鬼畜執事のKING

三三

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誘惑

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パクパク・・
ん、
なんだろ・・甘い匂いが・・
? ふっと薄目を開けると、
「げ!!!」
バッッッ!!!
「起きとけ言ったよな?俺。」
「は?へ?え?なんで・・」
私の家に、私の部屋に!!
「なんで、空が居るの~~~~~~~~??????」しかも何か食べてるしっ!
  そう、そこには相馬くんに化けた空がいたっ!!
そして、舌をペロッと出し、
「ごちそーさま♪」 と!!?それはそれは妖しいフェイスで、イミ不明な事を言いやがるっ!!
「なっ、なにが??ごちそーさま??」
ってー、空の手にあるものはっ
「あーーっフレンチトーストッ!って!え?」
起きたばかりで思考回路がついて行かない。でもこの甘い匂いは
「もっ、もしかして、それは・・私の朝ご飯では?」

「あーお母さんから美未香にって渡されたんだけど、お前なかなか起きないからさ」
食ったんかい(# ゚Д゚)
「はぁ、もう一個作ってもらうからいいよ」
「親なら、とっくに出かけていったぜ?」
「へ?え?今、何時??」
「8時」
「はぁぁぁぁぁ???」 ちょ、8時って、完璧遅刻じゃね??
「え?なんで??空、7時に迎えに来るって言ってなかった??」
「ああ。7時に来たよ。」
「ウソ!8時じゃん!!」
「お前が全然起きないからだろ。」
「起こしてくれればいいじゃん!」
「起きなかったんだよ、起きたてなくせにうるせぇな」
バン!!
とりあえず、空を部屋から追い出し、大急ぎで制服に着替えた。
とにかく、学校へレッツゴーだい!!
部屋から、飛び出すと、廊下の壁にもたれかかってる空の腕を掴み、小走りで家から出た。
太陽!雲!空!緑! どうもありがと~~~~~う!(なにが?)
「いきなり、元気だな?」 後ろから、呆れた声で空が言う。
「まぁねっ!さぁ。ガッコまで、走るよ!」 
「げ、マジ勘弁、俺、体育会系じゃねぇし!」
「いいから!」 
嫌がる空の手を引っ張って、無理やりガッコまでダッシュさせた。
最後は、空に抜かれた。(なんでだっ!

そんな私達を学校の皆が見逃すハズもなく、
≪2人仲良く、手をつないでの登校≫ は = ≪彼カノ≫ として、インプットされてしまった。
案の定、りかちゃんには、ドン引きされた!うぅ・・
そして、
会わないであろう人に会ってしまう。 「美未香ちゃん?」
うあっ!この声って・・もしかしてもしかするとぉ・・
そぉ~っと後ろを振り返る。
黒髪だけど・・この甘いフェイスは、まぎれもない
じ、神さんっっ!!
ひゃぁぁぁぁぁ!!どうしよ~~~~~~~~~~~~~~~~
「空・・相馬と付き合ったの?」
「う・・」  しゃべっちゃダメだよね、空にそう言われたもんねっ///
「なんで?」
「ぅ?」
「本気なの?」
「~~~~~~~~~~~~」 うわ~~~~~ん、どうすればいいの~~~~っ!!
「マジに決まってんだろ!」
「え?」 この声っ  
「!!?」 振り向くと、後ろから、空・・相馬くんが歩いてくる。
「美未香、こっちに来い、」
「あ、う、うん」  その言葉に、急いで空の元へ駆け寄った。
空はすぐに私を背に隠すと、
「神、こいつに構うな。」 と低い声を出す。  んん・・いつもより、声が怖いっ。
空??

