巡り合い、

アミノ

文字の大きさ
上 下
43 / 143

四十二話

しおりを挟む



ふと目が覚めると外は少し暗くなって
いつものようにカラスの鳴き声がしていた

コンコンと扉を叩く音がしたが、
まだ体が重くて起き上がれなかった私は
中にどうぞと伝え
入ってきてもらうことにした


「よっ」
入ってきたのはナロンだった

さっきは起き上がれなかったのに
顔を見たらスッと起き上がれたので
ベッドから降りようとするが制された

なのでそのままベッドに腰掛け
話をすることになり、
ナロンにも前と同じ
ベッドの横の椅子にかけてもらった

「今見回りから帰ってきた
デイスから聞いて、
ちょっと様子見にきたんだ」

「すまない、迷惑かけたな」

言葉が出てきた

「迷惑なんて思ってねぇよ
逆に休んでくれて安心した」

「‥‥」

「お前はあんまり休まないからなぁ
いつでも静かに全力だから」

少し悲しそうに見えた
この表情は見たことがある

前に相談にのると言ってくれた時に
私が言葉を詰まらせた、
その時の表情と同じだ

「倒れてしまっては元も子もないから
しっかり休んでくれ
しかしナツの休むところなんて
初めて見た気がするなぁ」

腕を組みながらしみじみと言う姿を見て、
こっちのナツは寝不足で仕事が
出来ないなんてことがないこと、
休むことになった理由が
ただの寝不足でも心配してくれる
仲間がいること、
1つ、また1つとこっちのナツを知るたびに
戻らなければと言う気持ちと
ここにいたいと言う気持ちがぶつかる
胸がなんだか重い


「明日は出て来れそうなのか?」

「今日1日、何も出来なかったから
明日は必ず出るつもりをしている」

「無理はするなよ
今日は盗賊は街に来ていないし
こっちのことは心配しなくて
いいんだからな」

じゃ、と帰ろうと椅子から
立ち上がったナロンの袖を掴み
ナツは引き止めた

「どうした?」

私ではなく、ナツの意思だ
だから何で引き止めたのか分からなかった
ナツは話し出さない
ナロンは椅子に座り直して、
ナツの言葉を黙って待ってくれていた

「‥言いたいことがあるんだが‥」

ゆっくりと小さく呟く

「何でも言ってくれていいぞ」

「‥‥」

しかしナツはそのまま黙ってしまい、
また沈黙が訪れた

コンコン
その沈黙を破るように扉を叩く音が
部屋の中に響く

「ナツさん、シオンです」

見回りが終わったら見に来ると
言ってたから、来てくれたのだろう

「‥また今度、話す」

ナツは静かな声で伝えた
ナロンは分かったと答え
いつものように頭をポンポンとして
扉へ向かって行った

ガチャ
扉を開けたのがナロンだったので
シオンは驚いたようだが、
ペコっと頭を下げているのが見えた

ナロンが歩いて行くのを見送った後、
入っていいですか?と聞かれたので
いいよと答えると、部屋に入ってきた
シオンの手にはトレーに乗ったご飯があった

「ナツさん、大丈夫ですか?
お腹空いてないかと思って
ご飯持ってきたんですけど、
食べられそうですか?」

机の上にトレーを乗せ、
立ったまま心配そうに聞いてくれた

「ありがとう
そんなに心配してくれなくても大丈夫だよ
ご飯、頂くね」

これはナツの言葉ではなく
私の言葉だ

トレーの乗った机を運んでくれたので
ベッドに腰掛けたまま頂くことにし、
シオンには先程までナロンが座っていた
椅子に座ってもらった
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

誕生石物語

水田 みる
ファンタジー
 ここは宝石を守護する女神ジュエルが崇拝されている『ジュエリーラ帝国』。 稀にこの国では身分も貧富も関係なく、突然変異で誕生石と同じ色の髪と瞳を持った子供が同じ誕生月に生まれた。 生まれた子供達は女神からの祝福があると周りからは認知されて、実際に全ての子は他とは違う能力を持ち合わせていた。 ーこれは女神ジュエルの祝福を受けた12人の女性の物語である。 ※恋愛はあったりなかったりのオムニバス形式の話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

処理中です...