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第十二話
しおりを挟むおそらく転移の魔法を使ったのだろう。
王都を目指して出発しようとしていた俺たちの目の前に突然現れた美女を、俺は眺める。
白いドレスに身を包んだその美女は、どこか貴賓のようなものを漂わせていた。
明らかにこの世界の庶民ではなかった。
またその顔の面影に俺はどこか既視感のようなものを抱いていた。
「あっ…い、一ノ瀬くんっ…この人っ!!」
俺が美女を観察する中、新田はというと、何やら恐れるようにして二、三歩後ずさった。
「ん?どうしたんだ?新田」
「い、一ノ瀬くん…離れて…!この人が…さっき話した委員長を殺した、この国の王女で…」
「ん?こいつがか?」
新田の話の中に出てきたカテリーナという名前のこの国の王女。
話を聞いた限りだと、こいつが今回の召喚主っぽいが…
「先程ぶりですね、スキルなしの役立たずさん」
目の前の美女……カテリーナが新田に向かってにっこりと微笑んだ。
スキルなしの役立たず。
その呼び方は、先ほど聞いた新田の話と辻褄が合う。
どうやらこいつが本当に委員長を殺したカテリーナで間違いないらしいな。
「何しにきたんだ?」
俺は警戒のレベルを上げながら問う。
「いえ、千里眼であなた方の様子を確認していたのですがね…」
「…」
千里眼。
遠視系の魔法の頂点に位置するもので、並大抵の者には扱うことのできない高度な魔法。
どうやらこいつ、王女でありながらなかなかの使い手らしい。
「驚きましたよ…あなた。起きた途端に即座にスキルの力を理解して、モンスターを倒してしまいました。これほどの適応力を見せたのはあなたが初めてですよ」
「…」
なるほど。
どうやらこいつは、俺が新田に起こされて早々にモンスターを倒したところを千里眼で見ていたらしい。
俺は別にスキルの力でモンスターを倒したわけではないのだが、カテリーナは俺がこの世界に来たのが二度目だということを知らない。
だから、あれがスキルの力だと認識したのだろう。
「しかも相当強力なスキルとお見受けしました。そこの役立たずと違って、あなたは逸材です。ぜひ魔族に侵略されかけているこの大陸のために戦ってもらわなくては」
にっこりとした微笑でそんなことをいうカテリーナ。
「はっ」
俺はそんな彼女の言葉を鼻で笑った。
カテリーナの表情が一気に険しくなる。
「もう騙されないぜ、あんたら王族の戯言には」
「はい…?戯言…?」
「俺は知っている。この大陸は魔族に襲われてなんかいない。あんたらが俺たちを召喚したのは……俺たち異世界人を軍事利用するため。そうだろ?」
「ほう…」
カテリーナが目を細くした。
見るからに警戒されているのがわかる。
「図星だろ。なんとか言ってみろよ」
「…あなたは一体」
カテリーナが徐に手を上げた。
直後、放たれる爆発的な殺気。
「逃げて!一ノ瀬くん!!」
新田の悲鳴が上がる。
魔力がカテリーナへ集約される気配を感じた俺は、カテリーナが俺たちに向けて攻撃魔法を使おうとしたのを即座に察知し、やられる前にやり返す。
「ウィンド・カッター」
切断に特化した風魔法を発動。
カテリーナの上げた右腕が切り飛ばされた。
「ぎゃぁあああああああ!?!?」
カテリーナがつんざくような悲鳴をあげる。
ぶしゃぁあああと切り口から鮮血が勢いよく吹き出した。
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