「ふ、俺は美未香ちゃんを心配してやってんだよ?空には近づかない方がいいって♪」ニッ♪
え・・? 
「てめっ・・まさか」
「ははっ♪まぁ、せいぜい無事を祈るよ♪じゃ~ぁね♪」
「っ!」
?? なに??神さん何言ってんの??
チラッと横目で空の顔を見ると
「――!!」 う!鬼畜バージョンになってる!!!不オーラ全開で出まくってるっ!!
「そ、ら、じゃなくて、相馬くんっ?!」
あまりのその表情に、つい怖くなってしまった私は、グイッと袖を引っ張った。
「え、あ・・」 ソレに気付いて、空はこっちへと向きなおす。 
あ・・良かった。 もう鬼畜レベル下がってる。
でも、さっきの神さんの言葉・・どーゆーイミなんだろ?
空と付き合うってーのなら、その心配のイミもわかるけど、そんなん神さんに言われるまでもなくわかってるから、あえて相馬くんとして付き合うってことにしたんだし・・
変だなぁ??なにが心配なんだろ??
「あの、相馬くん、今の神さんの言ってた・・」 それは空と付き合ったらってことでしょ?
相馬くんと付き合ってる私には何も心配なんてさぁ・・
「大丈夫だ。」
え?  言葉と、頭の中で考てる事を遮る様に、そう言われ、
「なんでもねぇから、お前は心配すんな。」  
と、私の頭を軽くポンポンして、教室へともどってしまった。
え?今の言葉っておかしくね?
空は・・神さんの言った言葉を誤解してないんだ!?
相馬くんとしてでも・・なにか心配なことがあるってこと・・わかってる?
隠し事・・あるって・・ことだよね?
それなのに・・
・・・・大丈夫・・? なんでもねぇ・・?  心配すんな・・?
だとぉ????
なワケ行くかっ!
なに隠してんの??!!
鈍感な私でもわかるくらい神さんのあの言葉にはかなり動揺してたでしょーがっ!!
神さんの勘違いで言ったセリフなら、ばかじゃね~の??って空だったら笑い飛ばすでしょうがっ!!
ム~~~~~~~~~~~~~~~~!!!
私の事はすっごく知りたがって、教えないとうるさいくせに、自分のこととなると、誤魔化してばかり!!ソレってズルくない??
私だってっ、
私だって、ちゃんと空の事、知りたいよっ!!隠し事なんてしないでよっ!!
 
そんなモヤモヤしたキモチでガッコを終えると、すぐに、空は私の席へとやってきた。
さっきの事が、まるで無かったことのよーに、いつもどおりの顔で。
それが、また、私をイラつかせる!
「今日、オフだから、あそこ行こうぜ。」
「?」 あそこ? あそこ??あそこ・・ ああ、あそこか!
「途中、なんか食ってこーぜ。」
「・・うん」
なんで、平常心でいられるんだろ?  隠し事してるくせに。


ニコニコモンスター鬼畜空とブータレ勇者美未香は、
駅から離れた喫茶店に立寄り、オムライスを食べると、少しHpが回復した。
そして、鍵をみつけるため洞窟へと進む。もとい「あそこ」へと向う。(真面目にやれ

あいかわらずの階段。
ハァハァゼェゼェハァハァゼェゼェ
「朝の元気はどうした?ケツが重すぎんじゃね?」
後ろについてるモンスター鬼畜空は、勇者サマである私にむかって、そんなナメた発言をしてきやがる。
後から、かいしんの一撃をお見舞いしてやる!!絶対だ!(だから真面目にやろ~よ

ゴールの扉に着くと、モンスター鬼畜空は私の頭を撫で撫でして、
「よくがんばったな♪」 ニッ♪  と、ご褒美ともとれる笑顔を振りまき、途中ゲットした鍵で(おい)その扉を開ける。
わたしはかけられた呪文にクラクラッとしながらも、その後に続く。(へ?また追い越されてっし?

扉の向こうには、かわらず、あのでかい夕日が待っていてくれて、
夏の時期とは違って、日が落ちるのが早いせいか、この時間でもゆうに、このゴージャスな夕日が拝めれる。贅沢だ。 道のりは・・大変だけどね。足痛いし。
ふと、横を見ると、定位置なのか空は、この間と同じ壁の下にもたれかかって座っている。
私は・・
隣に座るわけでもなく、ただ、そこから見える夕日をじっと眺めてた。
そんな私に空は、「側に来ねーの?」 と聞いてくる。
「・・・」 何も答えない。
「おい」
「・・・」 答えない。
「てめぇ」
「・・・」 答えてやるもんか。

「・・・」
「・・・」 ん?なんだ?空まで黙ってしまったぞ?真似すんな。
「・・・」
「・・・」 つーん
「美未香」
「・・・」 お!
「・・・」
「・・・」 おい!
「拉致してぇ!!」
「は??!!」
「俺のモンになったっつー実感が湧かねぇから・・」
「え・・?」
「自信ねぇ・・ちっ」
「え・・」 そ、空?
なに?自信ない?え??あの自身満々で出来上がってる空が??
い、一体、なに言ってるの??
「お前だけはマジ失いたくねぇんだよ。」 「!!////」はっ?
そう言う空の方に顔を向けると、
立てた片膝の上に顔を乗せてムスッとしている。
え・・っと・・??/////
「でも、お前は知りてぇんだよな。」
う・・あ ・・私がそのコトで機嫌悪くなってんの気付いてたんだ。
「ホントは、もっとちゃんと美未香が俺のことを好きになってくれたのを確信してから・・話そうと思ってたのにっ、くそっ」
「え・・?」
「・・でねぇと・・お前は確実に離れてっちまう・・」
え????な、なに??
そんなウエイトのある話が待ってんですか????
んーーーーーーーーー・・
でも、
「大丈夫かもしんないじゃん?」
「?」
「離れてなんかいかないかもしんないじゃん。」
「・・・」
「それより、何も教えてくんなかったら、今すぐ帰る!!もう二度と口きかない!」
「!」
ム~~とした顔でそう言うと、
「は・・」 と軽く笑われた。
その顔は戸惑っているような、安心してるよーな、そんな表情で・・。
・・いつもの鬼畜の空じゃなくて・・調子くるうな。


