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百二十話
しおりを挟む「ごめんなさいね、
変な事話してしまって‥
シギに友達がいることが嬉しくて、つい‥」
そうか
記憶がないってことは
友達もいないって思ってたんだろうな
「俺もキトもシギの事
大事に思ってるから心配すんなよ
あんたもシギの母ちゃんになったんなら
よろしく頼むぜ」
いつもの口調に戻ったライハに
少し驚きながらも、目を細め微笑んだ顔は
嬉しそうに見えた
紅茶を飲み干し、
自分の分のクッキーの余りを
持ち帰りたいと頼んだライハに
女性が袋を取りにキッチンへ向かった
その時、玄関の扉が開く音と
シギの声が聞こえてきた
「ただいま、あれ?
お客さん来てるの?」
僕とライハを見て、びっくりしたように
目を見開いていた
「あれ? 昨日の‥?」
「俺達、友達だから
遊びにきたぜぇー」
「ともだち?」
シギは不思議そうにキョトンとした顔をし、
ライハを見つめている
「‥覚えてない、かもしれないけど、
僕‥キトとライハとシギは、だいぶ前に
同じ仕事をして、友達、だったんだ」
友達と言う時に少し詰まってしまった
それに覚えてないと
自分の口から言うのは少し辛い
「そうなんだ、
昔のことはあまり覚えてないから
分からなくてごめんね?」
特に疑うこともせず
素直に言葉を受け入れてくれた
「シギ、おかえりなさい
あなたのお友達が来てるのよ
今お茶会をしていたの」
フフッと嬉しそうに微笑みながら
女性が手に持っている袋を
ライハと僕に渡してくれた
僕は袋を頼んでいなかったが、
クッキーに手をつけていなかったので
気を利かせて持ってきてくれたんだろう
「このクッキーも紅茶も
すっげぇ美味いぜ!
後でシギも食べてみろよ!」
クッキーを袋に詰めながら
ニカッと笑っているライハにつられ
シギも笑っている
「僕の家にあるクッキーなんだから
もちろん後で食べるさ」
「この幸せ者がぁー!」
あははとみんなの笑う声が
家の中に響く
ライハには周りを巻き込む力がある
僕だけだったら
こんな風に振る舞えない
僕はみんなに合わせて軽く微笑みながら
自分の事を覚えていないシギを見て
やっぱり少し悲しくなった
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