上 下
2 / 17

キミ、才能あるわよ

しおりを挟む
 「どうしたの? ボーっとして……怪我でもしてるのかしら?」

 その美女は僕よりも背丈が高く……そして胸までもSランク超えの大きさ……見た事のない衝撃に見惚れてしまい、僕は固まっていた。

「あっ……! す、すいません! あまりの美しさに固まってしまって……!」

「あらあら、お上手ね♪ でも残念! 私、人妻なの」

 そう言って左手の薬指に光る指輪を見せられる。……そう聞いて余計、魅力的に見えてきました……。

「そ、それは残念だなぁ~……。じ、じゃなくて! 助けていただき、ありがとうございます!! い、今のは魔法ですか? 凄い威力ですね……一撃でマンティコアを倒すなんて……!」

「うーん……でも私、さっき目覚めたばっかりで本調子じゃないのよね。さっき放ったやつはホントだったら、ここら一帯全部消滅させれるんだけど……」

 さっき目覚めた?今、もう夕暮れだけど……夜型なのかな?しかも、ここら一帯消滅できるとか……。嘘か本当か、どちらにせよ……この女性、色々とヤバい人なのでは。

 しかし、近道を塞がれて下山には2日はかかる上に道中はモンスターだらけ……僕1人なら確実に死ぬしかない。どうにかして協力してもらわないと……。

「……助けて頂いた上に、厚かましいですが……良かったら一緒に下山してくれませんか? それにお互い1人では危険じゃないかと」

「あらっ、良いわよ。と地形が変わってて道も分からないし案内してくれると助かるわ」

「よ、良かった! 地図があるので僕について来て下さい!」

「モンスターも出るのよね……これで、私の武器を作るわ」

 そう言って女性はマンティコアの残骸から骨を抜き……。

「【武器生成ウェポンマテリアル】……うん、これでいいかな」

 女性が手に持った骨は一瞬にして、白く輝くロングソードへと変化した。

「便利なスキルですね!」

「そうでしょ! さ、行きましょ~」

♦︎

 道を進んでいくと、早速レッドゴブリンが現れた。基本体のグリーンゴブリンより強く獰猛な奴だ。

 僕は戦闘態勢に入ると同時に詠唱を開始、女性とゴブリンが剣を交える前に呪文を発動した。

「【攻撃強化】!」

 術により女性の攻撃力が20パーセント上昇。彼女は見事な剣捌きによりダメージを受ける事無く、ゴブリンに幾度と斬撃を浴びせて葬った。
 ……魔法だけで無く、剣技も素晴らしい……一体何者なのだろう。そういえば名前を聞きそびれたな。もしかしたら有名人かも知れない。

 女性は、剣を見ながら、何か少し考えている……そして僕の方を振り返り問いかけた。

「……今の魔法は何?」

「攻撃力を上げる魔法です……。あ、あのすいません……僕、属性持ってなくて……こんな補助魔法しか使えないんです、本当にごめんなさい……」

 怒られたと思い、僕は条件反射で謝罪した。

「え~っと、謝らなくても良いのよ。怒ってる訳じゃなくて……今の魔法には『属性の力』が感じられ無かったから……こんな魔法は初めてだと思ったの」

「そ、そうだったんですか……」

「これって凄い事なのよ……属性を利用しなければ魔法の発動は理論的に不可能、それは補助魔法も例外じゃないわ。……キミ、名前は?」

 この魔法が褒められた……!幼い頃にシスターマリアに褒められて以来、何年ぶりの出来事だろうか……!

「アライズ……です」

「アライズ……これからはアライ君と呼びましょうか。私の事は師匠と呼ぶよーに」

「し、師匠?」

「そう! アライ君に興味が湧いたから鍛えてあげる事にしたわ! 下山する頃には一皮二皮剥けてるわよっ♪」

 こんな美女に鍛えて貰えるなら、そりゃあ剥けるでしょうよ……でも、僕は下を向いていた。

「……ありがたいですけど、僕なんて……どうせ補助魔法しか出来ない無能ですから……」

「そんなんじゃダメよっ!」

 女性……いや、師匠の一喝にビクッと直立してしまう。

「いい!? 自分がダメだと思ってる者に、未来は無いの!」

 巨大な胸をブルンブルン揺らして向かってくる師匠。何だろう……怒られてるのに、ドキドキする……。

 そして師匠は僕の頭に手を置いた。

「……きっとキミの才能を見抜けない愚か者達の所為で、自己肯定が出来なくなってるのね。大丈夫、私がアライ君の才能を伸ばしてあげる……任せなさい」

「ハ、ハイ……!」

 初めて会ったばかりなのに、この優しい声を聞くと全てを委ねたくなってしまう……。

 ガサッ。

「ゲギャッ」

 そんな雰囲気を、ぶち壊す汚らしい声。離れた草むらから再びレッドゴブリンが。しかも次は見たところ外皮が強化され、鎧を装備している『アーマードタイプ』……一筋縄じゃいかなそうだ。

「それじゃ、早速……実戦指導といきましょうか」

 師匠の期待に応えてみせるんだと、胸が高鳴る。

 そうだ……僕は、無能なんかじゃ……ない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~

一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。 彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。 全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。 「──イオを勧誘しにきたんだ」 ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。 ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。 そして心機一転。 「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」 今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。 これは、そんな英雄譚。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...