胡坐をかくように座りなおした空は、
はぁ・・と一つ、ため息をついた。
そして、

「俺・・」

ゴクッ・・

「ガキ殺した。」

え・・ 

「――ぇっ??」
予想だにしないその言葉につい声が出てしまった!空は、やっぱりって顔をして目を伏せる。
「ぅ!」 
咄嗟に口を手で塞ぎ、体をちぢこませ空を見た。
「・・いいよ、驚くよな。」
ふっ・・と笑う空に、
「どー・・ゆう事かわかんない。」 力なくそう言う。 
笑えない。  こ、殺したって・・?・・・ガキ・・って子どものことだよね?
「・・・・
・・彼女だった女ハラマせて、・・ガキ・・堕ろさせたって事。」
「え・・」 っ・・ 口を押さえた手に力が入る。

お・・堕ろした
・・・ってことは・・

・・・・・
・・「中絶・・・・?」 

「・・・ああ」  空の声も力がない・・。
「!!」
そ・・
・・っか・・
やっぱり・・・ち・・中絶・・・したんだ・・彼女さん。

ドキ ドキ ドキ ドキ
なんだろ・・心臓の動きが早い・・っ

聞いたことはある・・
まだ、赤ちゃんになる前に・・そういう手術があるって事。
でも
・・・
  「殺した・・なんて・・」
「?!」 その言葉に、空の目つきは変わった!

「――・・ っ、あん時も。」
「?!」
「あん時っだって、
まだ、早い時期だから、人じゃねぇって。生命として、扱ってもらえねーって。だから中絶は、人殺しなんかじゃねぇって、っ、仲間も、医師もそう、言うけどっ!んなワケあっかよ!心音鳴ってたろ!なんで、それで人扱いされねーんだ?!――っ!!マジ、あんなの人殺しだっ!」
「!!!」
空・・っ・・
叫びにも似たその言葉を、空は、拳を握り締め、体を震わせ、瞳を曇らせながら・・言う・・っ。
そんなに、そんなに苦しんで
そんなに自分追い込んで、・・

「空は、その子に・・
産まれてきてほしかったんだね。」
その姿を見て確信した私の口から、自然とその言葉が出てしまってた。
「!!」 

「え・・」 
空・・?  え・・??

「あ・・」 
その鬼畜の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
たぶん、自分でも気付かなかったんだろう。
・・・その涙に、一番驚いているのは彼本人だったから。

「おれ・・」
涙を指で拭き取りながら、バツの悪そうな顔をして向こうを向く空。

な・・に・・・ソレ。

なんなの
なんで、っ
今でも、
そんな後悔でいっぱいでいるの?

ドキドキドキドキドキ

ううん・・わかってる
人一人の命だもんね
それはわかってる

ドキドキドキドキドキドキ

しかも、自分の子だもんね
うん・・
そう・・
わかってる

ドキドキドキドキドキドキドキ
でも・・

でも・・
なんだろ・・心臓の動きが止まらないっ
言っちゃ、イケないって、
空の気持ちを考えてやれって、思ってんのに

できない・・っ
そんな大人になれないっ
――っつ!
「い、今でも・・そ・・その人の事が好き・・。なんだね・・」
言葉が・・気持ちが止まらないっ

ドキドキドキドキドキドキドキドキ

「は?!」

「・・だっ・・ってっ、空、すごく後悔・・してる。」
なに言ってんの私。
んな事、当たり前じゃない。なに聞いてんの!私っ
「モトサヤに戻れば?」
だからっ!なに言っちゃってんの??!!
「?!」
「・・彼女さんだって・・」
「なに言ってんの?お前、マジありえね」
「!、つ、強がらなくてもいいじゃん。」
「は?」
「あ!それとも、私に気をつかってんの?だったら別にいいから!私、空の事まだ好きかどうかよくわかんないし、それよりもその彼女の方が、空の事を好・・」
「おい!!」 ぐぃっ!
「――っ!」 言葉をさえぎるように空の手が伸びてきて私の腕を掴みあげた。
「てめ、それマジで言ってんの?」
まっすぐに睨みあげてくるキレイで・・怖い・・瞳。
私・・ダメ・・だよ
今、その言葉を言っちゃダメだよ、わかってるよねっ?ダメだよ、
「っ・・マジ・・かも」
ああぁ・・っ バカっ 私
「!!」
「・・」ぅ・・ 

