!まずは新生チームを二組ご紹介しましょう!一組目は特級クラスよりチーム【ビブロス】!』

 そしてチーム紹介は本学園へと移る。
 初めに名が挙がったチームのリーダーが、見覚えのあるさらりとした長い髪をなびかせながら舞台の前に颯爽と立つ。

「ハッハッハ!我がチラカッシーノ家の名にかけて必ずや勝利を手に入れるぞ!」

 自信に満ちた表情で高笑いするのは、シエルたちと同学年で、先日の『カツラ騒動』で知名度を更に上げたアルベルス。
 チラカッシーノ家が製造している王候貴族御用達の高級カツラ『マジカルウィッグ』は世界的に有名で、魔法で丁寧に作り上げたカツラは本物以上といわれている。
 騒動のおかげでチラカッシーノ家の名が学園中で話題となり、本来なら喜ぶべきところなのだが……。

「フフフ……。僕に恥をかかせたことを後悔させてやる。覚悟しておけ、【カーバンクル】!」

 我が家の誇りと、カツラはバレたくないという個人的な秘密は別の話のようだ。
 そんな名家の跡取り息子がチームを作ったのはつい最近のこと。そのきっかけとなった人物がいるチームを、アルベルスは不敵な笑みを浮かべながら見つめている。

「……なぁリッツ。こっちもめっちゃ見てくるんだけど……」

「だから目ぇ合わせんなって。……ハァ……。なんでアイツらまで冒険者になってんだよ……。」

 今度は左側から突き刺すような視線を受けるシエルとリッツ。なんとも居心地が悪そうに二人は顔を下に向けた。

『そして二組目は!今学期から赴任されてきたあの【オーディン】のナッキ先生より特別推薦を受けたという話題のチーム!【カーバンクル】!』

 そうこうしているうちにシエルたちが呼ばれた。その瞬間、ワッ!という大きな歓声が会場に響き渡った。

「うわっ、すご……!」

 盛り上がり度は【セイレーン】に比べるとやや劣るが、予想以上の歓声にシエルから驚きの声が思わずもれる。
 その火付け役になったのは他ならぬルヴェリアだった。聖王都の王女と隣国ガルトリー公国のシエル王子が揃って冒険者になったという珍しさは、世間の話題を瞬く間に沸騰させ、本人たちの知らないところで人気が急上昇していたのだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ!なんでこんなに目立ってんの!?話が違うよー!」

「う~ん。この歓声、悪くないねー。俺たちもいよいよ殿堂入りかー。」

「妄想王子は黙っててくれる!?」

 【カーバンクル】の活躍を期待する多くの眼差しが注がれる。
 呑気なシエルとは対照的に、リケアは予想外の盛り上がりに頭がパニックになっていた。

「おいシエル!とにかく何かアイサツしとけって。」

「あ!いけね!何言うか考えてなかった!」

 ボーッとしていたシエルはリッツから肘でつつかれ我に返る。
 カッコいい挨拶をしたいと意気込んでいた割にはなんとも詰めが甘い。

「……大丈夫。わたしにまかせて。」

 と、慌てふためくシエルを見ていたユグリシアがおもむろに舞台の前に出た。

『……わたしたち、みーんな倒して優勝しまーす。』

 無表情で放たれたのは突然の優勝宣言。
 会場は一瞬静まりかえったが、すぐに興奮した歓声が沸き起こる。

「ちょっ!ちょっとユグさん!?」

「なにいきなり挑発してんだ!?リケアがビックリして気絶しちまったぞ!」

 倒れたリケアを放ったまま二人がユグリシアに詰め寄る。
 他のチームからも鋭い視線を一挙に浴びるも、ユグリシアは涼しい顔で「スッキリした」と呑気な感想を一言。

『さあ早くもチーム同士で白熱した展開が繰り広げられております!……ですが!このチームを倒すのは至難の技でしょう!』

 ウィンティラが発する声の熱量が上がり、残すチームの紹介を待ちわびた人々もそれに続き騒ぎ出す。やはり今回のイベントの主役は彼女たちなのだと、誰もがそう思った。

『最後にご紹介するのは学園が誇る最強のスターチーム!我らが生徒会長ライカ率いる【ユニコーン】だあぁぁ!!』

 名を呼ばれると同時にライカが力強く腕を空へ突き立てる。
 会場全体が熱狂的な【ユニコーン】コールに包まれ、シエルたちを含め他チームは圧倒されたいた。
 そしてライカが舞台の前に立つと歓声が一気に静まり、人々は彼女のスピーチに耳を澄ます。

『たくさんのご声援ありがとうございます。私たちはまだまだ未熟ではありますが、良い成績を残せるよう邁進していきます。どうかご期待ください!』

 ライカが短く語った謙虚な言葉。しかしその声には芯の通った力強さと自信が溢れていた。
 再び【ユニコーン】コールが巻き起こる中、ライカの視線はやはり【カーバンクル】に向けられていた。

「……うわ~リッツ~……。ライカ先輩も……」

「目ぇ閉じてろ!あーもう!面倒なヤツらばっか集めやがって!」

 力ずくでも出場を反対するべきだったと、頭を抱えるリッツは今さらながら後悔していた。

『さあっ!!準備が整いました!レズィアム魔法学園創立記念日特別イベント『ロゼロの迷宮』!クエスト開始ですっ!!』────



     
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