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入学式2

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 ピーンポーン。ガチャ

「史騎ちゃん、おはよう。あら、よく似合っているじゃない。ねぇ、あなた」

「ああ、ほんとだね。よく似合っているよ」

「入学式までまだ時間あるからとりあえず入って」

 そういうと、お邪魔しまーすといいながら入ってくる両親になんとも言えない気分になる。
 そう。今日は入学式のため両親とこのアパートで待ち合わせしていたのだ。
 
 俺の1人暮らしの部屋を見て、会話が弾んでいる両親にお茶を出しながら初めて着たスーツに抱いていた少しの不安も両親のお墨付きももらえたことで一安心していると、

「あら、史騎ちゃんにお茶出してもらえる日がくるなんて、とっても嬉しいわ」

「そうだね。」

 なんて言っているのを聞いて少し気恥ずかしくなる。
 いろいろ話し、出発の時間も迫ってきたため大学へ向かうことにした。


 入学式ではいろんな人の話を聞いて終わった。
 次は、新入生説明会があるので涙ぐむ母親とそれを宥める父親と別れ自分の学部の教室へ向かう。

 教授の話を聞きながら、大切そうなところをメモしていく。
 大体が履修登録についての話と今後の行事や説明会などの話だった。

 コロコロっと消しゴムが机を滑り落ちていき、どこに行ったのか見失ってしまった。
 見える範囲の床を探してみるが、見当たらない。

 諦めるか、、と思った時後ろから手と俺の消しゴムがヌッと出てきて

「あ、ありがとう」

 後ろを振り向いてお礼を言おうと思ったが、教授の「ここからがとっっっても大切な話になります」という声にペンを持ってメモを取る作業に戻る。

 顔は見れなかったが、お礼は言えて良かった。



 新入生説明会も終え、これからの履修登録に頭を悩ませながらアパートに帰る。
 スーツをハンガーにかけながら、今日の入学式や新入生説明会の段階でもうすでに仲良くなっている人同士やグループができていたなと思いだす。

 同じ高校から同じ大学に進んだ人はいないので、気の合う知り合いが出るか少し不安だが、まあ、なるようになるかと気楽に考えて考えながら着替えてベットで横になる。
 できれば派手で目を引く感じとは正反対の友達を作りたい。

 やっぱ、消しゴムの時振り返って友達一号(仮)を拝んでおくんだったなー
 そう考えているとブブっとスマホが鳴り、メッセージが表示された。

 表示されたメッセージは高校時代の友達の大地だった。
 


入学式お疲れぇ~どうだった?



 まあまあと派手な感じの友達が欲しくなくなる原因になった張本人に返信する。

 大地は悪いやつではないのだ、ただちょっといやかなり人間関係を複雑にするのだ。
 大地は顔もいいし、明るくスポーツもできるためとてもモテるが、軽すぎるのだ。

 そのため、彼女が変わることはしょっちゅうでひどい時には何人かいた時もある。
 周りにいる男友達も最初は大地がモテるのをもてはやすが自分の好きな子が大地を好きと分かったり大地と付き合い始めると、避難し、敵対するようになるのだ。

 そんな男と3年一緒に過ごしていると、大地には女子という大きなバックがあるため強くは出られない男子やひどい別れ方をした女子に嫌味を言われたり、付き合っているだのめんどくさい野次の矛先は俺になるのだ。
 まぁ、大地も嫌味を言われたところでしょげたりショックを受ける男ではなのだが。

 そんなめんどくさい目に遭いながらも大地と一緒にいた理由は一つである。
 自分に全く被害がないからである。

 付き合っていた彼女が大地を好きになり別れを切り出されることもあったが、彼女が大地を好きになった責任が大地にあるというわけでもないし、重すぎる子でちょうど別れたいと思っていた頃だったのでその時は少し感謝したくらいである。

 大地の話は面白いし、ただ単純に趣味が合うのだ。
 それに、自分からメッセージを送ることがあまりない俺には今日のように頻繁に連絡をくれたり積極的に話しかけてくれる大地は貴重な存在だった。

 だが、大学ではできれば面倒は避けたい。
 だから派手で人間関係を複雑にするような人間は避けたいと思う。


 そう心に誓って風呂へと移動する。
 
 

 

 
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