「・・やっぱ、離れて行くんじゃねぇかよ。」
「え・・」
「だからっ、
 言いたくなかったんだよ!くそ」
あっ・・・
違う・・空っ
「悪かったな、もう・・忘れてくれていいから。」
空はそう言って、掴んでいた私の腕を離して立ち上がる。
ち・・
違う 違う 違う 違う 違う 違う!!
「違うよっ!!」
「!!」
立ち上がった空を、
離れた腕を今度は私が掴んだ

「違う・・違う・・」 声が震える
ちゃんと言葉がでるかなっ
ちゃんと言えるかなっ
「なにが、違うんだよ、俺のこんな話きいてひいたんだろ。お前こそ、気ぃ使うな・・」
「違うってばっ!!」
もう叫んでいた!
震える体も声も、震える心に負けないくらいの叫び。
「嫉妬した!!」
「っ?」
「今でも、その人の事を思ってる空にムカついた!そんな人がいるのに私の事が好きだって言った空に腹がたった!!私の事を彼女にした意味がわかんなくってヒドイ事言った!――っだってだって
私っ・・空のこと好きなのに・・好きになっちゃったのに・・そんな大事な人が居ること聞かされて・・
ひどいよ・・・空っ・・っぐ・・」
あふれてくる涙がその口をふさぐ。
「あまり・・」
「・・っえ?」

「俺を焦らせんなっ。」
そう言って拗ねた顔して、フイッと目をそらす。

「っ///!」 ―――――――――
・・・えっ??  えっ??
えっ?????? あせ、あせ、焦らせ・・??って
えっ??///
「っつたく、そっちかよ、」
「へっ//?」
「お前の重要視するとこって」
「あ・・えっ//??」
そ、そっちってっ!
ソレでしょ?普通、重要視するとこソコでしょ?///え?なんかおかしい??私?
「だって、ソレが
・・一番聞いててショックだったんだもん!」
その言葉に空は、
「まいった・・は・・」と、少し照れるようにして笑ってる。
ん?
・なんで・・そんな・・優しい顔して・・ 

ふぅと一つ息を吐くと、私の体をゆっくり離し
真横に見える夕日を見る空。
私もその方向へ目をやる。
沈もうとする夕日はさっき見た時よりも赤く
消えていく前のあがきに見えるほどの・・燃えるような赤・・。
 すごい・・
そんな夕日に少し心を奪われていると、
「・・あいつには、そんな感情もってねぇから、安心しろ。」
と、夕日をみたままの姿勢で、そう言う空。
「ぇ?」 
「妊娠がわかった時・・あいつは、すぐに堕ろすって言ったんだよ」
「!!」
「産む、産まない以前に、いらないって言いやがった!っ。」
「えっ?」
あきらかに憎しみを感じさせる瞳と口調。
「だから、堕ろした。
 俺の意見なんてなかった・・っ。俺の気持ちなんて何もっ。」
見る見る歪んでいくその顔。
「もともと、あいつが興味あったのは俺じゃなくて、金だったしな。」
「へっ??」 か、金??

