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八十六話
しおりを挟む「‥今のナツさんは
ここじゃない世界が
本当のいるべき世界、なんですか?」
「‥‥」
私を自分から離し、問いかけられたが
今の、と言われ、
何となく答えられなかった
シオンはそんな私の様子を汲み取ったようで
あっ、と小さい声を出した
「‥すんません、じゃあ、
今俺が話しているナツさんの誕生日は
5月7日‥ですか?」
急に誕生日の話をされた
5月7日は私の誕生日だ
こっちのナツとは誕生日は違った記憶がある
2.3度頷き、そうだと答えると
ズボンのポケットに手を入れ
何かを取り出した
私の手を取り、何かを乗せてきた
「‥これは?」
小さい紙の袋が手のひらの上にある
「‥これ、ナツさんの誕生石らしいんです、
ジーナさんに教えてもらって‥」
「‥私の誕生日の?」
「はい、ただ、ジーナさんに
誕生日と誕生石の相談に行った時、
何故か2つの誕生日と誕生石を
教えられたんです」
「2つ‥?」
「はい、そのときに言われました
シオンが渡したいと思うナツの事を考えて、
2つの誕生石と石言葉に合う方の石を
ナツに渡しなさい、って」
私とこっちにいるナツの2人の誕生日と
誕生石を教えたんだ
「よく分かんなかったんですけど、
俺がナツさんに合うと思ったのは
5月7日の誕生石と石言葉、でしたから‥」
「‥開けてみていい?」
頷いてくれたので、紙袋を開け
中身を取り出した
薄く丸い開け閉め出来る入れ物がついていて
紐が長い装飾品だった
私はそれを両手で包み込むように持った
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