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九話
しおりを挟むこっちのナツが必要とされている世界
私はいらない
なら早く元に戻れるように
行動するのが今の私の役目なのかもしれない
ジーナが言う仮説が
本当に合っていたとすれば
引き金になる何かを思い出せば戻れる
とりあえず朝起きた瞬間から
こっちにいたってことは
寝る前に何かをすればいいのかもしれない
そして起きた時に戻っていたら‥
私はどこに戻るんだろう?
ダメだ
今は自分のことよりも
こっちのナツを頼ってくれてる
みんなの為にも
元に戻れる方法を探すんだ
「百面相大会にでも
出るつもりなのかい?」
ふと声をかけられて
現実に戻ってきた
「ジーナ!?」
「部屋にいないから探してたら
こんなところにいたんだね
ニヤァーって笑ったかと思ったら
悲しい顔して、そのあとは気合入れた顔して
何してるのさ?」
ジーナは私がいる本棚の
近くにある机に軽く腰をかけ
私の真似をして表情を変えながら
質問してきた
「いや、あのー
元に戻れる方法を考えてて‥
朝起きてからこっちにいるから
夜寝る前に何か引き金になるようなことを
すればいいんだろうなぁと思ったりして‥」
アハハ‥と苦笑いをしながら
ジーナの腰掛けた机の横の椅子に座り
軽く下を向いた
「なるほどね
まぁ、無理しなくても大丈夫さ
なんとかなるよ!」
ぷっ
思いっきり吹き出してしまった
「なんで噴き出す!?」
私は顔を上げて
眉間に皺を寄せながら
不思議そうにしているジーナを見つめ、
「前もなんとかなるよって
言ってくれたなぁって思い出したら
なんか笑えてきた」
「えぇ?」
「ありがとう、ジーナ
ジーナがいてくれて本当に感謝してる」
そう伝えると
眉間の皺はなくなり口元を少し緩ませ
鼻の頭を掻いていた
照れているようだ
「ナツは真っ直ぐに気持ちを伝えるなぁ
素直って言うのかな?
こっちにいるナツよりも」
「そうなの?」
「うん、こっちのナツも
別に素直じゃない訳じゃないんだけどね
君の方がストレートに伝えてくれる
いつものナツの感じで話してると
返ってくる言動にびっくりはするけど、
ナツではなく君の気持ちなんだと思うと、
それはそれでとても嬉しく思うよ」
ジーナは優しく微笑んでくれていた
そこで思い出す
さっきの食堂での肩を組んだ時の
ビクッとした動き
「もしかして、さっき食堂で
親友って言って肩を組んだ時
ビックリしてた?」
「あぁ、バレてたんだね
あの時はびっくりしたよ
ナツはみんなの前では
親友だって言わないんだよ
そうだねーぐらいは言うけど
あんなガッツリ親友だって言って
肩を組むなんてないからね」
なるほど
「やっぱり人間ってのは
いくら似てても
全く同じ人はいないってことだねぇ!」
「そうだよね」
そう、ナツと私は違う
気付かれないように静かに
ふぅとため息をつく
「主にこっちのナツとしての
記憶が出て行動するのは
私が知らない事に対峙したときだけ
最初にジーナと話した時は
こっちのナツが喋ってたんだけど、
こうやって慣れてくると
普段話してる時にこっちのナツの感じは
出ないんだよね‥」
うーん、とジーナが
考え込んでしまった姿が見えた
「あっ、なんか急にごめんね」
「いいや、なにかあれば
その都度教えてくれと言ったのはこっちだし
なにも謝ることはないよ」
「ありがとう
部屋に戻ろうか」
2人で図書室を出て
ジーナの手を握りブンブン振りながら
スキップして進み始めた
「ナツ!?」
ビックリしながら、そして
よろけながら早足でついてきてくれた
「私はスキップができないんだよ!」
「そうなんだー
じゃあ走ろう!」
「タリアに見つかったら
怒られるぞ」
「いいじゃん
行くよー!」
そして私は走り出す
手を繋いでるもんだから
ジーナはついてくるしかない
「しょうがないなぁ」
ジーナも走り出した
「ナツより私の方が足は早いんだ!」
「わぁ、ジーナ早い~!」
走り出したすぐの曲がり角から
タリアが出てきて
私とジーナはこってり絞られた
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