気持ちを落ち着かせるためか、空は少し押し黙ってしまった。
そしてゆっくりとフェンスに近づき、後ろ向きにもたれかかると
その唇を動かしはじめる

「俺が・・麗騎士で働きはじめた頃の
・・指名客だった。」
「・・指名・・」 
ふ~・・ん・・その頃は・・指名とってたんだ・・
「―――・・て! え??客?客っ??!!」 
「・・ああ。」
あ・・ああ・・って。
え~~と、ソレはお客に手を出したってコトだよね?
つまり・・神さんのコト言えないんじゃないのかな?
やってるコトは同じじゃね?
「神とは違げーよ!」
「げっ!」 心読まれたしっ!
「おいつは故意でやってっけど、俺のは過失だ。」
「?」 故意??過失??
イミわかりませ~ん
「はぁ・・故意っーのはワザとやることで、過失つーのは、
・・・あやまち・・ってコト。」
言って、髪をクシャッとする。
あ・・やま・・ち・・?
「無理やり、された。」
「へっっっ////???!!!」
さ、された???
「ヤルの初めてだったし、すぐに夢中になっちまったっ、マジあいつの思惑通り。」
え・・
ってことは・・その人が・・空の最初の人なんだ・・
ちょっと  《ズキンッ》
ショック・・
「熟れてない男の生理現象なんて、んなもんだよ、深く考えんな。」
「ぅ」
なんで、またまた心を読まれてしまったんだろう・・
恐るべし鬼畜!!
「あいつは、俺がNO.1になるの直感してたんだろうな、そーゆうカンは冴えてたから。
だから、俺に近づいてきた・・。
俺の稼ぐ金の匂いを嗅ぎ付けるように。」
「え・・」
「体使って、俺を夢中にさせて、客なのをいいことに・・
執事なんてもんじゃねぇ、あいつには絶対に逆らえない・・言うなりの犬のようになってたんだ。」
「ぇ・・」
し、んじられな・・い
空が・・この鬼畜が??言うなり??犬??? その女の人ってどんなんなの???
「でも、一つ、あいつの思惑外のコトが起きた。」
「ぁ・・」 
なにか感づいただろう顔をした私に、空は軽く頷いて、
「そう。妊娠だ。」
ぅ・・やっ・・ぱり・・
「避妊とかもちゃんと気をつけてたみたいだけど、あんなの100%じゃねぇからな。
それだけは、予測できなかったみてぇでさ。」
「・・・」
「俺は、その頃はあいつの事が好きだったから、」  《ズキンッ》
「妊娠したって聞いた時はメチャ嬉しかった。」   《ズキンッ》
「学校やめて、ココで稼いで、そのうちちゃんとしたトコに就職して、そいつとガキんこと絶対に絶対に守れってやるって、」               《ズキンッ》
「そう思った。・・ソレを言おうとした。・・だけど、それよりも先に・・あいつ・・・っ」
・・うん・・
その先は・・今でも・・口にしたくない言葉なんだよね。  《ズキン・・ッ》

「っ・・それよりも、手術の金と・・慰謝料を用意してくれって言われて。」
「え?」  手術代はわかる・・よ? で、でも、慰謝料って??

「付き合ってたんじゃ・・ないの?彼女さん・・でしょ?」
「ん、ああそうだけど・・女ってそんなもんだと思ってたし。だから・・
お前には驚いた。」 
そう言って、ふっと笑った。
「え?」
その言葉の意味を聞かせてくれるのかとおもいきや、空は
「今でも、1ヵ月に一度会ってる。」
「!!」  と?!!!
その爆弾発言に私の頭は真っ白になった。
 
へ・・
会ってる・・??
会ってるって・・??
ま・・まだ・・

クラッ・・
すでに
許容範囲をこえてる私の頭はグルグルを渦を巻いて体をふらつかせた。

ガシッ
「ぇ」
その体を力強く支えてくれたのは、筋肉質の腕・・。
空の腕だった。
そのまま、胸元まで引き寄せられ、抱きしめられる。
「ぅ・・」
「・・悪ぃ・・いっぺんだと、キツすぎんな。」
そう言って謝る。
う・・
ううん・・
「だ、大丈夫・・だか・・ら。は、話を続けて。」
精一杯、強がった。
そうしないと、空は、もう話してくんない。
次はない・・。・・何度も何度もしたくない話だろうから。
言う空だって辛いハズだから。
「・・美未香・・。」
「こ、このままで・・いてもいい?」 
じゃないと、倒れちゃいそうで・・
「・・ああ」
その返事とともに抱いた腕に力がこもるのがわかった。
そして、
重い口を開く空。
「この前、1週間くらいガッコ休んだろ。」
「あ、うん」
「ソレ、あいつと会ってたから。」
「え?!」
「・・今でも、月に一度、堕ろした子どもの供養すんのに会ってんだ。」
「!」

そ・・そうなんだ・・。そっか・・うん
それじゃ、・・仕方ないよね  今でも会ってるっていうのも・・うん
「く、供養って、よくわかんないんだけど、その・・一週間もかかるもんなんだね。」
 「・・かかんねぇよ、10分もかかんね。」
普通に聞いただけだった。
だけど、空の答えは意外なもので、
「え?10ぷ・・ん?」 つい、疑問符で聞きなおしてしまう。
「・・その後、そいつの好きなトコへ連れて行かされたり、買い物させられたりしてんの俺。」
「・・・・・へ?」
あ・・さっき言ってた言うなり状態??え?でも、未だに??
「別れたんだよ・・ね?」
恐る恐る聞いてみる。
「ああ・・だけど、女の体を傷つけちまったって事には、やっぱ俺、責任あっから。」
「・!・・」 ・へぇ・・
・・そっか・・・ 空って・・ 
「・・で、金渡して、バイバイになる。」
「え」 また金って・・?
「仕事やめたらしいから、生活できないらしくてさ。」
「は?え?仕事??え?年上?」
「ん?ああ、3コ上」
「あ・・はぁ・・そう」 実は、年上が好みだったのか!
「そんな年頃なんだよ!別に年上好みってワケじゃねぇ。」
ひっ!!また心読まれたよっ!!
「ちっ!・・とにかく、あいつは俺の事なんか好きでもなんでもねぇ、ただ、俺の持ってくる金に興味あるだけなんだ。」
「・・な・・なんで・・?そう言えるの?」 そうだよ、そんなのわかんないじゃん??
人それぞれ、愛情表現なんて違うと思うしー。
ホントは今でも、空が大好きで会いたいのかもしれないじゃん。
「・・・・あいつには、
   彼氏いる。」
・・・・てん・てん・てん・・
「は??はぁぁあ??!!」 ちょ、ちょっと待て~~~~~~~い
 
