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第一章
第二十六話
しおりを挟む翌朝。
俺とソフィアはギルドに赴いて、昨夜のことをアレクシアさんに相談していた。
エレナさんに頼んで呼び出してもらったアレクシアさんに、ことの次第を説明する。
話を聞き終えたアレクシアさんは、苦々しげに顔を顰めた。
「…またあいつらか。ったく、救いようのない連中だ」
「また、と言うことは以前もこんなことがあったんでしょうか?」
「ああ。少し前の話だ。あいつらのライバルと言われていた新人パーティーがある日突然姿を消した。おそらく『漆黒の翼』だろうと皆が思ったが、証拠がないだけに我々も咎められなかった」
「…っ」
俺の隣でソフィアの喉が動くのが見えた。
どうやらライルの話は事実だったらしい。
「証拠…昨日俺たちが捕まえた男が確かに『漆黒の翼』に雇われたと言ったんですが、それは証拠にはなりませんか?」
「私も聞きました!」
俺の言葉に、ソフィアも追従する。
アレクシアさんは難しそうな表情になった。
「もちろん私は君らの言葉を信用する。だが、それだけで彼らに然るべき罪を与えることは困難だろうな」
「…そうですか」
予想していたことではあったが、やはり確たる証拠がなければ罪には問えないか。
昨日、男を逃してしまったのは迂闊だったなと俺は反省する。
「で、でも…アレクシアさん。このまま『漆黒の翼』を放っておくと、彼らまたアレンさんとソフィアさんに何をするか分かりませんよ?」
俺たちの身を案じてか、エレナがアレクシアさんに対してそんな進言をしてくれる。
「わかってる。ここで何も手を打たないのであれば、ギルマスである資格もない。そうだな…『漆黒の翼』は普段から素行に問題があって、さまざまなパーティーといざこざを起こしてきた連中だ。悪評は留まるところを知らない。この際だから、冒険者資格の剥奪も視野に入れてことを進めようか」
「それがいいと思います」
アレクシアさんの厳格な判断に、エレナも頷いた。
「ともかく、向こうさんの言い分も聞いておく必要があるな。アレンにソフィア、すまないが明日またギルドに来てくれないか?私と君たち、それに『漆黒の翼』の三者で、話し合いをしようじゃないか」
「分かりました」
万一にも今回の件が、『漆黒の翼』でない可能性も残されてはいる。
アレクシアさんの対応は妥当かつ納得のいくものだった。
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