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八十二話
しおりを挟むなんとなく空が見たくなった私は
広場の方へと向かった
どこまでも広がる青空には雲一つなくて、
少し肌寒いが風が気持ち良い‥
立ったまま、
肺いっぱいに空気を吸い込み
その空気を長い時間をかけて吐き出した
こっちのナツになり、何日経っただろう
最初の方は数えていた日数も
もう数えなくなった
ぼぅっとしていたら、
急に頭に誰かの手が乗る
この手の感触はすぐに誰か分かった
「‥ナロン」
「よっ、こんなところで何してんだ?」
「‥ちょっと、な
ナロンは何か用事か?」
私の言葉じゃない
「俺はたまたま戻ったら
ナツの姿が見えたから来ただけだ
さっきタリアから、今日で
見回り隊に混じるの終わりだって聞いたぜ、
知ってたか?」
「あぁ、知っている
南西側が物資を売り捌いていたのが
分かったからだ
金に目がないらしいから
金目当てなだけかもしれんから、
終了するらしい」
「らしいな‥」
私の横に立ち、遠くを見つめる横顔に
目が離せなくなっていた
何でだろう?
勢いのある風が吹く
横顔に見惚れていたからか少し体制を崩し、
咄嗟に出た手はナロンの袖を掴んだ
「おっ、大丈夫か?」
そう言いながら、ナツの肩を支えてくれた
「あ、あぁ、すまない‥」
「風が少し出てきたな‥
中に入るか?」
「いや、もう少しここにいたい‥」
「なら、何か羽織るものでも持ってこよう」
ナロンがナツから離れようとすると
掴んでいた手に力が入り、引きとめた
「‥いい、
近くに‥いてほしい」
自分の心臓が強く波打ち、
顔に熱が集まっているように感じる
掴んでいる手は少し震えて、
ナツは緊張していた
その姿を見ながら驚いたように目を開き
唇を引き締めた後、何回も頷いていた
「‥あ、あぁ、もちろんだ」
そう答えるナロンの顔は
今まで見たことないぐらい赤くなっている
鳥が前を通り、高く飛んでいく
「空は、遠いな」
「‥近くしてやろうか?」
ナロンは私の前に背中を向けて、
しゃがみこんだ
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