「え?なに?じゃ、彼氏さん居るのに空と会ってたりデートしたりしてんの??」
「デ・・デートじゃねぇし。」
「わ・・」 その元カノの考えがわかんね~~~~~~~~~~~~~~~~
「でもって、俺が彼女とか特定をつくるのはダメらしい。」
「は??」 
な・・に??ソレ??
「大丈夫か?」
「え?」 ふっと顔を上げると、私よりも辛そうな顔をした空の顔があった。
「続けても大丈夫か?」
そんな優しい言葉をかけてくれる。
・・・・
「う・・ん・・」
私は・・大丈夫。
空の方こそ・・
「大丈夫?」 反対に聞いてしまった。
「ん?・・ああ」 
そう言ってギュッとしてくれる。
大丈夫。
こうしてくれてるから・・大丈夫だよ。

「神が・・学校で言った言葉。」
「え?」
「俺に近づかないほうがいいって。」
あ・・「うん」
「その意味は、そいつんコト言ってんだ。」
「え?」
「前はちゃんと、指名客とってたし、仲いい女もいたんだけど、あいつはソレが気に入らなかったらしくて。
別れても、・・金を渡しても、・・
俺に指名がつく度、女友達ができる度、そいつらに陰で嫌がらせしていやがった。
俺と別れろ。俺に近づくな。
殺す。
ってな。」
「――!!」 
「そんなんだから、麗騎士のオーナーも心配してくれてさ。
俺は指名取らなくてもいいって言ってくれて、身元も一切隠してくれたんだよ。」
あ・・・・前に神さんが言ってた。空だけ何も情報がないって・・。
そうだったんだ・・

「・・・・・」
「?」
それから、空は黙りこくってしまう。
「・・空?」
「・・・・」
どうしたんだろ・・
ギュ・・
「ぇ?」
抱きしめてる力がまた強まる。
「ぅ・・」
くるしいくらい抱きしめてくるっ
「そ、・・空っ・・」
「俺・・耐えられなくなってた。」
「え?」 ぅ・・
「毎日が、そいつに見張られてるカンジで、もうどうしようもなく追い詰められてた。
麗騎士以外、外へ出ることもできなくてな。ガッコも1年ダブったんだよ。」
「え?!」
1年??え??
「ホントだったら今、2年。美未香の1コ上。」
「はっ?え~~~~~~~~~~~~~~っ?????」
思わず、バッと空から離れて顔を上げた!
「に・・2年生??え?ガッコって1年も休めるもんなの??」
「ん、成績は良かったから、退学はさせられなかったってトコ?学校側には病欠ってコトになってるし。まぁ・・実際そんなもんだし。」
え・・?え・・?え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~???
「せ・先輩。」 一応呼んでみた。
「・・・キモいからやめろ」
「だって、先輩。」
「てめぇ」
ギュ
「たっ!」
ほっぺたをつままれ、あえなくギブアップした私は、そこへしゃがみこんで、頬をスリスリとした
いて~よっっつたく!!ぶーたれながらそうしてると、
「新学期が始まった頃、さすがにこれ以上休むワケにはいかねーから、とりあえず学校へ行ったんだ。もちろん相馬の変装して。」
・・・・
「教室にはいった途端、でかい笑い声が聞こえてさ。」
「?」
「お前の声。」
「へ?」
「すげぇ、楽しそうなの。」
「え?」
「なにがそんなに楽しいのかってぐれぇ、ははっ」
ソレを思い出したのか、空は可笑しそうに笑った。
ぶ~
「・・そのうち、そんなお前の事が、羨ましくなった。毎日を楽しそうに生きているお前が・・」
「ぇ・・」
「憎らしく思った・・。」
「!」 えっ?
「だから、お前が麗騎士に行くって聞こえてきた時、わざとあの場で出会わせた。空として。」
「!」 え・・?
「お前の夢だったもの、お前の笑顔を崩してやろうって思った。」
「!!」
「・・だけど、・・違ったんだ。」
「ぇ?」
「あの時・・お前の手を握ったとき、
体ン中に違和感を感じた。」
「?」
「すげ、心臓の動きが早くなってんの、は・・」
少し戸惑った笑いをして、空は髪をクシャとさせる。
「?」
「たかが・・手ぇ握っただけだぜ?」
「ぇ・・」
「笑っちまう、・・はは」
「・・・」
「お前の事、憎らしかったんじゃねーのかよ、崩してやんじゃなかったのかよ!
・・・っ、全然、違うじゃねーか!」
「!」 そ・・ら??
「そうじゃねぇ、ホントはそんなことしたいわけじゃねーって!
・・
マジ気付かされた。」
「!」
真剣な顔で、私を一直線に見つめてくる瞳。
「お前を見てると、黒く濁ってた気持ちが消えていく。」
でも・・
なんで上から目線だ?!
「お前と居ると、・・生きてるのも・・いいかなって思えるようになる。」
あ!、そうか、私がしゃがんでるからかっ!!
え?今なんて??
「お前に会えて、ホントに・・救われんだ」
え??
ぁ・・たしか昨日も・・空、そんなこと言ってた。
・・私が救いだったって・・
いやいや、その先!
ソレの前になんて言いました??
「そ、空っ、あの、いっ、生きてっとか・・言わなかった?」
ニッコリと笑顔を見せるだけの空。
え・・・
あ・・・
前、初めてココに来た時、
空の言ったあの言葉。
私の勘違いだって言って笑ったあの言葉。
あの言葉は・・
≪ココに来ると・・飛びたくなる。≫
ホントだったんじゃん
「ホントだったんじゃん!!」
「!」
「空、飛ぶつもりだったんじゃん!」
「!!」

