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第三十八話
しおりを挟む「嘘でしょ…!?何あれ…!?」
「魔石が…?」
俺たちの目の前で変形する魔石。
手が生え、足が生え、やがてあるモンスターの形を成し始める。
「ご、ゴブリン…」
『グゲッ、グギーッ!!!』
なんと信じられないことに、少女の体の中から取り出された魔石がゴブリンに変形してしまった。
「こ、これ夢じゃないよね…?」
エレナが目を擦っている。
俺も衝撃すぎてあまり現実感がない。
魔石からモンスターを作り出す魔法。
そんなもの聞いたことがない。
魔族特有の魔法なのだろうか。
わからないが…ただ、一つ重要なことがわかった。
「どうやら大量のモンスターを街にけしかけた主犯はあいつららしいな…」
魔石から生み出されたゴブリンは、街の方向へ向かって走り出した。
そして男たちは再び少女の体の中から魔石を取り出し、魔力を注いでいる。
「すごい…あんたの勘、当たってたわね。あいつらがこの騒ぎの元凶で間違いないわ。どういう原理かはわからないけど…でも、やめさせなきゃ。モンスターは増える一方よ」
「そうだな…だが、どうする?魔族は数が少ないものの、一体一体が強いと聞く。倒すのに戸惑っていると、街が襲われるぞ」
「そうね…じゃあ、ここは囮作戦でいきましょう」
「囮作戦?」
「ええ。私があいつらの前に姿を表して、焚き付けるから…アルト。あんたはあの少女を助け出すの。見たところ、モンスターを作り出すにはあの少女が不可欠みたいだから」
「なるほどな。わかった」
エレナの作戦は、俺にも有効に思えた。
俺たちは魔族に気付かれないように、それぞれの配置についた。
互いに目配せをして、タイミングを見計らう。
魔族がモンスターを解き放ち、また新たに少女から魔石を取り出そうとしたところで、エレナが茂みの中から飛び出した。
「あんたたち!!何してるの!!」
『なっ!?』
『人間!?』
『どうしてここが…?』
『結界を敷いてあったはずだが…?』
エレナの登場に驚く魔族。
俺は彼らがエレナに気を取られている隙に、そおっとピンク髪の少女に近づいた。
「はっ。結界魔法なんて私には通用しないわ。あんなの、ディスペルしたわよ。あんたら見たところ魔族みたいね。ここは人間領よ。こんなところで何をしているの?」
『見られたからには…』
『消えてもらう…』
『全ては魔王様のため…』
『我々は計画を完遂しなくてはならない…』
魔族たちは、武器を取り、エレナに向かって進んでいく。
俺はその隙に少女を抱き上げて、そっとその場を離れた。
もう大丈夫だ、逃げろ!
そんな意味を込めた視線をエレナに送る。
「いいわ。人間領に踏み入る魔族なんて私が全員倒してやる…とでもいうと思った?」
急に踵を返して逃げ出すエレナ。
まだ俺の支援魔法の効果が健在であるため、グングン距離を離していく。
『あっ』
『逃げやがったっ!』
『まずい!逃すな!』
『我らの存在を報告されるわけにはいかないっ!』
追いかけていく魔族たち。
「エレナ。幸運を」
俺はエレナが捕まらないことを祈りつつ、改めて腕の中の少女を見た。
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