甘々顔総長様と地味顔女子

三三

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血が滲んでる口元で

虚ろな瞳のまま
・・そう言われた

目の前で、痣だらけで、壁がなければ崩れてしまいそうになっている人、

そんな人を

私は見捨てられない。

「ダメだよ、一緒じゃないと、さくらちゃん心配するよ」
・・こんな総長様見たら悲しむよ

「あーもう!亜弥自身がそう望んでるってわかったでしょ!あなたが中々信用しないから連れてきたのに、どうしてこう飲み込み悪いのかしらっ、」
言う通りにならない私にイラつきを覚えたんだろう
お母様の言動がキツくなってる
まるで
駄々をこねてる子供みたい。

こんな人に構ってる場合じゃないか、
以外にも私は冷静だった。
前の慧って子の手当をした時もそうだった。
うちのお母さんのせいかな?
具合の悪い人に遭遇する度、その処置の姿勢と全容を目にしてきた。
その時のお母さんはいつも冷静に対応していたっけ。
そんな姿を見てきたせいか、知らない間に私も似ちゃったのかな。

そういう人をほっとけないって性格も。

とりあえず、総長様をどうやってここから連れ出そう。
私の力じゃ、抱えて・・ってのは無理だし。


「あなたって頭も悪いのね、亜弥は帰らないわよ」

しつこい、お母様はどうあっても総長様を手放したくないんだ。
でもそんな事、何度言ったって聞かないんだから

「部屋の外にはウチの若い者が待機してるわよ、ここが普通じゃないって薄々感じているんでしょ?」

「・・」聞こえない

「あなたが無傷でさくらと帰れるチャンスは今だけ。ってコトわかってる?」

「・・」知らない

「あーそうそう、これ重要だった、
あなた頭悪いからちゃんと教えておかないとね」

「・・」何よ、まだ何か言い足りないの

「・・今まで聞いた話と、私の存在は他言しちゃダメよ。もし、しゃべったら、
あなたはもちろん、あなたの家族も全て無くなると思ってね、ふふ。
ウチの者は荒っぽいから、場合によっては私でも止められないかも。」

「!!」い、今になってソレ言う?!!

「か、勝手にしゃべったのはそっちじゃないですかっ、他言されて困るのわかっていたならなんで、」
え、なんでお母様は笑ってるの?

「誤・・魔化すとかお母様だったら、出来たハズ・・で」
だからなんで笑ってるの?!


「これが交渉って言うのよ。いずれさくらの事も手にいれる為のね。」

は・・?

「言わば、あなたはさくらにとっての弱みとなってもらったってワケ。」
「なんで」私が、さくらちゃんの弱みに・・

「私の存在と情報を知ってしまったあなたを消すって言ったら?」

ぇ?!!

「迷わず私の交渉にのってくるわよ、さくらは!」

「――!!」

「今日はいいわ、さくらは見逃しても。だって、今度はいつでも手に入るんですもの、
あなたというコマを使ってね!」

―――っえ、・・
あ、ううん、ダメ負けちゃ、
「さくらちゃんとはまだそんな親しくなって間もないのに、そんな交渉に乗る訳ないじゃないですか!」
そうよ!私達はまだ友達かもわかんない、ちゃんとさくらちゃんの友達になってって言葉に返事もしていない、そんな私が弱みになんて、なるハズ無い!

「あら、あなた知らないの?今までさくらに友達が一人も居なかったこと」



「だから、私も最初は驚いたわ、さくらがあなたと一緒に楽しそうにしているのを見て、」
「!」一体どこで?まさかさくらちゃんのこと監視してた?

「ふ。それにしても、まさか、初めて出来た友人があなたみたいな凡人なんてね、
でも、まぁ、使えるなら何でも良かったし、実際、
何言おうと、あなたもさくらのことでこんな所まで来てるじゃない?」

――っ!

「だったら、さくらも同じことするわよ」
「や、・・」
やめてっ、さくらちゃんにもこんなっ――・・っ、


ポタッ。

「え」

頬に何か水滴のようなものが飛んできた

ポタッ・・ポタッ

床にも落ちている

なんだろ、お母様の目の下辺りに何か・・
ペンのようなモノが
刺さっ・・  ・・え、刺さってるっ?ど、どうしてペンがっ?どこからっ?

「きゃやああぁあああぁぁっ!!!!」
ビクッ!途端、
お母様からの激しい叫び声が発せられた、

その瞬間だった

私の横からお母様の顔に刺さっているペンらしきモノを、金属音と共に飛び出してきた手が掴んで
深く
・・深く差し込んでいく。

その手によって倒れこんだお母様の上に馬乗りになっていたのは・・


「そ、総長様?!!」

まさに一瞬の出来事だった。


「いやぁぁぁ!、顔がっ、いやああっぁああぁぁ―――ああぁ」

痛みなのか、顔の心配なのか、お母様の悲鳴が鳴りやまない、

総長様の手も緩まない

血がどんどん流れ出ている

このままじゃ、
「総長様っ、ダメ、」

「目ぇ、狙ったんだけどな、」

え・・

「てめぇの目が俺は大嫌いなんだよ!」
そう言って、刺してたペンを引っこ抜いた。
でも、
すぐにそのペン先は
お母様の目に向けて振り下ろして・・


だ、「ダメ――――――!!!」


咄嗟に私は総長様の体にしがみついた。
私にペン先が刺さるかもしれない、でもそんなこと心配している場合じゃなかった、
止めないと!その思いだけで必死だった。
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