おもいっきり睨んだ、
マジでムカついた! マジで許さないんだから!そんなこと!!
むぅ~
バッと勢い良く立ち上がり、なんとか目線の位置を変えた!
が!
「背ぇ、高すぎだし!」 ちっ!私だって決して低いほうじゃないんだけどっ?
なんで、まだ上からなんだ~~~くそ~~~
「あ?」
私の意味不明ながんばりは、空には理解不能だったらしく、怪訝な顔をして「あ?」と言われた。
そしてご丁寧に、深くため息までつかれたっ!
「ち」 小さく舌打ちする私の頬を、また空は引っ張ってくる!
「いたたたっ!」
「お前にはマジ感謝してんだよ、」
「ほ、ほれがはんしゃひてるひゃいどくわぁ」
「ああ?何言ってやがる。」
パッと頬を掴んでた手を放して、上から目線のまま睨まみつけてくる空。
「いったぁ~~~!!もぉおお!!何度、乙女の顔をキズつければ気ぃすむのよ!この鬼畜!!」
「あん?誰が鬼畜だぁぁあ??」
ハァッ!!し、しまったぁぁ!つい、心の声が出てしまってたぁぁぁぁ!!
ひぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~っつ!!!
て!ち、違うでしょ~~~~~~~~!!
なに、いつのまにか逆転してるワケ??
「そ、空っ!」 負けるもんかっ
「ぁあ?」  ひっ!
「・・っ・・」
「っ、あんだよ!いきなり止まんな!」
「と!」
「と?」
「・・んじゃヤダ」
「!?」

「飛んじゃヤダ!!!」
「!!」
ヒック・ッ!
「!」 うっ・・え? あ・・れ?なんで、私・・泣いてんの?
うっく・・
えっ・・っく・・
「・・美未・・」
うっ・・え・・っ・・ぐ・・っ
ギュ・・ 「!」
その体を、
震えだした体を、空は抱きしめてきた。
「っく・・えっえっ・・っく」 そんなことされると、余計・・涙が・・っ
うっ・・く  止まらない・・よっ
「・・笑えない俺の代わりに笑ってくれる・・代わりに泣いてくれる・・・
怒ってくれる・・・な、美未香は。
ごめん、お前に甘えすぎてんな俺。」
「うぐ・・っ」
「ホント、お前には救われっぱなしだ。悪ぃ・・」
あ・・
やまらないでよ・・っ
「ばか」
「っあ?」
「甘えんぼ」
「てっ!」
「お子ちゃま」
「殺す」

そのあと、思いっきり抱きしめられ、(締め上げられ?)
マジで殺す気かっ??つーぐらい窒息死寸前状態までさせられた。 


散々泣いた後、だいぶ落ち着きを取り戻した私は壁にもたれてしゃがみこんだ。
隣に、空が同じようにして座り込んでる。
夕日・・
もうだいぶ沈みかけちゃったな。
街の灯りの方がキラキラしはじめてきてる。
その光景をボーッと眺めてると、
「月末・・」
「ん?」
「今月分の金、持ってあいつんとこへ行ってくる。」
「ぅ・・」
「それで、終わりにしてくる。」
「っえ?」
「いままでみたいに流されたりしねぇ、絶対にケリつけてくっから。」
「・・だ、大丈夫・・なの?」
これまでの話を聞く限り、かなりの(あるイミ)ツワモノと見たけど・・。
「ん。大丈夫。今度は俺、マジ退けないモンがあっから。」
「え?」
「お前に手ぇ出されちゃこまる。」
「!」
「俺の一番大事なもんだかんな。」 ニッ
「ぅ////!!」
今、泣きたいだけ泣いたのに、また涙腺がウルウルきちゃってるよぉ~///
もぉぉ~~~っ(><)
「空はやっぱり意地悪だ・・。」
体育座りして立てた膝に顔を埋めてそう言った。
「ん。お前にだけな。」
憎らしい言葉を言われてるのに口調が優しいから、またまた私の涙腺が緩んでしまう。
「泣き虫。」
「うるざい」
「お子ちゃまはどっちだよ」
「空“」
「やっぱ、死ね。」
ギュウ~~~ッと片腕だけで首を締め上げられたけど、今度のはちゃんと手加減してくれてて。
(おい!今までは全てマジだったのかっ!?全力だったのかい??
「信じてる。」
て、言葉が出てしまう。
空は、
「ん、」 と、にっこりと笑い、私の肩に頭を乗せてくる。
このまま・・ずっと2人で居れたらいいな・・。
≪このままどっか行っちゃう?≫
あぁ・・あの時も、
≪2人で≫
空・・こんなキモチだったんだ・・。
≪遠いトコロへ・・≫
そっか・・
うん・・今ならわかるよ。
私にも。

きまぐれでも・・遊びでも・・なかったんだね
私が思うよりも、だいぶ前から・・
こんなキモチを持ってくれてた
今なら信じられるよ
空のこと。
だから、  大丈夫。
それから、空に家まで送ってもらった私は、
部屋に入るなり、ベッドへダイブした。
「はぁ~・・・・」
色々なことが頭をかけめぐる。
空のしてくれた話をゆっくり思い出してみる。
「・・・・」
改めて・・
空・・ってば・・すごいと思う。
いままで、1人で戦ってたんだって、
誰にも言えず・・
・・・・・
あ・・れ・・・?
そういえば・・
空って、親とかには・・なにも相談とかしてないのかな?
・・・・・
んっ?
あ、でも、前・・≪家ない≫ とかなんとかって言ってなかったっけ??
・・・・・・
う~~~~~~~~~~ん・・・っ

あれだけ、話しをしたくせに、まだまだ、空には謎があるということに気付く。
しかも・・ソレ聞きにくっ!
「親居ないの?」
なんてストレートすぎるしっ!!
「やっぱ、人間じゃないから?」
・・・・・・
こ、殺されるな。確実に。うん。やめよう
まぁ・・これは・・
触れないでいたほうがいいのかも。空もあまり言いたくないコトかもしんないし・・。
それよりも・・
月末かぁ
ああは言ったけど、ホントは少し不安。
空、なにかされたりとか・・しないよね。
仮にも、恋人同士だったんだもん。これ以上、ヒドイ事なんて・・
しないよね・・?
「はぁ・・」
だ、ダメだっ!悪い事しか思い浮かんでこないっ!
これじゃダメだぁ!!
バッ! ベッドから飛び起きて、リビングへと向った。
リビングには、ママがいて、
「ご飯は?食べたの?」 て聞いてくる。
「んー・・なんか、あまりお腹すかない。」
と、答えて、冷蔵庫からオレンジジュースのペットボトルを取り出し。
それをコップに移し変えていると、
「何か食べないと、幸せになんないわよ~」
とワケのわかんない事を言ってきた。
「なにソレ?」
「生き物はね、お腹がすくと、ネガティブになるもんなの。だから、そーゆう時は、お腹いっぱい食べるといいんだよ。食べた後って皆、笑顔になるでしょ?つまり、それが幸せに繋がるのだよ♪」
「? てことは、私が今、ネガティブだと?」
「違うの?」
「ぅ・・」 当たってるかも・・
「でも、なんでわかったの?」
「親なめんなよ♪」 ふふんと鼻で笑い、冷蔵庫から食材を取り出すと、
「野菜炒めしかないからね、」 と、フライパンを掲げ手際よく作り出すママ。
恐るべし!
「うん」 と、返事をして、キッチン脇の椅子に座って出来上がりを待った。
親って・・すごいな。
こんなに自分勝手にしてても、少し、顔を見ただけで、少し会話をしただけで、ちゃっかり、子どもの状態がわかっちゃうんだもん。
・・・空んとこだって・・
そうじゃないのかな?
絶対に・・親は心配してると思うんだけどな・・
出来上がった野菜炒めを食べ終わると、ママの言ったとおり、笑顔になった。
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うん!やっぱ、満腹バンザイ!(どこの食べ歩き番宣だ!
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